学校の帰り道は素晴らしい。
可愛い子歩いているし。夕飯のおかず買って帰れるし。なによりこの商店街の雰囲気が良い。
心地よい雰囲気に浸かりながら商店街をゆっくり歩く。すると後ろの方から声がした。

「苗字!」

かなり大きい声だ。道を歩いている人々が誰が発している声なのかと周りを見渡す。私は声でなんとなく分かった。
この人物には振り返りたくない。そしてその場で走り出した。

「苗字ー!鬼道もいるぞー」

「何故、俺の名前を出すんだ」

「別に良いだろ。なぁ?豪炎寺」

「……そうだな」

「適当言うな」

おかしい。私は全力で走っているつもりだ。なのに後ろから聞こえてくる声は中々遠ざからない。むしろ近付いてきている気がする。
少し勇気を出して振り向いてみる。

「あ、やっとこっち見た」

「うおおおお、マジかよ!何で追いかけてくんだよ!」

右から豪炎寺、円堂、鬼道。三人並んで私のすぐ後ろを走っている。怖い以外の何物でもない。豪炎寺に至っては無表情。この場で泣き出したい気分だ。しかも現役サッカー部員の強豪達に足で勝てるわけがない。このまま走れば絶対に捕まる。なんとか巻かねば。

「何で俺達から逃げるんだよ」

「逃げたくもなるだろ!速い!お前ら三人速すぎる!」

「ちゃんと前見て走れよ…。風丸!苗字を捕まえろ!」

走りすぎて頭が上手く働かなかった。前を見ると水色が見える。
私は止まることができず、そのまま水色に突っ込んだ。



(110602)