※ゾンさん喫煙者設定



ぼんやりと高そうなカーテンのプリーツを数える。
1、2、3、4、5、6、7、8、9。反対側は10。なんだかレールがあまりそうだなぁなんて考えながら、自分の身体と思考をゆっくりと分離した。
早く終わってほしい。今日は一段とそう思う。久しぶりの相手が毛ダルマのデブ重役だからなのもあるけど。身体を使う仕事だから、普段は割り切っているつもりだったけど、それは結構些細な事で決壊した。私の中の小さな支えはこんなにも自分の中で大きくなっていて、なんだか情けなくて涙が出る。
わざとらしく高く声を出したら、あっさりと果てた相手は大層私を気に入ったらしく、また連絡するよと名刺と札束を渡されて別れた。

仕事柄仕方はないが本当に疲れた。げっそりとしてアパートの階段を上がる。はよシャワー浴びて寝たい。

「おい」
「げ、ゾンビ」
「げってなんだよ」

最悪だ。このタイミングで会いたくなかった。人の家の前で待ち伏せとか、ヒーローとしてどうなのよ。

「…お前、今日ヒーロー協会の重役と一緒にいただろ」
「………」
「さっきホテルの前からタクシーに乗り込むアイツを見送ってるのを見た」

顔を反らすが彼の死なない瞳に睨まれる。暗闇で見ると、目だけがぼうっと光っているみたい

「また情報屋の仕事か?アイツがターゲットなのか」
「…悪いけど今日は帰って」

帰らないと言わんばかりにぐっと腕を掴まれて、唇を塞がれる。
思わず突き放そうとしたけれどコイツはゾンビのくせにヒーローなので私の腕力では対抗出来ない。
塞がれた唇に舌が割って入って、仕方なく私はそれに応える。
あ、ゾンビマンの味がする。
ちょっと心が癒されたので、私の口内の歯列をゆるゆるとなぞる舌を追いかけて触る。すると彼は何か毒でも舐めたようにハッとして目を見開いた。

「ナマエ、…アイツと本当に寝たのか」
「…仕事だから」

静かに言うと、ゾンビマンは押し黙った。こっちは口の中が嫌ほど知ってる煙草の味でも、さっきの男のやけにぬるぬるとした唾液で満たされていたのを再確認して吐きそうだ。そこにさらにゾンビのが混ざったしもう口内環境は最悪である。

「おまえ…歯ぐらい磨いてからホテル出ろよ」
「ホテル一緒に出て直帰したからしてないの。」

だから会いたくなかったって言ったのに、そんなのお構いなしと言うようにゾンビマンはまた唇を寄せた。

「ちょっと!」
「ナマエを俺の味にしてから帰る」
「それは仕事上困る」
「うるせーよ、どうせ何してもお前はまた会えば他の味がするんだろ」

私の気持ちを引っつかんでくゾンビマンだけはそんな事ないんだけどな
と思ったけれど言ってはやらない。

彼はもうそれに気付いているのかわからないけれど、

今はどうか溶かして、優しく舐めとって、あなたで満たして




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