出来れば、こいつらを家に上げたくない。風丸ならまだいい。何度か上げたことがある。それに彼は私の男装癖を知っている。しかし、あの3人はその事を知らない。家に上がられて勘づかれてしまったらおしまいだ。
そんなことを考えていると自宅はすぐそこまで近付いてきていた。



「ここだよ俺ん家」

「おおお!なあなあ、風丸は来たことあるのか?」

「ああ、まあ何回か」

「いいよな風丸は…苗字と仲良くてさ」

「円堂それ本気で言っているのか?」

恐る恐る風丸が聞く。私は3人玄関へ案内しながらちらりと円堂を見た。鬼道と豪炎寺も円堂に目をやる。美青年(私を除く)達の視線を集めた彼はにこりと笑って口を開いた。

「だって弱味とか握れるだろ?そろそろサッカー部に苗字が欲しいんだ」

本当にこいつだけは家に入れたくない。今すぐ帰って欲しい。そして弱味とは一体どのような弱味なんだ。気になって仕方がない。
円堂の発言に苦笑いしている風丸と相変わらず無表情で感情が読み取れない豪炎寺。誰も声を出さない中、鬼道が小さく笑った。そして言葉を紡ぐ。

「弱味は別問題として、その件には俺も同意だ」

「お前なら分かってくれると思ってたぜ!」

「前に響監督もおっしゃっていたしな。良い機会だ」

「…円堂、鬼道。さっきから思っているんだが、俺達の最初の目的は苗字と話すことだったんじゃないのか?」

豪炎寺が眉を潜めながら言った。その言葉に私は目を見開いた。それなら色々と言いたいことがある。が、先ずはリビングに案内しなければ。3人をリビングへ連れていき、自分はキッチンへ向かう。お茶の一つも出さないのか、と円堂に言われたらおしまいだ。何がって私のこれからの人生が。



(110626)