DVDをカウンターへと返却し、何かないかと店内をフラフラする。目に留まった洋画があったが、新作で値段が高い上に借りれる期間が短いので諦めた。
結局、借りるDVDはなかった。

店を出てゆっくりと歩く。あのファミレスの前を通るのが億劫だ。まだ三人はファミレスにいるのだろうか。できれば帰っていて欲しい。
空はオレンジに輝いていて、聳え立つビルは道路に長方形の影を作っている。その影を見て私はため息を吐いた。

ファミレスの看板が見えてきた。なるべく、窓ガラスを見ないようにしよう。そうすればあちらも気付かない筈だ。それにしても、なんでこんなラフな服装を涼野たちに見られなければならないのだ。きっとダサいと思われているだろう。
あの三人は服のセンスが見るからに良さそうだ。

ファミレスを通り過ぎようとしたとき、誰かに腕を掴まれた。振り返ると無表情の涼野。

「来い」

ただそれだけ言うと私の腕を引っ張ってファミレスへと入る。どういうことなのか全く分からない。
基山と南雲が座っているテーブル席に連れてこられた。基山は微笑を浮かべていて、南雲はじっと私を見ている。
私は状況が分からないまま、椅子に座った。そして隣に涼野が座る。

どうしよう、逃げれない。



(100514)