お前んとこのファンクラブ会長とその取り巻き、珍しくいないな。


晴矢がグランドの外側を見ながら言った。確かに今日は何だか人数が少ない気がする。そんなことよりも何故、晴矢が私のファンクラブ会長の事を覚えているのか分からない。

「覚えていた方が便利なんだよ」

どのように便利かを詳しく説明してもらいたいものだ。内心ため息を吐いて私はユニフォームの袖を肩まで捲った。



「みょうじさん、大丈夫かなぁ」

「何故それを私に言うんだ」

「付き合っているんだろ?」

「君たちの脅しでね」

「…女の子って嫉妬深いからね。探しに行ってきたら?部活のことなら気にしなくて良いよ」

「そーだぜ風介。女ってネチネチした生き物だからな。アイツ危ないかもしんねーよ?」

この二人に言われたことが癪でならない。私はベンチに置いてあるジャージを乱暴に掴んで腰に巻いた。






探しに来て正解だった。
体育館裏を覗けば数人の女子が円を作るように並んで楽しそうに笑っている。その中央にはみょうじがいた。手足は縛られ、制服のスカートはスカートという役目を果たしていないとでも言うかのようにズタズタだった。
その姿を見た瞬間、腸が煮え繰り返りそうだった。

「…何をしている」

自分でも驚くほど低い声が出た。女子達はビクッと体を震わせ、こちらを見る。私の姿を確認すると、顔を真っ青にした。
必死に言葉を紡ぎながら言い訳を言い出す。それが酷く醜くて仕方がなかった。頼んでもない言い訳なんて聞きたくない。
私は女子を掻き分け、中央に倒れているみょうじに自分の腰に巻いているジャージを着せた。そして手足を縛っている縄を各々、解く。

「お前達、ただでは済まさないからな」

吐き捨てるように言ってみょうじを背負う。途端、女子の一人が走り出して体育館裏から消える。すると残りの女子達が「お待ちください会長!」と言って駆けていった。自分の都合が悪くなったら逃げる、なんて情けなくて見ていられない。
私は背負っているみょうじに声を掛けた。

「大丈夫か?」

「これのどこが大丈夫に見えるの」

「…悪い。私の責任だ」

「その話はまた後で。ちょっと降ろして」

「無理だ」

「何で?」

「裏門から出るぞ」

「…は?どこに行く気?」

「私の家だ」

そう言って私は駆け出した。
保健室に連れていくという手もあるのだが、何故かみょうじを学校の生徒に見せたくないと思った。
学校から自宅はそう遠くない。走っていけば直ぐに着く。それにこの時間帯は自宅までの道のりにあまり人気はない。
……大丈夫だ。



(101225)