「ねぇ、ちょっと」

「はい?」

「君、名前は?」

「はい?」

「いやだから、名前は?」

「……はい?」

「何今の間。聞こえてたでしょ。絶対聞こえてたでしょ」

「なんですか誰ですか」

「俺は基山ヒロト…って、俺のこと知らないの?」

「知ってますけど」

「ああ、それなら良いんだ。で、君の名前は?」

「はい?」

「何で名前を聞くときだけ聞き返すんだい?」

「はい?」

「イラッとくるね、君」

「はいはいそりゃどうも。基山さん、私は人気者とは関わりたくないんです。悪いですけど、今すぐどっかに行ってください」

「俺は君と関わりたいんだけどな」

「はい?」

「一体なんなの君。何で俺の発言を聞き返すの」

「すみません、聞こえないもんで」

「嘘を吐くのはやめようか」

「さっきも言いましたよね?私は人気者とは関わりたくないんです。基山さんと話しているところを女子に見られると陰で、あいつ基山クンと話してたよチョーうざー、とか、色目使うなってのまじきもい、とか言われるんですよ!ああ、恐ろしい!」

「そうなんだ」

「そうなんです。だから私の名前を知ろうとしないでください。私はただの女子生徒Kです」

「Aですらないんだね。じゃあ、学年は?」

「基山さんよりかは年上ですよ」

「はい?!」



(100511)