「名前!ここにいたのか!」

「あ、風丸」

バタンとドアが開く大きな音ともに風丸が長い髪の毛を靡かせて勢い良く屋上へと飛び出してきた。走ったのか少し息が切れている。
そんな彼の姿を見て吹雪は少し驚いた顔をしている。

「風丸くん、そんなに急いでどうしたの?」

「円堂がお前を探してる」

「あの人腹黒いから嫌だ」

そう。我がサッカー部キャプテンの円堂は稀に見せる顔が腹黒い。というよりドSだ。普段は天然で熱血なサッカー大好きな人なのだが…。

「我が侭言うなよ。あ、それと今日の放課後はサッカー部の助っ人に来てくれ」

「え…。今日は吹雪と…」

ちらり、吹雪を伺う。彼は私の視線に気が付くとにこやかに笑った。その笑顔は爽やかなのか綺麗なのか、はたまた、計算なのか私には分からない。

「僕は別に構わないよ。名前、助っ人に行けば?」

「…勿論、部員のお前も来るよな?吹雪?」

風丸の鋭い質問に吹雪は言葉を詰まらせた。もしかして、私を置いてでも自分はナンパしに行こうと思っていたのだろうか。…なんという男だ。



「風丸はナンパの素晴らしさを知るべきだよ」

3人で仲良く屋上に胡座をかいて座る。空は綺麗な青を映し出していて気分まで清々しくなるようだった。
そんな中、風丸は私の言葉に眉を寄せる。

「なんでだよ。知りたくない」

「別に良いじゃないか。俺が相手するよ?なんなら今夜、俺の部屋に来る?」

風丸に近付き、頬にそっと手を添える。すると彼は勢い良く後ろへと後ずさった。それを見て吹雪は大笑い。風丸は顔を真っ青にしている。
私は自信たっぷりに吹雪を見た。

「どう?新しいテクニックは!」

「あははっ、名前はとことんやってくれるよね…くくっ、あはははは!」

「おい、名前。心臓に悪いからそういうのやめろよ…それと吹雪、笑いすぎだ」

少し離れた場所でため息を吐く風丸。吹雪はまだ大笑いしている。
私はと言うと新しいテクニックが風丸に何の効果も与えていないので軽くショックだ。やはり、男には通じないと言うことなのだろうか。今度、ダメ元で豪炎寺に試してみよう。

「名前!聞いてるのか!?」

「はいはい、聞いてるよ。照れ屋の風丸くん」

そう言って頬に軽くキスをする。今度は風丸の顔が真っ青ではなく真っ赤になった。嗚呼、こっちは効くのか。予想外の可愛らしい反応に胸が踊る。

「僕にはしてくれないの?」

「…されたい?」

「だぁぁああ!止めろお前ら、こんな昼間に!」

風丸の悲痛な叫びが空に響いた。



(101230)