全て、終わったわ。
クーラーのきいている自室で一人ベッドの上でぼーっと寝転がっていたら、あっという間に一時間はたっていた。もう一時間目の授業中だろうか。あぁそういえば、先週は文化祭だったんだった。ということは今日は午前中は片づけで終わるのか。あれ、一日撤収作業だっけ。いやまぁそれはどうでもいいとして、文化祭実行委員(仮)だったにも関わらず片づけに参加しないってどうよ。多分お昼休みになったら勘ちゃんとかから苦情のメールが来ることであろう。あー、勘ちゃん怒ってんだろうなぁ。あんな恥ずかしいとこ見せちゃったし…。っていうか、あんなこと言っちゃったけど、八左ヱ門と鶴谷さんは無事だろうな…。勘ちゃんちょっとヤンキー入ってるし…。俺の事大事に思ってくれているのは解るけど、あの二人に手を出しちゃ…………いや、八左ヱ門は別にいい。八左ヱ門は別に勘ちゃんに殴られようと三郎に踏まれようと雷蔵に罵られようとどうでもいい。
…最初から最後まで、なんだか良く解んないけど、八左ヱ門に振り回されて様な気がするのは気のせいだろうか…。
鶴谷さんは最初八左ヱ門を好きなのかと思ってた。そんで途中、八左ヱ門じゃなくて立花先輩と付き合ってるのかと思ったけど、あそこは親戚の関係で、中在家先輩に抱き着いてたのも幼い時からのスキンシップで。で、今度こそいけるかと思ってたのに、やっぱり鶴谷さんは、八左ヱ門の事が好きだったわけだ。
あー、なんかもう、今思えば、ちょっと待った!とか調子に乗ってでもあの二人の間に割って入ればよかった。八左ヱ門に告白するんだったら、だったらその前に返事だけでも聞いておくんだった。失敗したなぁ。でもまぁ結果はどっちにしろ同じだっただろうなぁ。んー、後悔ばっかで終わったなこの恋は。
ベッドから起き上がりのそりと机に向かう。床に散らばる今朝出した薄い本の数々とスケブ。あぁもう、こんなもの広げてたっけか。机の上に置いてたケータイを手に取り画面の電源を入れると、待ち受けは、夏休みのプールの時の集合写真。そこいく人に頼んで撮ってもらったのを、俺は待ち受けにしてた。だって鶴谷さんの笑顔がまじで眩しかったから。もうこれは水着だけど一年通して待ち受けするしかないと思った。
……だけどこれももう、消すべきなんだよなぁ。八左ヱ門へのあの告白が上手くいったかどうかは解んないけど、どっちにしろ鶴谷さんは俺の手に入らなかったわけだもんな。よし、男兵助、ここは決断の時だ。この画像も、消そう。
データフォルダを開いて下へとスライドさせ、待ち受けに設定している画像を開いた。
『削除しますか?』のボタン。『はい』を押そうとした、
その時、
― ピンポーン
家中に、インターホンの音が鳴り響いた。…誰だこんな午前中から。速達か?
「はい」
そのまま画面を消してケータイをポケットにしまい、部屋にあるドアホンを押すとそこには、
『兵助?俺、勘ちゃんだよー』
「え?勘ちゃん?学校は?」
カメラの向こうで笑顔で手を振る勘ちゃんがうつっていた。
『兵助の見舞いに来たに決まってんじゃん!ミスド買ってきたからあーけて!兵助の好きなハニーチュロもちゃんと入ってるよ!』
「あはは、ありがと。今行く、待ってて」
あぁ勘ちゃんは優しいな。学校サボッて来てくれたのか。しかも俺の大好きなハニーチュロを携えて!地味に暑い気温だったのにしばし玄関で泣いていたせいか、体は糖分と塩分と水分を欲していた。なんかこの間母さんがどっかの外人から貰った紅茶があるから飲んでいいとか言ってた気がする。いつ開封するの?今でしょ!
制服のまま寝ていたからかズボンが少しシワになってしまった。まぁ別に、勘ちゃんなら気にしないだろう。部屋を出て熱気に眉を寄せながら、階段を降りて玄関へ向かった。
うわ、鍵は閉めた記憶あるけどチェーンまでしたっけ。
「勘ちゃ「どわっ!?!??!」
「えっ!?」
「じゃぁ俺学校戻るから!二人で仲良くやってちょうだいねー!」
バタンと閉められたドア。外に出ようと思ったその時、俺の身体は何かに家の中に押し戻された。勘ちゃんの顔は一瞬しか見えず、声も一瞬しか聞こえず、勘ちゃんは、あっという間に何処かへ行ってしまった。玄関に尻餅をつく俺に、だ、抱き着いているのは、
「ああぁぁああああああああごめんね久々知くんんかあgsfjkbはffjhだかgs!!!!」
「えっ…、なんで、鶴谷さんが、」
なんで!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!鶴谷さんがッッッ!?!!??!?!俺の家に!??!?!?!??!!?!?
何故勘ちゃんがすぐ帰ったのかとか何故鶴谷さんが俺の家を知ってるのかとか色々聞きたかったけど、その前に、鶴谷さんは俺から一瞬で離れ手に持つミスドを俺につきだし土下座をするかの如く頭を下げた。
「尾浜くんに久々知くんのおうち教えてもらいました!個人情報聞き出してすいません!!無様な私をお許ししていただくと共に、どうか!!どうかわたくしめと話をしていただけないでしょうか!!」
「え、」
「久々知くんの誤解を解きに参りました!!たたたtったた大変申し訳ありませんが!!久々知くんの貴重なお時間を一寸わたくしめにいただきたく存じますッッ!!!!」
「誤解…」
「は、はい、つきましては時間をいただければと……」
……誤解?一体、何の話だ。菓子折りを持ってくるほど大事な話か?別に、俺が鶴谷さんに対して誤解している事なんて何一つないはずだけど…。鶴谷さんの事ならほぼ熟知していると言っていいほどの俺が、一体何を誤解しているって?
「じゃぁ……あっ、」
玄関で膝をつかせたままにするわけにもいかず、俺はとりあえず家の中へあげることにした。何処で話そう。俺の部屋でいいk………
「ちょ、ちょっとまってて…!!へ、部屋片づけてくるから!!こ、ここにいて!!」
「う、ウイッス」
ミスドの箱を持ったままの鶴谷さんを玄関に残したまま、俺は部屋に駆け込んだ。やばいやばい薄い本散らかしっぱなしだし文化祭のポスター壁に貼ったままだ!!これはみられてはいけない!!し、死ぬわ!!恥ずかしくて死ぬ!!鶴谷さんの絵が好きで貼ってるけどもしかして俺が描いてあるから貼ってるとかナルシ的な方向に思われるのは絶対に嫌だ!!っていうか慌てて自分の部屋に駆け込むとかエロ本でも隠してんじゃないのかとか思われてたらどうしよう!!いやまぁエロ本も隠してるけど!!三郎に置いていかれて処分に困ってるヤツあるけど!!
フィギュアはいいや!うんこのポスターもこのままでいいや!鶴谷さんも同じようなもんだろ!これらぐらいはそのままで大丈夫だろ!!
部屋を出る前にもう一度部屋をグルリを見回した。うん、大丈夫。埃一つない。俺そこそこ綺麗好きでよかった。
「お待たせ。ごめんね、先に階段上がって右の部屋で待ってて」
「あ、はい」
ミスドの箱を受け取り、鶴谷さんは恐る恐るという感じで階段を上がって行った。俺はとりあえずリビングへ向かい、お茶を入れてドーナッツを皿へ移した。なんで10個も買ってんだよ。勘ちゃん馬鹿か。いや買ったのはもしかして鶴谷さんか?鶴谷さんなら許す。いっぱい食べる君が好き。
何が鶴谷さんのなのかとかさっぱり解らないので、とりあえず全部皿へ移してお茶もおぼんに乗っけた。
……っていうか、俺の部屋に今、鶴谷さんがいるのか…。なにこの恋愛ゲームの最終局面みたいな感じ…。付き合ってない片想いの女が誰もいない家の俺の部屋にいるって、………あ、落ち着いてください俺の俺。ちょっとその、今大事な場面なんで。
自室だけど、一応ノックしてから部屋のドアを開けた。テーブルの横に座っている鶴谷さんは俺がお茶を持って来たのを見て慌てたようにお構いなく!!と叫んだ。可愛い。
まぁその、どうしていいのか解らず、お茶をテーブルの上に置いて俺は、ちょっと距離を置くようにベッドの上に座った。鶴谷さんの近くでは、ちょっと、心臓の音が聞こえてしまうような気がして。
「…で、話って、」
「あ、うん、その、……えっと、何処から話せばいいのか……」
鶴谷さんは緊張したように正座してカチッと背を伸ばした。お茶に手を伸ばしてぐいとのどを潤し、「えっと、」とまた小さくつぶやいた。
……八左ヱ門の事、だろうけど…。
「……鶴谷さん、八左ヱ門と」
「シャラァァアアアアーーーーップ!!!ドンタッチその話!!!!!」
「!?」
嫌な話ならとっとと終わらそうと俺から話を切り出そうとしたのだが、鶴谷さんはそれを遮るように勢いよくコップをテーブルに叩きつけ、あろうことかそのまま、俺に向かって土下座したのだった。何が起こっているのか解らないまま、えっ、と俺が混乱していると
「大変申し訳ありませんでしたァァアア!!私は、私は竹谷くんに告白したのではなく、久々知くんへお返事を返す前に竹谷くんに今までの私の悪行を全て懺悔したのでございます!!」
「……あ、悪行…?」
鶴谷さんは、こう叫んだのであった。悪行?懺悔?なんの、話だ?
何の事、と聞こうとしたのだが、
「申し上げます!!私は…!私は!!ずっと前から、竹谷くんのことを!!い、いや、久々知くんと竹谷くんのことを!ホモだと思っていたわけでございますううううああああああああああああああ!!!!!」
「……」
鶴谷さんは、意味不明すぎる爆弾を落下させた。
「ホモだと思ってたんです!久々知くんと竹谷くんをホモだと思ってたんです!竹久々だと思ってたんです!久々知くん右固定だったんです!ずっと前からお二人は付き合っていらっしゃるのではないかと思っていたんです!久々知くんが私にっこおっこここ告白をしてくださってノンケだと解ってしまい私の脳内は爆発してしまったもんでありますから!!だから私はまず!久々知くんに告白の返事をさせていただく前にその今まで如何わしい妄想をお二人でしていたことに対して謝罪をせねばならないと思っていたんです!!おそらく久々知くんが聞いて誤解してしまったであろうあの階段での!!竹谷くんとの話は!!その話を切り出そうとしていた時のことでございます!!「ずっと前から」は「好きだった」という話ではなく!!「ずっと前からホモだと思ってました」という謝罪の冒頭の部分でございます!!どうか!!どうか本当にこのような誤解をしていらっしゃるのだとしたら間違いでございますので記憶から抹消ください!!私は竹谷くんの事は友人としては最高に好きですが恋愛対象というと話は別でございます!!これは悪口ではありません!!どうか!!どうかその誤解を解いてくださいませ!!お願いいたします!!そして今まで久々知くんをいやらしい汚らわしい目線で見ていたことを深くお詫び申し上げます!!!まことに!!まことに申し訳ございませんでしたああああああああああああ!!!!!」
一気に叫ぶように述べ、鶴谷さんは土下座したまま、肩で息をするかのように呼吸を繰り返した。
なんていうかもう、おかしい。今の言葉が全て本当なのだとしたら、鶴谷さん、まじで予想の斜め上行き過ぎててヤバイ。え?八左ヱ門に告白してたんじゃないんだ?じゃぁあれは俺の早とちりが招いた事件だったんだ?OKOK,それは理解した。で?ん?なんだって?俺が?俺がホモ?俺が八左ヱ門とホモ?俺のとこ、ホモだと思ってたの?鶴谷さんの事ずっと好きだった俺は、一ミリも気持ちバレたりとかしてなかったってこと?バレるとかバレないとか以前に、恋愛対象としてすら見られていなかったってこと?ホモだから?俺と八左ヱ門が付き合ってるから?
ホモ、だから?
「〜〜〜っ!!」
「あ、あの…久々知くん……」
「あ、ちょ、…ちょっと、待って……っ!い、今…っ!!し、死ぬ………!〜〜っ!!」
「!」
俺は、あまりに衝撃に、声を出して笑うことも出来なかった。
いや、いやいや……
いやいやいやwwwwwwwwwおかしいおかしいwwwwwwこれはwwww
あwりwえwなwいwwwwwwwwwwwwwwwww
「あっはっはっはっはっはっ!!!」
「え、ちょ、久々知く、」
「お、おかしいでしょ!俺と八左ヱ門がホモ!?鶴谷さん俺の事そんな目で見てたわけ!?ど、どのタイミングでそんな視線送れるんだよ…!!俺と八左ヱ門っ…!た、確かに仲はいっけど…!ぐっ、!そんな、そんなホモに見えてた!?俺と八左ヱ門が!?俺がホモ!?竹久々!?ちょ、ちょっと待ってwwwwwwwwwwwし、死ぬwwwwwwwwwwwwwwww俺wwwwwwwwwwwwwww俺たちwwwwwwwwwwwwwwwwwあwwあの時のタケククってwwwそういう意味だったのかwwwww竹久々wwwwwwくっそwwwwくっそwwwwwwwwwwwwww」
「……正直に言いますと…他の四人もそう考えてました…」
「ちょwwwwwwwww俺らだけじゃないwwwwwwwwwwwwwwwwww他誰wwwwww」
「……雷鉢と…勘鉢推しでした……」
「三郎も右固定ファーーーーーーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
くっそwwwwタケククってそういう意味だったのかwwwwっていうかww三郎の安定の右wwwwwwwwwなんなんだよ鶴谷さんの脳内はwwwどうなってんだよチクショウwwwwwwwwwふざけんなwwwwwwwwwwwwwwwww
誰がこんな思考回路理解できるか!!!!!!!言われなきゃ一ミリも解んねぇわ!!!!!!!!
まさかの告白に、俺はベッドの上でただひたすら笑い続けた。もうなんていうかどう返事をしていいのか解んない。むしろこんな話をされても困るレベルだ。まさか片想いの相手が俺の事をホモだと思っていたなんて誰が想像できるだろうか。むしろその相手が振り回しに振り回されていた八左ヱ門でしかもホモだったと思われていただなんて。こんなの予想外以外のの何物でもない。こんなの始めてた。ホモだと思ってましたとか、人生で初めて言われた言葉だわ。
………ならば、俺も、秘密にしていたことを暴露すべきなのではないだろうか。いや、ドン引きされたらどうしよう…。いやでもこれは、鶴谷さんが告白してくれたなら、俺も描く塩ごとをすべきではないだろうけど…。でもこれちょっとしたらストーカー行為になるわけだし…でも言った方が……。
うん、打ち明けとこう。なんかもう、今の俺に怖いものはない。
「あ、あのね、じゃぁ俺も、このタイミングだから言わせてもらっていい?」
「ん?」
「俺も、鶴谷さんに謝らなきゃいけないことがあったんだ」
「えっ、」
もうこうなったら言ったもん勝ちだよね!!今更鶴谷さんに何思われようと怖かねぇや!よし全部ばらすぞ!!
とりあえず、と前置きとして俺はケータイの待ち受けを見せた。懐かしいねと笑いながら俺のケータイを見つめる鶴谷さんが可愛くて写真撮りたいレベルだ。だけどこれはまだ序の口です。俺は立ち上がり机の上にあるパソコンを開いて、机の上に運んだ。なになにと言いながらパソコンを覗く鶴谷さんに、これを開いてほしいと、デスクトップの端っこにある『新しいフォルダ』をカーソルで指差した。言われるがままにそれをクリックした鶴谷さんは、中身を見た瞬間、ブフォォオッ!!と吹き出して笑いだした。
「えwwwwちょwwwwwなにこれwwwwwwwwwww嘘でしょwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「いやほんと。バックアップも取ってある」
「ひょぇえええええええwwwwwwwwwwwwwwwww」
そして鶴谷さんは笑いながらボックスに入っている写真を全部見ながら「なにこれwwwなにこれwww」と次々開いていった。俺はそれを見る鶴谷さんの横でそれらの写真の入手経路を全て話した。写真は全て勘ちゃんが撮ったこと(重要)。勘ちゃんバンドに入るときに取引でこれを受け取ったこと。八左ヱ門から受け取ったこと(重要)。
一、二枚は俺が隠し撮りしたやつも入ってはいるが、全部八左ヱ門と勘ちゃんのせいにしようと思う。主に八左ヱ門のせいにしようと思う。俺は悪くない(重要)。
「故に、可愛すぎた鶴谷さんの笑顔をケータイの待ち受けに設定していました」
「ファーーーーーwwwwwww」
「本当になんかもう、ストーカーみたいでごめんね…」
「いやなんかもうwwwwどうでもいいどうでもいいwwwwwwwwwっていうかwwwwwwww私たちwww頭おかしいwwwwwwwwww」
そういわれて、俺も再度腹を抱えて笑ってしまった。確かに、俺たちはどこか頭がおかしい。片方は俺をホモだと思い、片方はストーカー並みに相手の写真を保存していた。普通の片想いじゃなかった。これはこれで面白いけど、こんな変な思考回路のせいで、俺たちは遠回りしまくっていた。
しばらく馬鹿みたいに笑いあい、俺はやっと息を整えるために頂いたお茶で喉を潤した。死ぬかと思った。腹筋割れる。笑いすぎた。死ぬ。
「ねぇ鶴谷さん、俺、そんな話聞いても、鶴谷さんのこと嫌いにはならないよ」
「っ、」
「鶴谷さんは、やっぱりこれ見て俺の事気持ち悪いと思った?」
「い、いや全然!!む、むしろ此処までだと思ってなかったから……そ、その…………う、嬉しいと、言いますか……」
「っ!そ、そっか!よかった…!」
なんていうか、今の鶴谷さんの一言で俺は救われた気がするし、この後、きっと、良い方向に傾くことも予感できた。
今の俺に、怖いものはない。
「じゃぁ、出来ることなら、もう一度、改めて、………鶴谷さんに告白させてください」
「…は、はい」
俺は見合いか、とツッコミたくなるほどに姿勢を正し、目の前に座る鶴谷さんと向き合った。
立花先輩、今こそ、貴方に感謝いたします!!!
「鶴谷さんにもしものことがあったらパソコンのデータは全て消して同人誌からグッズまで全て焼却して無き物にするって約束する。だから、俺と付き合ってください」
「はいいいいいいい喜んでえええええええええええええええええええええ!!!………て、あっ…!」
欲しかった返事が、ようやく、手に入り、
俺は思わず、身を乗り出して、
「……ほ、本当?」
と、聞き返してしまった。
「あ、その、」
「本当!?本当に、俺と付き合ってくれるの…!?」
「えっと、……あ、わ、私も…く、久々知くんのこと、好きです…っ!!…こ、こんな私で、よろ、よろしければ……
よろしく、お願いいたします…!!」
やっと、やっと、やっと俺の想いが、通じた。
やっと、この想いが大好きな鶴谷さんに、届いた。
俺の片想いが、やっと、実った。
予期せぬ涙がひとつ、ぽろりと頬を伝ってしまい、
鶴谷さんは心配するような表情で俺の顔を覗き込んだ。
「え、久々知くん、」
「ごめ、ん、カッコ悪いとこ見せて…」
「いや、その…」
「夢みたいだ…!やっと、届いた……!」
こんな時でもネタをぶち込んでいく俺に、鶴谷さんは下を向いてブフォッWWWと笑ったのであった。通じてよかった。
届いて、よかった。
「久々知くん、」
「うん?」
「私、ね、なんというか、幸せだなぁって思うよ」
「!」
「こんなに人に想われるの、初めてだから」
鶴谷さんの初めては俺がいただきましたあぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおこんなに幸せ感じたことねぇえよぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「鶴谷さんは、」
「うん」
「今日から俺の彼女でいい?」
「久々知くんは、今日から私の彼氏だね」
ェエエンダアアアアアアアアアアアアアアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアイヤァアアアアアアアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアウィルオオオオオルウェイズラアアブユウウウウウウウウアアアアアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!
ヤバイなんかもう顔赤くして照れてる鶴谷さんに対して我慢できるほど俺やっぱり出来た男じゃなかったわっていうかよく考えたら俺の部屋に鶴谷さんがいるってこと事態が大事件なのに俺よくこんな平和な頭で耐えてられたなって感心できるレベルだわ!!!
俺今日からガンガンいく!!もう遠慮する必要のないポジションだって再確認できたから!!!!!!!
「じゃぁさ、」
「うん?」
「はれて両想いになれたということで」
「うん」
「もう俺遠慮しなくていい?」
「はい?」
「奈緒」
「ファッ!?」
「奈緒でいい?」
「ちょwww破壊力wwwww」
「奈緒」
「はい」
「奈緒」
「く……へ、兵助!」
「ちょwwwそれヤバイwwwww」
「兵助!」
「奈緒!」
「兵助!!」
「奈緒!!」
「やばい楽しいwwww」
「じゃぁもう一個だけ俺の願い聞いてほしいんだけど」
「うん?」
「キスしていい?」
「はい!?」
「いやなんかもう我慢しなくていい関係になったんだと気付いたからそろそろいいかなと思って」
「いやいやいやwwwタイミングwwwwwもうちょっとなんかこうwwwロマンチックにwwwwwww」
「俺どれだけ我慢したと思ってるの?」
「キャラ違うよwwww久々知くん目がマジだよwwwwwww」
「キスさせてください」
「目が怖いよ…!座ってるよ!」
「させやがれください」
「落ち着いて!話せばわかる!!」
「一回でいいのでお願いします!!」
「いやー!やめてー!!乱暴するつもりでしょ!!エロ同人みたいに!!エロ同人みたいに!!!!」
……エロ同人…?
あ!そうだ大事なこと忘れてたわ!!!
「あ、そうだ」
「え?」
「南天さんだよね」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーッッッ!??!?!?!?!?!?!!!?!??!??!!!!」
「俺ずっと前からファンだったんだよ!!」
「やめてぇええええ!!!」
「南天さんの本全部あるからほら此処に保存してある!!」
「あああああああああああああああそれは私の黒歴史ぁぁああああああああああああああ!!!」
「また新刊出す!?俺に手伝えることあったらなんでもやるからね!!」
「やめてーーー!!!もうそれ以上掘り返さないでーーーーーーー!!!!!」
「ところでこの間R-18あげてた内容なんだけど俺めっちゃあのCPでマイナーだと思ってたr」
「お゛れ゛は゛キ゛ラ゛な゛ん゛か゛じ゛ゃ゛な゛い゛し゛ん゛じ゛て゛く゛れ゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!゛!゛!゛!゛ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛」