「俺と付き合え」

「どこまで?出来れば外出したくないんだよね私」

「そっちの付き合うじゃねぇよ」

「は?」

「お前にちゃんと告白してねぇな、って思って」

ああそうですね。授業中にあんなことされてしかも授業終了後は二人仲良く職員室に行ったのだから。しかもその後は成り行きで付き合うようになった。
今考えると、有り得ない。本当に有り得ない。こんなふざけた青春を過ごして良いのだろうか。

「真面目に告白しに来たのはすごいと思うよタラシのくせに。でもね、何で今?」

今日は日曜日。時間帯はお昼前。家には家族がいる。そして私の格好は部屋着。目の前にいるモテ雲…間違えた。目の前にいる南雲は私服。よく見ればセンスが良い。

「日曜なら流石のお前も暇だろうと思ってな。見ての通りだな」

「嫌だよ。外出なんてしないから」

「…。てめえ、俺がせっかく家まで来てやってんだぜ?つべこべ言わずに付き合えよ」

ずいっと顔を近付けてくる南雲。話が変わってきてますよ南雲さん。あなたは告白するためにわざわざ私の家に来たんじゃないんですか。いつの間にか私と出掛けると言うことになっているようだ。

「いやマジで勘弁して。家族いるし、しかもお前さっき私のお母さんが出たとき、彼氏ですって言ったらしいな?やめてくんない?せめてクラスメートですって言ってよ」

「なんでだよ?」

「そのくらい察しろやタラシ」

一歩後ろに下がろうとした、が。がしり、と腕を捕まれた。先程より顔が近付く。視界には南雲の整った顔だけ。他には何も見えない。

「黙って俺の言うこと聞け。10分、時間をやる。その間に支度をしろ」

近い近い近い近い近い…!
顔は近いし命令口調。どこのジャイアンだよこいつ。でもジャイアンは人に顔なんて近付けないはず。
このまま家に戻っても南雲は帰ってくれはしないだろう。それは困る。…仕方がない、面倒くさいが出掛けることにしよう。

「出掛ける代わりに私の行きたい場所に行かせてね」

「分かったよ。分かったからさっさと支度しろ」

やっと顔が離れる。私は南雲に背を向け、玄関のドアを開けた。ドアが閉まるのを確認してその場で思い切りガッツポーズをした。

「覚悟しろよ南雲ぉぉぉ!」



「あいつ、何言ってんだ?」



(100317)