「ここ、兵助んちね」
「嘘やん」
見上げたおうちはホワイトハウス。やばいなんかもう金持ち臭がすげぇ漂ってくる。
「……久々知くんのご両親てこの辺の地主かなんか…?」
「いや?小母さんは通訳やってて小父さんは教師とか言ってたかな?」
「やべぇってそれどういうエリートの血筋なんだよ!!!」
あぁはいはい。そんなエリートな家系で育ったのならあんな王子が爆誕しても驚きはしないわな!なんなんだよあの王子ド畜生め!ご両親もそれはそれはお美しいのであろうな!!怖い物知らずってか!!そんなヤツに俺は告白されたのか!うちは普通の家庭やぞ!何処で人生の道を踏み外したんだ王子!王子レベルなら許嫁とかいてもおかしくないレベルでしょ!!
立派な豪邸にはわわわしていると尾浜くんは慣れた手つきで扉を開いて久々知邸の敷地内に入って行った。尾浜くんからは久々知くんの家はでかいと聞いていたのでなんかもう聖プレジデント学園みたいなとこだったらどうしようとか思ってたけど望みはデカくもっててよかった。普通の家想像してたらこの家みてひっくり返ってたかもしれないけどまだ平常心保てる。それにしても、デカい。
っていうか此処へ来る道中手土産買おうかって尾浜くんとミスド行ってきたんだけど、尾浜くんのテンションの低さったらなかった。自分の早とちりとはいえ私に暴言を吐いたことをただひたすら謝ってきた。別に私は気にしてないし、そもそも私が誤解を招くような発言をしたのが悪いのであって。尾浜くんは何も悪くないよと、何度言ったことか。いやいや尾浜くんの友情のあつきことよ。私は感動しましたね。もし本当にあの時竹谷くんに私が好きだと伝えていたのだとしたら、私は一体尾浜くんに何で殺されたのであろうか。鈍器でしょうか。トンファーでしょうか。トンファーキックでしょうか。竹谷くんと私は無事でいられたのでしょうか。あの時の尾浜くん、ガチな目してたわ。いとおそろしや。まぁそれは全て水に流しますよ。えぇ、もちろんですとも。だからこそ、此処まで案内してもらったわけでございますから。学校サボらせてごめんねと言おうと思ったけど、サボるのとかしょっちゅうだろうから言わなかった。
おそらくこれが久々知邸の本当の入口なのだと思う。ドアの横にあるインターホンを押すと、家の中からピンポーンという音が。っていうかインターホン門にあるんじゃなくて此処にあるんだ。まじオシャレだわ。ライオンのドアノッカーとかついてたらどうしようかと思ってたけど。インターホンを押したその時、尾浜くんが私の身体をインターホンのカメラから隠れるような場所へグイと押して口をふさいだ。
『はい』
「兵助?俺、勘ちゃんだよー」
『え?勘ちゃん?学校は?』
「兵助の見舞いに来たに決まってんじゃん!ミスド買ってきたからあーけて!兵助の好きなハニーチュロもちゃんと入ってるよ!」
『あはは、ありがと。今行く、待ってて』
プツッと切れたインターホン。あぁなるほど、私がいたら開けてくれないと思ったから私の姿を隠したって事か。さすが尾浜くん私そんなの一ミリも考えなかったわ。死んだ方がいいね。
「じゃ鶴谷さん、これ持って」
「へ?」
尾浜くんは私の肩を叩くと、尾浜くんが持っていたミスドの箱を私につきつけた。なんで私に持たせたのだと思ったけど、目の前の扉からガチャリと鍵を外す音。あ、久々知くんきましたわ。
ドアが開いた、その時、
「勘ちゃ「どわっ!?!??!」
「えっ!?」
「じゃぁ俺学校戻るから!二人で仲良くやってちょうだいねー!」
私の身体は、久々知邸の中へと押し込まれた。
バタン!と音を立て無情にも閉められたドア。尾浜くんの軽快な足音は遠くへと去ってしまうが、私は、恐らく今、久々知くんの腕の中。
「ああぁぁああああああああごめんね久々知くんんかあgsfjkbはffjhだかgs!!!!」
「えっ…、なんで、鶴谷さんが、」
尾浜くんの私の身体を推押しこむ力は予想外に強く、玄関の段差に腰掛けるように座り込む久々知くんに抱き着く形で倒れこんでしまいやsんfのあbfがgすでぃjほあshhうぇrfty!!
急ぎ離れて靴履き場に座り込み、私はミスドの箱を久々知くんにつきだし顔を伏せた。
「尾浜くんに久々知くんのおうち教えてもらいました!個人情報聞き出してすいません!!無様な私をお許ししていただくと共に、どうか!!どうかわたくしめと話をしていただけないでしょうか!!」
「え、」
「久々知くんの誤解を解きに参りました!!たたたtったた大変申し訳ありませんが!!久々知くんの貴重なお時間を一寸わたくしめにいただきたく存じますッッ!!!!」
土下座でもするかの勢いで頭を下げミスドの箱をつきだす私はなんと醜い野郎だろうか。っていうか、久々知くん制服のまんまだった。あと見間違いでなければ目も赤かったような…。本当に私のあれ聞いて帰ったのか…。なんというか本当に申し訳ないことをしてしまった。あのままこっちにきてくれればよかっものを、まさか自宅にお戻りになられるだなんて。本当にすいませんでした。誤解を招くような発言をしたこと深くお詫び申し上げます。
「誤解…」
「は、はい、つきましては時間をいただければと……」
「じゃぁ……あっ、ちょ、ちょっとまってて…!!へ、部屋片づけてくるから!!こ、ここにいて!!」
「う、ウイッス」
王子はそのまま私を残して階段を上がって行かれてしまった。なんだ、エロ本でも出してたのか。別にいいよ久々知くん。私はエロ本に対して何も感じないよ。健全な男の子だもん。一冊や二冊持ってたところで私は何とも思わないさ。こへ兄とふざけて仙蔵兄ちゃんの部屋にエロ本置いて行った時なんか次遊びに行ったとき本棚にしっかり入ってたからね。あんな逆襲の仕方あるかと目を疑ったわ。逆に申し訳なくなってこへ兄と頭下げたよね。うん、私はそんなんで怒らないから安心して。
王子はしばらくして、階段からゆっくり降りてきた。私からミスドの箱を受け取ると、「階段上がって右の部屋にいて」と言って一階の奥へ消えた。綺麗なおうちの綺麗な階段をあがるとそこには[Heisuke Room]という札。久々知くん可愛い。死ぬ。
ドアを開けると、其処はまじで綺麗な部屋でした。オタクとか嘘でしょとか言いたくなるぐらいの綺麗な部屋。いやもちろんフィギュアとかポスターとかは飾ってるけど恐ろしいぐらいに綺麗。私の部屋なんか下絵とスケブとチラシうんぬんで足の踏み場もないというのにこの埃ひとつない汚れ一つないツートーンルームはなんだ。私の部屋の二倍はある。あ、でも本棚は薄い本でギッシリだwwwwwww安心したワロタwwwwwwwwwwwwww
ガラスのテーブルの横に座りバッグを置いて、部屋をぐるりと見渡した。部屋にあるノートパソコンは閉じられていて、その横には尾浜くんたちと旅行に行った時のだろうか?楽しそうな集合写真が飾られていた。うん、凄い綺麗なお部屋だ。
「お待たせ」
「ぎゃおおおお気遣いなく」
ドアが開いた向こうから現れた王子はお盆の上にさらに移動させたミスド様と冷たいアイスティーを持ってきてくださった。あぁ王子そういうのはメイドの仕事ではないのですか直々にやってくださるなんてありがとうございます。私は死のうと思います。
ガチャリと音を立てそのおぼんを置いて、久々知くんはベッドの上に座った。アッー、王子に見下されてるハァハァ。
「…で、話って、」
「あ、うん、その、……えっと、何処から話せばいいのか……」
頂いたおティーをありがたく口に含む。うわぁロイヤルなティーだ。美味い。死ぬ。何処の国の輸入品だろう。此の上品な味絶対午後のおティーじゃない。
「……鶴谷さん、八左ヱ門と」
「シャラァァアアアアーーーーップ!!!ドンタッチその話!!!!!」
「!?」
バン!とコップを机に叩きつけるように置き、私はその勢いで、久々知くんに土下座をした。もうこうなったら全部ぶちまけねば!これ以上しぶってたら誤解は深まるばっかりだ!!
「大変申し訳ありませんでしたァァアア!!私は、私は竹谷くんに告白したのではなく、久々知くんへお返事を返す前に竹谷くんに今までの私の悪行を全て懺悔したのでございます!!」
「……あ、悪行…?」
なにそれ、と続ける久々知くん。今きっと久々知くんは困った顔をしているはず。
「申し上げます!!私は…!私は!!ずっと前から、竹谷くんのことを!!い、いや、久々知くんと竹谷くんのことを!ホモだと思っていたわけでございますううううああああああああああああああ!!!!!」
「……」
え、と、ポツリ漏れたのは、久々知くんのお声。
「ホモだと思ってたんです!久々知くんと竹谷くんをホモだと思ってたんです!竹久々だと思ってたんです!久々知くん右固定だったんです!ずっと前からお二人は付き合っていらっしゃるのではないかと思っていたんです!久々知くんが私にっこおっこここ告白をしてくださってノンケだと解ってしまい私の脳内は爆発してしまったもんでありますから!!だから私はまず!久々知くんに告白の返事をさせていただく前にその今まで如何わしい妄想をお二人でしていたことに対して謝罪をせねばならないと思っていたんです!!おそらく久々知くんが聞いて誤解してしまったであろうあの階段での!!竹谷くんとの話は!!その話を切り出そうとしていた時のことでございます!!「ずっと前から」は「好きだった」という話ではなく!!「ずっと前からホモだと思ってました」という謝罪の冒頭の部分でございます!!どうか!!どうか本当にこのような誤解をしていらっしゃるのだとしたら間違いでございますので記憶から抹消ください!!私は竹谷くんの事は友人としては最高に好きですが恋愛対象というと話は別でございます!!これは悪口ではありません!!どうか!!どうかその誤解を解いてくださいませ!!お願いいたします!!そして今まで久々知くんをいやらしい汚らわしい目線で見ていたことを深くお詫び申し上げます!!!まことに!!まことに申し訳ございませんでしたああああああああああああ!!!!!」
「………」
私は全てを打ち明けた。いやなんかもうこの部屋クーラーかかってるはずなのに顔があっつい。恥ずかしくて死ぬ。いや死にたい。私を好いていてくれていた殿方に対して私はこんな汚らわしい目線を送っていたとか、もう死んだ方がましな気がする。久々知くんが私にどんな清い女性像をもっていらしたのか知りません。だけどこんな女です。本当にこんなけがらわしい女ですいませんでした。私はもう貴方様に顔向けすることが出来ませぬ。いっそそのベッドの上から私を罵り踏みつけてやってくださいませ。私からしてみればご褒美でございます。
一向に返事をくれない久々知くん。此処まで静かだと逆に怖い。今久々知くんはどんな顔をして私を見下ろしているのだろうか。
深く深く反省した後、おそるおそる顔を上げてみると、
久々知くんは、ベッドの上で肩を震わせ腹を押さえ、体を小さく折り曲げていた。
よく耳を傾けると、ほんの少しだが、久々知くんの笑い声が漏れているのが聞こえる。…え、なに、私、また笑われてるん……?
「あ、あの…久々知くん……」
「あ、ちょ、…ちょっと、待って……っ!い、今…っ!!し、死ぬ………!〜〜っ!!」
「!」
蹲る久々知くんから聞こえた声は、確実なる笑い声。あ、私また笑われてる。そうだ、死のう。
怒っている御様子ではないということが確認でき、私は、少しだけだが、安心した。はぁとため息をついた瞬間、久々知くんはガバリを体を起き上がらせて、とびっきりの笑顔で上を向き、
「あっはっはっはっはっはっ!!!」
と、豪快に笑い飛ばしたのであった。
「お、おかしいでしょ!俺と八左ヱ門がホモ!?鶴谷さん俺の事そんな目で見てたわけ!?ど、どのタイミングでそんな視線送れるんだよ…!!俺と八左ヱ門っ…!た、確かに仲はいっけど…!ぐっ、!そんな、そんなホモに見えてた!?俺と八左ヱ門が!?俺がホモ!?竹久々!?ちょ、ちょっと待ってwwwwwwwwwwwし、死ぬwwwwwwwwwwwwwwww俺wwwwwwwwwwwwwww俺たちwwwwwwwwwwwwwwwwwあwwあの時のタケククってwwwそういう意味だったのかwwwww竹久々wwwwwwくっそwwwwくっそwwwwwwwwwwwwww」
「……正直に言いますと…他の四人もそう考えてました…」
「ちょwwwwwwwww俺らだけじゃないwwwwwwwwwwwwwwwwww他誰wwwwww」
「……雷鉢と…勘鉢推しでした……」
「三郎も右固定ファーーーーーーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
さすが、お仲間だということもあるのか、久々知くんは大量な涙を流して私の話を聞いていた。ずっとホモ集団だと思っていた脳味噌が憎い。まさかその中の一人がノンケで私に対してそんな感情を抱いていただなんて誰が想像できただろうか。久々知くんの視線の先はいつだって竹谷くんだと思ってたのに、まさかの私。竹谷くんを付き合ってたんじゃなくて、私と使いたいと。嘘だよこんなのと何度も思った。ホモだと持ってたのにノンケだったなんて衝撃の事実にも程上がる。しかも、私を好いてくださっていただなんて。
申し訳ない気持ちでいっぱいになった。おそらく同士だから笑ってくれたのだろうけど、久々知くんが腐ってなかったら私は今頃教室で独りぼっちを決め込んでいたであろう。久々知くん、本当にいい人で良かった。っていうか、この話題で私を拒絶する反応を見せないところ、本当に懐が深いと言うか……なんというか…。
ヒィヒィ言いながら久々知くんはやっと笑い終えて、ベッドから降りて私の正面に座った。うわ緊張するなにこれ。
「あ、あのね、じゃぁ俺も、このタイミングだから言わせてもらっていい?」
「ん?」
「俺も、鶴谷さんに謝らなきゃいけないことがあったんだ」
「えっ、」
え?久々知くんも?何?私と真美とかがレズだと思ってた?いやそれはさすがにないよね。
「鶴谷さんもそれ、打ち明けてくれたし、本当にもう、…いっそ俺の事気持ち悪く思ってもいいから……」
「え?何?なんの話?」
「これ」
「へ?」
久々知くんは、パッとケータイを出して、画面の電源を入れた。なんなのかと目を向けると、そこは当たり前のように待ち受け画面。だけどその待ち受け画面は、今年の夏休み、ばったり出くわしたあの集団とプールで遊んでた時の写真だ。そういえばそこいくお兄さんに集合写真撮ってもらってたな。その時の写真だよね?
「あ、懐かしい。待ち受けに設定してたんだ」
「うん、まぁ、これだけじゃあれなんだけど」
「え?何?」
「ちょっと待ってね」
久々知くんはその待ち受けを見せた後、立ち上がり、机の上にある閉じていたノートパソコンを開いた。何を見せてくれるのかと思い待っていると、久々知くんはパソコンを持ってきてテーブルの上に置いた。
これ開けて、とカーソルを持って行ったのは『新しいフォルダ』
「えwwwwwちょwwwwwなにこれwwwwwwwwwww嘘でしょwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「いやほんと。バックアップも取ってある」
「ひょぇえええええええwwwwwwwwwwwwwwwww」
パソコンのおしゃれなデスクトップにある『新しいフォルダ』が一つ。それを開くと、まさかの私の写真がいっぱい出wてwきwたwwwwwwwwwひぇえええなにこれ撮られた記憶ないwwwwwwwww信じられないwwwwwwwwwいつの間に撮ったのこんなのwwwwwwwおwwwwまwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
「ちょっと待ってちょっと待ってwwwいつ撮ったのこんなのwwwwwww」
「それ全部勘ちゃんが撮ったやつなのだ」
「嘘やんwwwwwwwwww」
「実は文化祭の勘ちゃんバンドに出てくれって頼まれた時さ、俺ピアノは出来るけどキーボードで弾いたことないから、無理って断ったんだけど、八左ヱ門からこの写真入ったカード受け取って、まぁ、その、中身を見て、OK出したんだよね」
「おかしいいいいいwwwwwwwwwその流れ絶対におかしいいいよおおおおwwwwwwwwwwwwwww」
衝撃の新事実とともに出るわ出るわ水着の私の写真。本当に撮られた記憶のない写真ばっかり出てきた。極めつけのケツの水着の食い込みを直しているやつが保護してあって死ぬほど笑った。久々知くんの話によれば尾浜くんはバンドの出演を絶対久々知くんが断ると思っていたのか、NOと言ってきたとき用に取引として私の写真をめっちゃ撮っておいたのだそうだ。
っていうか『新しいフォルダ』ってwwwwwwwwwこれエロ画像とか保存しておく用の手段じゃんwwwwwwwなにしてんのほんとにwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
「故に、可愛すぎた鶴谷さんの笑顔をケータイの待ち受けに設定していました」
「ファーーーーーwwwwwww」
「本当になんかもう、ストーカーみたいでごめんね…」
「いやなんかもうwwwwどうでもいいどうでもいいwwwwwwwwwっていうかwwwwwwww私たちwww頭おかしいwwwwwwwwww」
マウスから手を離してひぃひぃ腹を押さえて笑う私の横で、久々知くんも腹を押さえて笑った。なんていうか、平日に学校サボってる学生には見えない。お互いのバカを披露して笑いあっているだなんて。楽しすぎるにも程がある。まるで男子高校生同士のようだ。アッーまたホモ路線に思考が行く!わしのバカバカ!
しばらく馬鹿みたいに笑いあい、私はやっと息を整えるために頂いたお茶で喉を潤した。死ぬかと思った。腹筋割れる。笑いすぎた。死ぬ。
「ねぇ鶴谷さん、俺、そんな話聞いても、鶴谷さんのこと嫌いにはならないよ」
「っ、」
「鶴谷さんは、やっぱりこれ見て俺の事気持ち悪いと思った?」
「い、いや全然!!む、むしろ此処までだと思ってなかったから……そ、その…………う、嬉しいと、言いますか……」
「っ!そ、そっか!よかった…!」
ほっと胸に手を当て安心したような表情をする久々知くん。可愛いなおいいいい!!
あぁなんかもう、本当に、なんというか、その、好きなんだなぁと、思ってしまうぐらい、久々知くん、可愛いと思います。はい。
「じゃぁ、出来ることなら、もう一度、改めて、………鶴谷さんに告白させてください」
「…は、はい」
私の前で改めて正座をした久々知くんは、
いつもの、優しい笑顔でした。
「鶴谷さんにもしものことがあったらパソコンのデータは全て消して同人誌からグッズまで全て焼却して無き物にするって約束する。だから、俺と付き合ってください」
「はいいいいいいい喜んでえええええええええええええええええええええ!!!
………て、あっ…!」
人生で一度は言われたい台詞を目の前で言われ、
勢いで返事を返し、
あっ、と、思わず口を手で隠し、
私の熱は全て、顔面に集まった。
「……ほ、本当?」
「あ、その、」
「本当!?本当に、俺と付き合ってくれるの…!?」
「えっと、……あ、わ、私も…く、久々知くんのこと、好きです…っ!!…こ、こんな私で、よろ、よろしければ……
よろしく、お願いいたします…!!」
チキンなので目線は合わせられず、申し訳ないが、私は下を向いたまま久々知くんにお返事を返した。うわなにこの羞恥プレイ。恥ずかしい。
すると、スカートを握りしめていた私の手は久々知くんに握られて、久々知くんは、ポロリと一筋、涙を零した。
「え、久々知くん、」
「ごめ、ん、カッコ悪いとこ見せて…」
「いや、その…」
「夢みたいだ…!やっと、届いた……!」
かああああああああああああああああああああああああぜはやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!
あああああああああああああああああああああああああもう久々知くんまじ好きいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいこんな人と私今恋人関係になれたなんて信じられないのと同時にファンクラブからのバッシング超怖いよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお誰か私を守ってえええええええええええええええええええェエエンダアアアアアアアアアアアアアアアイヤァアアアアアアアアアアアアアアアアウィルオオオオオルウェイズラアアブユウウウウウウウウアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!
「じゃぁさ、」
「うん?」
「はれて両想いになれたということで」
「うん」
「もう俺遠慮しなくていい?」
「はい?」
「奈緒」
「ファッ!?」
「奈緒でいい?」
「ちょwww破壊力wwwww」
「奈緒」
「はい」
「奈緒」
「く……へ、兵助!」
「ちょwwwそれヤバイwwwww」
「兵助!」
「奈緒!」
「兵助!!」
「奈緒!!」
「やばい楽しいwwww」
「じゃぁもう一個だけ俺の願い聞いてほしいんだけど」
「うん?」
「キスしていい?」
「はい!?」
「いやなんかもう我慢しなくていい関係になったんだと気付いたからそろそろいいかなと思って」
「いやいやいやwwwタイミングwwwwwもうちょっとなんかこうwwwロマンチックにwwwwwww」
「俺どれだけ我慢したと思ってるの?」
「キャラ違うよwwww久々知くん目がマジだよwwwwwww」
「キスさせてください」
「目が怖いよ…!座ってるよ!」
「させやがれください」
「落ち着いて!話せばわかる!!」
「一回でいいのでお願いします!!」
「いやー!やめてー!!乱暴するつもりでしょ!!エロ同人みたいに!!エロ同人みたいに!!!!」
「あ、そうだ」
「え?」
「南天さんだよね」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーッッッ!??!?!?!?!?!?!!!?!??!??!!!!」