「やっぱり一緒は良いね」

…おかしい。これは有り得ない。何でこうなってしまったんだろう。
入浴剤で白くなった湯に肩まで浸かりながら嘆いた。隣には赤髪の青年。知る人ぞ知る、基山ヒロトである。
何故、年頃の男女二人が同じ湯船に浸かっているのか。
時は少し遡る。




「今日は泊まっていきなよ」

のんびりとヒロトの部屋でテレビゲームをしている後ろ姿に言った言葉。それを聞いた彼女はコントローラ投げ出し、顔をこれ以上はないくらいに歪めた。

「何を言ってるのかな基山君ってばもう!絶対に嫌。私帰るね」

一息で言い放ち、自分の鞄はどこかと辺りを見渡す。しかし彼は全く気にしていないようで、淡々と言葉を続けた。

「明日は学校も部活もないから丁度良い」

「何と言おうが泊まらないからね」

やっと鞄を見付け、手に取ろうとした時。ヒョイ、とヒロトが頭の上へと素早く鞄を持ち上げた。彼と身長差がある彼女は当然のように手を伸ばしても背伸びをしても鞄に手は届かない。

「…返して」

「泊まってくれるんだったら返すよ」

そう言いながら勝ち誇った笑みを浮かべる。大人しく言う事を聞くしかない。このとき自分の身長を恨んだ。



「お風呂」

「ん?」

「一緒にお風呂入ろう」

「は?」

DSを持ったまま固まる。それを見てヒロトは楽しそうに笑った。そして容赦無しに固まる彼女の首根っこを掴み、ズルズルと引き摺る。



気が付くとヒロトと脱衣所にいた。まだDSは持ったままだ。我に返り、隣にいるであろうヒロトを見た。

彼は服を脱いでいた。

「いやー!ちょっと、何してるの猥褻罪で訴えてやろうか」

「君が言うと冗談に聞こえないからやめて。さっき言ったじゃないか、一緒に入るって」

「言ってないよ!…ちょっ、まっ、ズボン脱ぐなぁああ!」

「このぐらい慣れてるだろ?一々照れるなよ」

「別にこれは照れてるわけじゃないからね!?」

次々と服を脱ぐヒロトに思わずDSを投げ付けた。しかしそんな攻撃が彼に効く筈がない。投げられたDSを器用にキャッチするとバスタオルの上に置いた。

「人に向かって物を投げたら危ないだろ。ほら、さっさと脱ぐ」

「せめてタオルは…」

「駄目」

ばっさりと切り捨てられた。




そして今に至る。
決して狭くはない湯船に大人二人が入れば窮屈になる。彼女は体を出来る限り、小さくしていた。すると、いきなり腰に手を回された。あまりにも突然の出来事で硬直してしまう。

「緊張しなくていいよ。ちょっと体勢変えない?」

「体勢?出来れば今すぐに上がりたいんだけど」

「そんなこと言わずに、ね」

自分より小さい身体を包み込むように抱きしめ、もぞもぞと動くヒロト。しばらくすると、彼の足の間に彼女が座るという体勢になった。




続きが浮かばないので没