不動くんはあの日以来、私を避けるようになりました。いつもは私から話しかけてキレるか、素っ気ない返事をするのですが、反応すらしてくれません。話し掛けようと近づくと、不動くんは静かに私から離れていきます。なんだか泣きそうです。

「ん、どうした?」

「キャプテン…。円堂のせいだよ!」

思わず、大声を出してしまいました。チームの皆は練習中にも関わらず、私とキャプテンを見ました。そんな中、不動くんは一人で練習を続けています。

「何が俺のせいなわけ?」

キャプテンの周りでどす黒い何かがゆらゆら揺らめいています。これがあのオーラと言うものなんでしょうか。見なくていいものを見てしまいました。本当に泣きそうです。

「円堂があんなこと言ったから!」

「…だから何だよ?」

多分、キャプテンのせいです。不動くんが私を避けるようになったのはキャプテンのせいです。あんなこと言ったからだと思います。私はキャプテンのこと、好きじゃありません。どちらかと言えば苦手です。これを言ったらキャプテンにグラウンド10周くらいさせられそうです。

「不動のことか?」

「…だったらどうするの」

「こうする」

キャプテンはそう言って、不動くんがいる方へ走り出しました。何をする気なのか全く分かりません。
皆は練習を再開し始めました。きっとキャプテンが練習をするようにと皆を睨…注意したんだと思います。
キャプテンは効果音が付くほど思いきり不動くんの腕を掴みました。不動くんは驚いた顔をしています。キャプテンはにっこり笑うと、不動くんに何か言いました。残念ながら私には聞こえませんでした。
不動くんの眉間にだんだんと皺が刻まれていきます。最後にはこめかみに青筋まで浮かびました。

「おい!」

不動くんは大きな声で私に呼びかけました。

「練習が終わったら話がある」

これは喜んでも良いんでしょうか。私は叫びだしたい気持ちになりました。キャプテンはさっきより増して、にっこり笑いました。その笑顔が悪い意味で一生忘れられません。




(早くしないと俺が横取りするからな)



(100523)