「二人でこのパフェ、食べちゃう?」

もう、なんと言ったら良いのか。一刻も早く家に帰りたい。こんな服装でこれ以上イケメンと一緒にいたくはない。
ちなみにこのパフェは誰が注文したのだろうか。南雲なわけないし、涼野はそんな乙女じゃない。となると…

「晴矢と風介、遅いね」

私とテーブルを挟んで座っている基山。こいつか、こいつなのか。
男子三人がファミレスでパフェを注文して仲良く食べる…想像しただけで鳥肌が立つ。

「ん?俺の顔に何かついてる?」

「いや別に…。何でもない、です」

ばっちりと目が合ってしまった。気まずい。この雰囲気をどう切り抜けようかと考えてみる。さっさとあの二人帰ってきてはくれないものか。家に帰りたい、切実に。
そう思いながらテーブルにある模様をじっと見ていたときだった。

「お、まだ食べてなかったのかよ」

南雲の声が聞こえた。良かった。戻ってきた。これで基山と二人きりではなくなる。ほっと安堵の息を吐いた。

「皆で食べないと美味しくないだろ?まぁ、俺とみょうじさんと二人で食べるのも悪くないかな」

ダンッと涼野がテーブルを叩く。途端、ニコニコと笑っていた基山から表情が消えた。

「行儀が悪いぞ、風介」

「知るか」

どうしようすごく帰りたい。…もう帰って良いよね。さっきの話は聞かなかったことにしても良いよね。私は何も見ていません聞いていません言っていません。よし、これでいこう。他言しなければ大丈夫だきっと。

「あの、ちょっとお手洗いに…」

「逃げるの?」

基山が無表情で私を見る。どうやら彼に私の考えは見え見えのようだ。これは非常に困る。私はそんなことないよ、と笑みをつくって基山に言う。信じてはいないだろうけど。

「そう。もし逃げたら…分かるよね?」

基山が携帯をちらつかせる。写真をバラまくということか。…逃げることは諦めた方が良さそうだ。



四人で仲良く談笑しながらパフェを食べる。他人から見たらそんな感じだろう。認めたくはないが。それにしてもこのパフェの大きさは異常だ。

「さっきの続きだけど」

基山がタイミングを見計らって口を開く。涼野の手が止まり、南雲は待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑う。

「風介の傍にいろ、反論は認めない。傍にいないと判断したら即、写真を校内にバラまく。勿論、休み時間も傍にいること。例外はない」

表情一つ変えずに淡々と基山は言った。涼野はスプーンを手にしたまま基山を見ている。
南雲の楽しそうな笑い声と共に私の日常は派手な音を立てて崩れさった。



(100617)