「…トリックオアトリート」

「………」

「トリックオアトリート」

「………」

「トリックオア…おい、聞いてるのか」

「え?私に言ってたの?」

「お前以外に誰がいると言うんだ。私がヒロトや晴矢に菓子をねだると思うか?思わないだろう、この私がだぞ?」

「うん、なんかごめんね。お菓子は今、手元にはないけど部屋になら沢山あるよ。取りに行ってくるから待ってて」

「私を菓子一つを理由に待たせる気か。何様のつもりだ。今日はパンプキンの日だ。菓子を持ち歩くのは常識だろう」

「普通にハロウィンって言ったら?なんなのパンプキンの日って。それにね、持ってないものは持ってないの。無茶言わないで。そう言う風介は持ってるの?」

「当たり前だ。私を誰だと思っている。かつてはダイヤモンドダストのキャプテンであった涼野風介だぞ?抜かりはない」

「どこにそんな大きい飴入れてたの…」

「ぐだぐだ言わずに菓子を出せ。お仕置きするぞ?」

「いやそれおかしいでしょ。お仕置きじゃなくて悪戯だから」

「悪戯なんて子供の微笑ましい愛情表現だ。この私がそんな幼いことすると思うか?」

「ああもう、面倒くさい!良いからここで待ってなさい!その無駄に回る口に飴玉詰め込んでやるから!」




「風介ーあの子からお菓子もらえた?」

「今、取りに行った。全くいつまで待たせる気なんだ。あいつの部屋はすぐそこだろう。私はいつまでこの談話室で待ってなくてはならないんだ。それにヒロト、隣に座るな暑苦しい」

「もう10月だよ。暑苦しいなんて時期じゃないよ?」

「五月蝿い。晴矢はどうした?頭の花がとうとう枯れたのか。だからあれほど日光に当たるなと言ったのに。当然の報いだな。プロミネンスのキャプテンだったバーン様とやらが。情けない」

「…風介ごめんね。俺がウィスキーボンボンを食べさせたばっかりに…」

「貴様、私が酔っていると言いたいのか。私は決してアルコールに弱くない。私は弱くない。今はお前より強いぞヒロト。今度
サシでタイマンはろうじゃないか」

「どこでそんな言葉覚えたの…。あ、おかえりー、うわ。すごい量だね」

「あれ?ヒロト?ヒロトもお菓子いる?いっぱい持ってきちゃったから…」

「遅いぞ。お前を待っている間は暇で暇で仕方がなかった。それにヒロトもいて増して暇だった。どうしてくれるんだ。時間を返してくれるのか?だったらそうしろ」

「さっきから思ってたんだけど、風介よくしゃべるね。ヒロト何か知らない?」

「酔ってるんだ。瞳子姉さんがさっきチョコレートをくれてね、それがウィスキーボンボンだったんだ…晴矢は潰れて寝てるよ」

「ああ、だからか。へぇー風介は酔うとよくしゃべるんだね」

「君の分のチョコレートは冷蔵庫に入ってるよ。まぁ、食べない方が良いけど」

「何を二人で話してるんだ。私を差し置いて生意気な。さっさと菓子を私に食べさせろ、口移しでも構わない。そしてヒロトは私の視界から消えろ」

「ねぇ、今なら風介を殴っても良いかな」

「別に良いけど、打ち所が悪かったら大変だからね。後は俺がなんとかするよ。…ほら、立て風介。部屋に戻るよ」

「自分のすることは自分で決める。お前に指図される筋合いは微塵もない。その手を離せ。私は今から菓子を食べるんだ、邪魔するなファザコンが。ええかげんにせぇよ、凍りたいんか?」

「最後の一言が浦部リカになってるよ。はぁ、もうこれ以上女の子に迷惑かけたら駄目だよ。酒癖悪い男は嫌われるからね?」


「…ヒロトは将来、酒豪になりそう」



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