不動くんは一人でいることが好きです。不動くんは皆と仲良くできません。だから、練習はいつも一人でしています。話し掛けるとキレます。そしてどこかへ行ってしまいます。
キャプテンはそんな不動くんを微笑ましい感じで見守っています。話し掛けようとは思っていないようです。鬼道くんも同じです。ただ、キャプテンと違うのは冷たい目で不動くんを見ているというだけです。

「不動く…」

「話し掛けるなって言ってんだろ」

「うん。…練習はもう終わりだよ?」

「知るかよ。ほっとけ」

不動くんはいつも誰より遅く練習をしています。その事は誰も知りません。キャプテンも知りません。ちなみに言うとキャプテンはああ見えて結構腹黒いです。

「終わるまで待ってるよ」

「勝手にしろ」

私は不動くんの練習を見ることにしました。辺りはだんだんと暗くなっていきます。それでも不動くんは練習を続けます。私が声を掛けようとすると、後ろから誰かがやって来ました。

「キャプテン?」

「もうすぐ晩飯だぞ?早く帰ってこいよ」

「ごめんね。不動くんの練習が終わるのを待ってるの」

「不動…?嗚呼、まだ練習してたのかあいつ。おーい不動ー!」

いきなりキャプテンが大声を出しました。不動くんは勢いよく振り返ります。キャプテンがいることを確認すると舌打ちをしました。

「なんでいるんだよ…」

「もう暗いから早めに練習終わらせろよ!お前のことずっと待ってるやつがいるぞー!」

「…」

不動くんは黙ったまま、練習を続けました。キャプテンを見ると笑っています。そして私を見ました。私の肩に手を置いて一言。

「あいつより、俺の方が良いぜ?」

こんな腹黒い奴、絶対に嫌です。
私は答える代わりに肩に置いてあるキャプテンの手を払い落としました。

するとキャプテンは笑いました。不動くんの方からまた舌打ちが聞こえてきました。


(100517)