まずい。傘がない。
天気予報の嘘つき。しかしこの下校時間に所謂ゲリラ豪雨が降るということは、
日本の夏の風物詩である本来夕立というにわか雨である。
それがこの現代社会により、ゲリラ豪雨というロマンの欠片もない名にされてしまったのだ。
その名の語感に感じられる濁音さながら叩きつけるような土砂降りの雨が、地を跳ね返り屋根のある地面をも濡らした。

「シャワーみたいだ」

え、と声がした方を見る。
目がかち合う。同じクラスの影山君だ。

「あ、ごめんつい」
「ううん。わたしもそう思ったからびっくりして」

その瞬間、視界を真っ白な光が遮ってすぐ
バリバリバリという雷鳴が地面と空から耳を劈き、爆風が正面に押し寄せた。

風にさらわれた傘の先端が私の眼に向かって飛んでくる

「うわ、」
「あ 危ない!」

顔に刺さる!と目をつむって身構えたが飛んできた傘は私に当たらない

不思議に思って顔を上げると、また視界を真っ白な光が覆った。
一瞬見えた傘は浮いていた。彼の指先の上で。


「今見たものは、僕ときみの秘密だよ」




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