涼野風介、サッカー部。以上。
自己紹介はこれだけだ。趣味と特技は所属している部活で分かるだろう。誕生日など知ってどうする。一方的な祝いの言葉など迷惑だ。
学校生活は楽しんではいない。部活だけが楽しいというところか。学力は人より倍ある。だが、授業に積極的に参加していないため、教師からの評判は少し悪い。どうでも良いことだ。

最近、席替えをした。窓側の一番後ろの席。隣は話したことがないあまり知らない女子。知っているのは苗字くらい。名前は知らない。その女子も私のことはあまり知らないようだ。私を知らない女子は珍しい。サッカー部はこの学校で一番人気の部活で、部員も顔立ちの良い者ばかりいる。当然のようにファンクラブがある。一番人気なのは主将の基山ヒロト。奴のどこが良いのか私にはさっぱり分からない。…あ、顔か。
私も人気はある方だ。しかし、キャーキャー言われるのはこの上なく不愉快。人気なんぞなくていい。
席替えする前の隣の女子はじっとこちらを見てきて気味が悪かった。勿論、その女子のことは全く知らない。苗字も名前も知らない。

しかし、今回隣になった女子の名前は何故か知っていた。それが不思議で堪らない。どうしてだろう、そう思いながら私は机に顔を伏せた。



(100418)