( 抉れ )



お前の世界には
なにがうつってるんだ



「あ、田中だ」


そう言ってお前はあいつの元へ向かう。
目の前に座る俺には構いもせずに。

そうだろう。
俺はお前にとって田中までのつなぎにすぎないんだから。


ちくしょう。
2人で微笑ましく友達以上恋人未満ってか。


なんでだろうな。
なんで、こうも。




『お前の兄貴自殺したんだって?』
『親父さん、帰ってきた?』
『あ、ごめん。お母さんいないんだっけ』



なんで、たったひとつの欲しいものが手に入らない。


俺は誰かに愛されたいだけなのに。



もう疲れたんだ。
待つのはやめたよ。
もう田中までのつなぎはやめだ。


俺はさ、お前がいなくても生きていけんだよ。


なあ、さよなら。
届かないんだろうよ、こんな俺の言葉なんて。


お前の世界には田中しかうつっていないんだから



end

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