( 背中 )
ちくしょー、今日もかっこいいじゃねーか。
前を歩く背中を眺める。
世間の女の子たちの間では甘々エロエロなぼーいずらぶ、ってのが流行ってるらしいね。携帯でちょっと見てみたけどさ、ねーよ。
あれはねーよ。
あんなんほんと一握りだって。
実際は告白なんかできねーし、告白できたとしたって両思いになれることなんてない。
そんで、その後は普通に接してくれれば良い方で、気持ち悪がって避けられることもある。
今の俺みたいに。
一週間前、俺は今前を歩く男に告白した。あいつとは中学からの付き合いで、高校も一緒で、高2の今年は一年ぶりに同じクラスになって、ずっと、ってくらい一緒にいて頭麻痺してたのかもしれない。
浮かれてたんだ。
わかってたのに、あいつはそうじゃないって、わかってたはずのに。あるじゃん?告白のタイミングじゃね?みたいな雰囲気。それにまんまと感化されてさ。
言ってから、あれ?今俺なんつった?みたいな。
一瞬置いて、全身がサーってなって、恐る恐るあいつの顔みたら………
あー………やっちまった
って思ったわけ。
顔がさー、は?ってなってんの。
なんとか誤魔化したけどさ、なんか気まずくなって。
それから一回も隣歩ってない。
別々に帰ればいいんだろうけど、習慣みたいな感じだったから、なんか一緒に帰ってる。
一緒って言っても俺が後ろをついて歩いてんだけど。
あれ、俺ストーカー?
今日は金曜日。
また来週まで会えない。
もしかしたら、来週から一緒に帰ってもくれないかもしれない。
これ以上離れたくない。
でも俺はどうしようもない。
ふっきることも、踏み込むこともできない。
いっそ開き直れたら楽なのに。
視線を足元から上げる。
目の前には、背中。
大好きなあいつの背中。
最近背中しか見てない。
きっとこれからも………。
あ、やばい。
なんか泣けてきた。
振り向いて
振り向かないで
あ、でも今はやっぱダメ
でもやっぱり振り向いて……
そんな取り留めのない思考をしているうちに今日もお別れ。サヨナラの一言もない。これじゃ本格的にストーカーだ。
あいつが見えなくなるまで立ち尽くす。
悲しくて 自分がバカすぎて。
胸が痛くなった。
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