「はいこれ。僕と敦也から」

そう言ってピンクの箱に赤のフリル付きのリボンがラッピングされたなんとまぁ、趣味の悪い物体P(ピンク)を差し出された。

「あ、ちなみに本命だからね?」

おいおい勘弁してくれ。君達兄弟は乙女なのか。バレンタインに女である私にチョコレート?しかも本命だと?罰ゲームなのか何かの罰ゲームなのか。

そんな苦い思いをしたバレンタイン。もらったチョコレートは凄く甘かった。分量間違えたんじゃないのかってくらいに。市販の板チョコ溶かして更に砂糖を沢山入れたとでもいうような甘さ。これから先、私が糖尿病になったらあの兄弟からもらったバレンタインチョコレートのせいにしよう。

明日はホワイトデー。日本ではバレンタインのお返しをする日である、したくはないが。あんな血糖値が跳ね上がるくらい甘いチョコレートのお返しなんて致死量の塩入りクッキーをやるしかない。しかし、それを実行するとあの兄弟からウルフレジェンドをくらってしまうのでやめておく。



「さぁ、問題です」

目の前にいる士郎が微笑みながら言った。彼の隣には眉間に皺を刻んだ敦也がいる。とうとう、この日が来てしまった。三月十四日、ホワイトデーだ。勿論お返しは用意してある。昨晩、憎しみを込めながら作ったクッキーが。

「俺らは何の為にここにいる?」

敦也がゆっくりと言う。何の為って…それはホワイトデーだからではないのか。ただお返しのクッキーをあげるだけであってそれ以外には何もない筈だ。それなのになんだろうかこのお返しの他にも何かあるでしょ、的な空気は。

「…ホワイトデーのお返しを貰う為だよね」
「あと一つある」

おいおいおい、何があるって言うんだ。ちらりと士郎を見たが何も言わず、ただ私に笑いかけただけだった。暫く黙っていると士郎と敦也が同時にニヤリと笑った。

「本命あげたんだから、」
「俺と兄貴のどっちかを」

選んで、と楽しそうに二人は言った。
多分、選ぶなんてことは私には
出来ない。



(100314)