No Megane, No Life.

 受け溺愛美形×眼鏡っ子平凡










 俺の目に映る世界の鮮やかさは、0.7。
 魔法のアイテムを外すとそれは0.03まで下がる。
 0.03の世界がどんなものか、皆さんは分かるだろうか。0.03の世界は1m先のものもぼやけてしまうほど視界が不明瞭になり、30センチくらいの距離になってはじめてはっきりとその物の姿が認識ができるようになる。その距離にならなくても輪郭はぼんやりと見えるけれど、ふにゃふにゃぼやけて全貌ははっきり見ることはできない。おおよその把握はできるけれど、やっぱりおおよそであるため距離感とかそういったものがおかしくなるのだ。結果、いつもなら回避できる危険も回避できなくなる。
 そんなことを、不明瞭になった視界の中考える。
 さっきまで目の間に広がっていた0.7の世界が恋しくなる。というか、どうしていきなり俺の視界は0.7から0.03に変わってしまったのだろうか。自分で魔法のアイテムをはずした記憶はないはずなのだが、あれ、おかしいな。
 いつもの癖でずりさがったそれを持ち上げようとした指が空をきる。すかっと通り抜けていく指にフラストレーションがつのってしまう。むむ。俺の魔法のアイテムを今すぐ返せ、この泥棒め。
 おそらくニヤニヤ顔を浮かべているであろう目の前の人物を睨みつける。見えなくても、あいつが楽しげにこちらを見ていることなど雰囲気で分かるのだ。俺は視力が悪い代わりに、第六感がよく働くのだ。なんてちゅうにみたいなことを言ってみる。

 「うわ、なにこれ。グラグラする」

 よくこんなのつけてられるな。と続いたセリフに俺は苦々しい気分で言葉を返す。

 「…そりゃそうだろ。貴也目いいじゃん」

 「おう。お前と違って1.0だからな」

 「マジで羨ましすぎる!」

 ぼやけた視界の向こうで俺の魔法のアイテムである眼鏡をつけたやつにムキーっと牙をむく。1.0の世界など俺は久しく体験していない。いや、その世界に俺はもう足を踏み入れることはできない。
 眼鏡の度数をあげればいいじゃないかと思うかもしれないが、ここまで視力を悪くしてしまった俺に1.0の世界はきつすぎるのだ。1.0にすると視界が鮮明になりすぎて頭が痛くなってしまう。だから俺の世界は0.7でとどまっていた。

 「ゲームのしすぎなんじゃね?」

 「俺がゲームしないの知ってるだろ」

 「じゃぁエロ本の見過ぎだな」

 「エ…!?そ、それも見ないの知ってるだろ!」

 「そうだった。エロ本買う勇気のないまーくんはたくましい妄想で楽しむんだったか」

 「まーくん言うな!」

 「やーい、やーい、まーくんのむっつりすけべぇー」

 「もうやめてよ!眼鏡返して!」

 むっつりだなんて思春期真っ只なかの男の子なんだから仕方ないじゃないか。いつだって頭の中はピンクの妄想で大忙しになるのは、男子校生のお仕事だと思うんだ!あ。痛い。お願いだから石を投げないで…!
 眼鏡を返せと腕をのばす俺と、楽しそうに笑うあいつ。少女のように笑ってはいるが、その実言っている内容はかわいくない。いじめっ子のように俺をいじめてくるから、ガラスのハートの俺はすでに半泣きである。
 なんとか眼鏡を取り返そうと奮闘するものらりくらりとかわされてなかなか奪還にいたらない。眼鏡をとるととたんに距離感を無くしてしまうせいか、俺の腕はなんども空振りを繰り返していた。

 「まーくんさっきから何してんの?」

 「見て分からないのか!?眼鏡を!取り返そうと!してるんだよ!」

 「それにしては全然違うとこ狙ってるけど」

 ここだ!と思って手を伸ばしたさきはなにも掴まず。を繰り返していれば不思議そうな声に聞かれる。俺はそれに伸ばす腕を休めることなく答える。やはり俺の手は、なにも掴めなかった。

 「あぁもう!貴也が俺の眼鏡取るからなにも見えないんじゃないか!」

 「本当に眼鏡ないとダメなんだな、まーくん」

 「ダメなの!なにも見えないの!裸族の貴也に眼鏡は必要ないんだから早く返してよ!」

 「まーくん。言い方」

 しげしげと言われて俺は力強く肯定を返す。だから返せと腕を伸ばすのに、いっこうに貴也は俺に眼鏡を返してくれない。「とんだビッチだな、まーくんは」だなんて意味不明なことを言っている。どこから出てきたのその設定は。誤った情報を流すのはやめてほしい。
 俺ほどビッチという言葉が似合わない人間はいないだろう。だいたい、俺みたいな平凡野郎がビッチだったらイタすぎると思うのだがどうだろう。貴也みたいなイケてるメンズがビッチというかヤリチンとかだったら「ですよね!」と納得できるが、俺みたいなのがビッチだと「…そうまでしないと相手がいないのね、乙」みたいな感じになる。いや、これはあくまでも俺個人の見解というか、こりにこりかたまった偏見なのでなかには「そんなことないよ!」と言ってくれる天使様がいるかもしれないが、俺はまだそんな天使様に出会えていない。なので、その持論は俺の中でちゃくちゃくと揺るぎない事実として定着しつつあった。

 「だいたい高校生にもなって1.0維持してるとか信じられない。人間じゃない」

 「ひどいな。俺はれっきとした人間だっての」

 「それに俺と違って貴也ゲームとかするのに、ずるい。目ん玉取っ替えてよ」

 「レーシックやれば?」

 「やだ!こわい!」

 何度やっても奪還できない眼鏡と、突きつけられる現実に俺の心はついに折れてしまった。伸ばしていた腕を目元に持ってきて、さめざめ。ひどい。ずるい。どうして堅実に生きてきた俺の視力はこんなに悪くて、目に酷いことばかりしてきた貴也のほうが視力がいいのか。あんまりな現実に俺の視界は視力とは別の理由で霞んでいく。
 よよよ。悲しみにくれる俺に貴也が視力がよくなる医学的療法を勧めてくるが、とんでもないと首をふる。悲しみは一気に吹き飛び、俺の心は恐怖に包まれる。

 「麻酔してても自分の目ん玉になにされてるのか見えちゃうんだよ!?たとえ視力が良くなるとはいえ、精神的代償が大きすぎる!俺レーシックするくらいなら一生眼鏡でいい!わーい、眼鏡最高!眼鏡大好き!」

 「まーくん。何かを得るためには、時には何かを犠牲にしなきゃなんだぜ?」

 「だったら俺は1.0の世界を諦める!」

 未知の恐怖にたちむかう勇気も気概も俺にはないので、大人しく現状維持だ。
 声高らかに宣言すれば「まーくんは一生平社員だな」と貴也がつぶやく。「偉くなって俺がちゃんとこき使ってやるから安心しろまーくん」と頭を撫でられた。いや、なにも安心できないんだけど貴也くん。

 「でも0.7の世界を諦めたわけじゃないから、そろそろ俺に眼鏡を返してくれないでしょうか」

 「実際さどんくらい見えてないの、いま」

 「あれ?言葉のキャッチボールは?」

 「教えたら返してやるから」

 さっきから発言が上目線なのは俺の眼鏡を物質にとっているからなのだろうか。だけど俺はその言葉に従うしかない。だって逆らって俺の眼鏡に何かあったら俺の生活は一気に絶望に彩られてしまう。眼鏡のない人生なんて考えられない。
 裸眼が一番楽だと思われがちだけど、俺みたいに視力矯正をしている人間は逆に矯正器である眼鏡を外している方が目に負担がかかったりするのである。見えないものを見ようとして、矯正機が担う部分まで頑張らないといけなくなるのだ。つまりは、疲れる。自然と眉間に力が入ってしまうし、裸族が思う以上に俺たちの眼球には大きな負担がかかっているのだ。
 なのに貴也はなかなか眼鏡を返してくれないし、言葉のキャッチボールもしてくれない。フリーダム貴也様降臨。彼はどこまでも自由に生きる。というか、視力がいい貴也が俺の眼鏡かけたらとんでもない視界暴力が起こっていそうなのだが大丈夫なのだろうか。

 「教えてって、さっきから見えないって言ってるじゃん」

 「見えないっていっても、度合いとかあるだろ?はい、これ何本?」

 「度合いって言っても物の輪郭は見えてるの。ただはっきり見えないだけ。一本。ちなみに中指」

 「おぉ。どの指かの判断はつくんだ」

 「あはは。残念なことに分かるんだなぁ、それが!はっきりは見えないけど、お前のその中指はちゃんと見えているぞ!」

 視界がぼやけるとはいえ、さすがに1mの距離なら指の本数も、どの指が立てられているのかも分かる。なので貴也が中指を一本立てているのも、ぼやけた視界なりに見えていた。ひどくない?立てるにしてもほかの指があったよね?なんでよりにもよってその指を一本だけ立てるの?ちと俺いびりが酷すぎじゃありゃしませんかね、貴也くん。

 「この距離でもはっきり見えないのか。じゃあ、この距離は?」

 「うぉ!?」

 「どう?見える?」

 「ひぃい!イケメンのご尊顔がぁぁぁ!」

 「…なんでのけぞるんだよ」

 いきなり腕を引かれたかと思えば、目の前に現れた貴也の尊顔にびっくりして思わずのけぞってしまう。だけど腰をがっちりホールドされているので思うように距離を取れない。むしろ無理な体勢でのけぞってしまって腰にとてつもない負担がかかってしまった。
 貴也がなにやら不満げに言ってくるけれど、俺はそれどころではない。いつもは眼鏡越しで見ている貴也の顔をむき出しの状態で、それもドアップで見てしまって心臓がばっくんばっくんなのだ。なぜか貴也の膝の上に座らされているこの状況もどきどきに拍車をかける。お尻のしたに感じる貴也の体温が生々しいよ…!よぎる考えが、我ながら変態くさすぎて泣けてくる。

 「ご堪忍をぉ…!眼鏡なしでその尊顔と向き合えるほど俺の心臓は強くないんですぅ…!」

 「いつも見てるじゃん、俺の顔」

 「馬鹿!眼鏡ありとなしじゃ全然ちがうんだよ!眼鏡の防御力なめんなよ!」

 顔を両手で覆いつつ叫ぶ。気持ちはさながら生娘である。やめて、堪忍して。「眼鏡って防御アイテムだったのか」どこか関心したようにな貴也の声が聞こえる。そう、眼鏡って防御アイテムなの!だから早く返して欲しいの!

 「まーくん」

 「なに!?」

 「顔、みたい」

 「…っ!」

 ズッキューン!!

 俺はそのとき自分の心臓が射抜かれる音を聞いた。
 オー、マイ、ゴッド…!顔を覆いのけぞりながら俺はもだえる。こういう風に甘えるような声でおねだりを言ってくる貴也に俺は自分でも驚くほど弱かった。どうにも貴也に甘えられると俺は骨抜きにされてしまうのだ。
 促すように襟足を撫でられて、俺はもう、限界です。

 「なぁ、俺眼鏡似合ってる?」

 ひらけた視界。30センチもない距離で笑う貴也に顔の温度が上がっていく。
 なんの変哲もない黒縁の眼鏡だ。俺がかけると「オタクかよ」と言われるそれも、貴也がかけると知的な雰囲気をかもしだすアイテムへと姿をかえる。なによりすこしズレた眼鏡の上からこちらを見上げてくるアングルがとてつもなくエロかった。上目遣いで笑う隆也はもはや生きたエロスである。そんな馬鹿なことを思ってしまうほど最高に格好よくてエロい貴也になんだか頭がクラクラしてきた。

 「か、かっこいいです…」

 「惚れ直した?」

 襟足をさわさわされながら眼鏡貴也に聞かれて、熱にうかされたように俺は何度も顔を上下させる。貴也と眼鏡の組み合わせがこんなにすごいなんて、俺知らなかった。今なら「眼鏡は偉大なアイテムなのよ!」と力説していた姉ちゃんの気持ちが分かるかも。うん。確かにこれは偉大だね、姉ちゃん。凄まじすぎて弟は腰がくだけそうです。

 「眼鏡ありとなし、どっちの俺がいい?」

 至近距離、悪戯っ子のように微笑まれて俺の心臓がぎゅんぎゅんと音を立てる。格好良い、エロい。エロい、格好良い。そればかりが頭の中をぐるぐる回る。でも仕方がない。だって本当に格好良すぎてエロすぎてしょうがないんだもん。

 「まーくん、どっちがいい?」

 「ど、どっちも、好き」

 「どっちも?まーくんは欲張りだな」

 そう言いつつ貴也の表情は嬉しそうだった。嬉しそうに笑っていた。それがまた可愛くて、高鳴るビートを止められない。格好良くてエロくて可愛いって、チート過ぎて俺の心臓がついていけないよ。

 「でも俺も、どっちのまーくんも大好きだぜ」

 「お、俺もどっちの貴也も大好き…!」

 「知ってる」

 クリアになる視界。見下ろす先の貴也の顔にはもう眼鏡はなかった。だけど俺を見上げて笑う顔は俺の大好きな貴也のもので、胸に去来する想いは変わらない。
 大好きだ。本当に。眼鏡があってもなくても。別に眼鏡の有無で好きになったわけではないけれど、それくらい俺は貴也が好きだということだ。そしてそれは貴也も同じなのだと言う。あぁ、相思相愛すぎてどうしよう。
 0.7の世界で貴也が笑う。それに俺も笑い返して、どちらかともなく顔を近づけていく。あと少しで触れ合う。というところで貴也がいたずらっぽくこぼす。

 「…後で伊達眼鏡買いにいく?」

 「……いく」

 眼鏡貴也の衝撃が忘れられない俺はその提案に是と返す。今度はぜひ鮮明な視界で眼鏡貴也を拝みたかった。「りょーかい」俺の答えに返事する貴也は楽しげだ。「後で買いにいこう」そう言いながら貴也に戻された眼鏡をまたはずされた。なぜ戻されたはずの眼鏡を外されているのか、なぞの行動に首をかしげれば「ちょっと邪魔だからな」と貴也が言う。なにがちょっと邪魔なのだろうかと考えて、今から自分たちがしようとしていたことを思い出し恥ずかしくなった。たしかに、眼鏡をかけたままではちょっと邪魔かもしれない。
 かちゃり。眼鏡が床に置かれる。その際もじっと貴也に見つめられ続けて俺は恥ずかしさで死んでしまうんじゃないかと思った。

 「まーくんかわいい…」

 クスリと笑われて思わず瞼を閉じる。
 閉じた瞬間、唇に感じる熱。条件反射で口を開ければすぐさま貴也の舌が入りこんできた。縦横無尽に動き回るそれに俺は翻弄され、うまく酸素が吸えずに頭が朦朧としてくる。
 苦しいけれど、でも貴也と離れるのは嫌で懸命に貴也にすがりつく。貴也の頭を抱くように腕を回して抱きつく俺に、唇を合わせながら笑みをこぼす貴也。俺はこんなにいっぱいいっぱいなのに…さすが貴也だ、余裕がぜんぜん違う。はやく俺みたいに余裕をなくしてくれればいいのに。そしたら俺は貴也を誰かに取られてしまうかもと思う回数が減るかもしれない。
 あぁ、もう。本当に大好きだ。
 あふれる想いが、止められない。まさかここまで誰かを好きになるなんて思わなかった。こんなに人を好きになって不安になるなんて知らなかった。唇を合わせているいまだって、俺は不安で仕方がない。

 「たかや…っ」

 眼鏡を奪われた視界の中に放り出されたみたいに、俺は不安で包まれる。距離がわからない。全てがボヤけてしまう。無理に見ようと目をすがめれば痛みに襲われる。そう、俺にとって貴也は眼鏡のように無くてはならい存在なんだ。本人に言ったら微妙な顔をされそうだが、同じ眼鏡愛好家の方々にはこの気持ちは分かってもらえるはずだ。
 俺たち眼鏡使用者にとって、どれだけ眼鏡が欠かせない存在であるかを。

 「どした、まーくん」

 キスの合間に名前を呼べば、俺が何かを言いたいことに気がついて唇を離してくれる貴也。そんな些細なこと一つが、身をよじってしまうほど嬉しかった。
 離したといっても、その距離は1センチくらしいか離れていない。互いの呼気が唇にあたって、俺は貴也の唇に噛みつきたい衝動にかられる。だけど、我慢だ。何度か息を整わせるために呼吸して、ゆっくりと閉じていた瞼をあける。
 1.0も0.7も関係ないほど近距離のせいか貴也の顔がボヤけてしまう。だけどその距離で俺は貴也の瞳を見つめる。貴也もまた、俺の瞳を見つめ返してくれた。
 瞳の中には俺と貴也しか存在しない。そのことに、俺は少しだけ安心できる。そして、出来ることならその瞳に俺以外の人間をうつしませんようにと希う。

 「…俺の前以外で眼鏡つけるの禁止な」

 俺のワガママに至近距離で貴也が目を丸くする。けれど次の瞬間には目尻を下げて嬉しそうに笑った。

 「りょーかい」

 まーくんの前でしか、つけねぇよ。
 取り付けた確約に満足した俺はむふふと笑う。良かった。貴也が視力良くて。いまだに裸眼でいられるのは羨ましいが、みんなが大好き貴也くんの眼鏡姿を俺一人だけが独り占めできるのだから許してやろう。
 俺だけが知ってる、貴也の姿。
 考えるだけで体の底から嬉しさが溢れてくる。自分に自信のない俺は、みんなが知らない貴也の数で自信のなさをカバーしないと今にも不安で押しつぶされそうになってしまう。
 また一つ増えた俺だけの貴也に、にやつく顔をおさえられない。ぎゅーっと抱きしめる腕に力を込めて、貴也の首元に顔をすりすり。

 「まーくんくすぐったい」

 「えへへー」

 「まぁ、可愛いからいいけどさ」

 すりすり。ぐりぐり。甘えるみたいになんども繰り返す。そんな俺の頭を貴也はぽんぽんとして、ちゅっとほっぺたにキスをしてくれた。それが嬉しすぎてまた笑えば「まーくんは本当に俺のことが大好きだな」と自信満々に言われる。俺はそれにふふんと笑ってお返しとばかりに貴也のほっぺたにキスを落とした。
 むふふ。なにをいまさらおっしゃいますか。

 「眼鏡と同じくらい貴也大好き」

 「なにそれ。眼鏡と同じって、俺喜んでいいの?」

 「喜んでくれていいぞ。なんたって俺は眼鏡無しじゃ生きていけないからな」

 それはつまり、貴也がいないと生きていけないってことでもある。その意味に気がついたのだろう、貴也が吐息で笑う。そして力一杯抱きしめられたかと思えば、耳元で楽しそうに貴也がささやいた。

 「じゃあこれからも一緒だな」

 ささやかれた言葉に嬉しくなって俺の顔はにやけていく。
 今この一瞬だけでもいい。嘘でも冗談でもそう言ってくれるだけで俺の不安は簡単に吹き飛んでいく。どうしたって不安は拭いきれないけれど、貴也の言葉があれば俺は頑張れるから。


 「うん。一緒だ」


 0.03の世界で微笑む貴也は、誰にも渡したくないくらい格好良かった。





 END

 



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