昼休み。がやがやと雑談が飛び交う教室。いつも一緒に昼食を食べている友人が残念ながら休みなので自分の席に座り、一人で弁当を食べることに。なんだか寂しい。

「おい」

弁当箱の蓋を開け、今日のおかずと対面した直後、誰かが私の席の前に座った。顔を上げて相手の顔を見た私は叫びだしたくなった。

「こここここんにちは南雲くん。ごめんなさい、今お金持っていないんだ。30円しかないよ。カツアゲするなら誰か別の人に…」

「なんのことだよ?別にカツアゲなんかしねぇし」

眉を寄せて首を傾げる南雲。
今、私の目の前に座っているのはただのクラスメート。それ以上でも以下でもない。
間違えた。ただのクラスメートなんかじゃない。ただの問題児だ。何人もの先輩をもてあましているとか、屋上で煙草を吸っていたとか、休日はバイクを乗り回しているとか、悪い噂が絶えない。
それに比べ私は普通のどこにでもいるような普通系女子。問題など起こしたことがない。

「えっと南雲くん、私に何か用でも?」

「俺の女になれ」

南雲の発した言葉により、教室が一気に静まり返った。クラスメート全員がこちらを凝視している。

「聞こえなかったのか?」

誰一人、物音を立てない教室に南雲の声が響く。

「すみませんごめんなさいすみません!無理です私には無理ですだから殺すのだけは…いだっ」

ごつん、と拳が頭に落ちてきた。そして襟元を捕まれ、引き寄せられる。南雲が怪しく笑った。

「拒否権なんかお前にねぇよ」

どうしてこういうときに頼れる友人は休みなんだ。



(100326)