どうやら悪い夢をみたらしい
周りは真っ白い空間に覆われ、一人ぽつんと立っているようだが、歩いても歩いても彼の蒼い目に映るのは自分の姿と一面に広がる白のみだ。よくみると影も映ってない。もしかしてボクは死んだのか?まるでゲームのバグ画面のように現実には到底アリエナイと考えただけでちゃんと夢と決まったわけではないが、なんともいえない閉塞感に彼は襲われていた。自分の何かが狂いそうななんともいえない不気味さだけが漂っていて正直、怖い
「…」
声もでない。止まろうとしても勝手に足が動きだし、無意識に何かを求めるように手足が交互に動き前に進もうとしている。今の時間は、ここの場所は、ボクは
誰なのか
「テツ」
フッ、と。そこには浅黒く焼けた肌と青い髪が印象的な少年が突然現れたのにもかかわらず、さっきの不気味さはどこへ行ったのか。知らないはずなのにとても懐かしいようなそうではないような。心地いい声がさっき忘れ去られてしまいそうなボクの名を呼ぶ。
「…」
なんで知っているのかと聞きたいのに変わりに何かが零れてきて、頬をつたい口内へ入ってきてやっと分かった。これは涙だ。悲しいわけじゃない何かのせいで
「なあテツ、バスケやろうぜ」
声をあげて泣きたいのにうんうんとしか頷けない。何か特別できるわけでないボクを引き出してくれる。そんな光を探してたんだボクは。気付くとボクと地面との接着面には影が生まれてボクの存在意義を教えてくれる。そんなボクは
どうやら良い夢をみたらしい
捨て猫が見た夢 (お願いだから醒めないで)
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