ちょっと愚痴ってもいいですか。
女子から舌打ちされました。私が悪いです。ぶつかった私が悪いんです。本当に悪いと思ってます。だからちゃんと謝りました。なのに舌打ちされました。喧嘩売ってんのかコルァ、と思いましたが口には出しませんでした。何故かって、その女子は気に入らない子にはとことん悪態をつくことで有名な子でした。ああ、私って嫌われているんだな。私はその子に何かをした、という覚えは全くありません。その子には何もしていません。何も、していないんです。舌打ちされたのは凄くショックでした。ショックと同時に怒りを覚えました。なんで私は舌打ちされなくちゃいけないの?謝ったのになんで?今度目の前で舌打ちしてやろうか。てめえがまた私に舌打ちしたら次は顔面一発、殴らせろ。でも、そうしたらあの子は先生に告げ口をするんだろうと思います。だからいつか口で言おうと思います。心が汚れきっている可哀想な人、私は貴女に死んで欲しいと思うくらい嫌いです、って。多分無理です。

「女子ってめんどくせーな」

「そう。凄くめんどくさい。変わってよ」

「やだね。そんなネチネチした空間に俺を巻き込むな」
「話聞いてたなら分かるでしょ?女の辛さを」

「無理矢理に聞かせやがったくせに何言ってんだ」

こいつは女子の恐ろしさを理解していません。タラシです。ただのタラシです。大事なことなので二回言いました。いつか愛人作ってその人に刺されて死ねば良いとおも「おい、聞こえてるぞ」

「あのなぁ、舌打ちぐらいで何悩んでんだよ。風介なんか毎日ヒロトに舌打ちしてるぜ?」

「それとこれとは意味が違う。南雲も知ってるでしょ?あの子」

「俺とクラスが一緒の奴だろ?…なんかアイツ、話し掛けてくんだよな」

「騙されろ刺されろ」

「おい喧嘩売ってんのか」

男の子は良いですよね気楽で。ネチネチした空気もないし。最高じゃないですか。いや別に、女嫌いじゃないんです。女の子は好きです。あ、そういう意味じゃなくて。

「明日からどうやってあの子に接すれば良いんだろ」

「んなの、簡単だろ」

「…は?」

「普通に嫌いなのかって聞けば良いだろ?」

この単細胞はホントに気楽野郎です。だから頭からチューリップもどきが生えるんです。自分を嫌っている人に「私のこと嫌い?」って聞く人はなかなかいないと思います。脳みそまでチューリップになってま「聞こえてんぞ」

「この脳みそチューリップ!」

「意味分かんねぇよ!チューリップじゃねぇし!」

真剣に悩んでいると言うのにこの男は読めてません、空気を。春になったらその頭のチューリップは満開に咲き誇るんですね、分かります。今から凄く楽しみです。
もう、舌打ちなんてどうでも良いです。私はこれから人に流されない人間になります。南雲みたいな人間にだけはなりたくないです。あ、間違えた。頭にチューリップもどきを生やしてる人間にだけはなりたくないです。

「チュー、…南雲。話聞いてくれてありがとう」

「今なに言おうとした?言ってみろ」

「別になにも言ってないよ」

「…腹立つ。後で俺ん家に来い」

「ごめん私が悪かった。だから腕掴まないで。おまっ、握力強ええええ!」



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