「ねぇハチさぁ、僕も三郎も気づいてたんだけど」
「あ?」





「お前、鶴谷さんのこと好きだっただろ」





「………………」



「沈黙は肯定とみなす」
「…絶対兵助には言うなよ」

「言わないよ。親友同士が喧嘩するところなんて見たくないしね」
「私も、雷蔵が言わないなら言わないよ」


正直に認めてしまえば、俺は鶴谷にその気があった。その何かに芽生えたのも、兵助が鶴谷に対して悩みに悩んでいた時期だったから、言えるわけもなかった。

っていうか、認めたら終わりだと思ってた。親友の片思いの相手に片想いしてしまっただなんて、最低だと思ったからだ。兵助の誕生日プレゼントの相談から、文化祭のいろいろ。兵助つながりとはいえ鶴谷と関わることが多かったからか、その、最悪な気持ちに気づいてしまったというわけで…。


「…いや、俺も割とマジで悩んでたよ」
「そりゃぁ悩むよねぇ、親友と同じ人を好きになるんだんて」

「よかったじゃないか。あの調子では鶴谷さんはお前の気持ちにはこれっぽっちも気づいてない」
「言ってくれるな三郎。それもそれでちょっとツラいものがある」


俺と兵助がホモだとカミングアウトされるとき、あのセリフでまさかとは思ったけど、そりゃぁそうだ。鶴谷が俺を好きになるわけがない。あんなに兵助に夢中になってたのを目の当たりにしたわけだし、俺がはいる隙間なんてこれっぽっちもないわけだから。


「でもまぁ無事にあいつら付き合ったし、俺もそんな未練残すようなダサい男じゃないからな」

「あはは良く言うよ。あわよくばとか思ってなかった?」
「思わなねぇよ!彼女いない同士傷慰めあおうぜ」

肩を借りていた三郎と雷蔵にそういえば、ふと、二人は俺から離れていった。そして俺の目の前に立つと、


「ごめんハチ」
「それは無理な相談だ」


そういって二人はスマホの画面を俺の向けた。



雷蔵の画面には宛先が『きょうごンゴ』とかいてあるLINEで、会話文には「いいよー!また好きな漫画持っていきなよ┌(┌^o^)┐」という楽しげな文章で終わっていた。

一方三郎が見せてきたLINEの画面も『戸塚真美』という名前からの、「くっそwwwwじゃぁまた遊びに来ればいいじゃんwwwwwww」と草が生えまくりの文章で終わっていた。



「こ、これは一体…!?!?!??!?!!」


「僕も三郎もあと一歩のところまで来てるから!」
「ちなみに、今勘右衛門は文化祭に来てたあのモデル体型の鶴谷さんの友人をオトすのに必死だと言ったたからな」
「仲間はいないと考えた方がいいかもね」
「さらばだ竹谷八左ヱ門。お前に春が来ることを願っているよ」



さっきまで俺に肩を貸してくれていた親友の姿はどこに隠れた。


二人は俺を取り残して、さっさと教室へ帰って行ってしまった。



なんだあいつら。俺に黙って、他の女口説いてたっていうのか。






くっそ!聞いてねぇぞ!どうなってんだよこの青春は!!


俺が一体何をしたっていうんだ!!!









兵助の!


雷蔵の!


三郎の!


勘右衛門の!






















「裏切り者ぉおおおおーーーーーーーーーーー!!!!!」





















おわり。

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