「閉店のお知らせぇええええええええええええええ!!!!」
「勘ちゃんんんんんん!?!?!?!」


バーン!と良い音が鳴り、教室の前の扉は外れて教室内に吹っ飛んでいった。勘ちゃんが飛び蹴りで外した。ガラス割れなくて良かったのだ。ドアは「解せぬ」とか思ってることであろう。
今のダイナミック入室により客もクラスメイトも全員黙り驚きこっちへ視線を向けた。何故外回りをしている俺たちがこんなスタイリッシュに教室に戻ってきたのか疑問でしょうがないのだろう。

クラスの連中も鶴谷さんが三年の先輩にハメられてミスコンに出場する羽目になっているという話をなんとなくだが聞いていたらしく、急いで体育館に行かないと!とお店をかたしているところだった。そういえば雷蔵が鶴谷さんは立花先輩に連行されていったと言っていた。此処にいないとなると、もう体育館についている頃だろうか。廊下を走り先生に捕まっていたりで時間ロスがあった。ミスコンはもう始まっている。


「なぁ兵助!俺たちに何かできることないか!?」
「鶴谷何も準備してねぇって言ってたぞ!」

「勘ちゃん私たちは!?犯人捜す!?」
「奈緒絶対困ってるって!」


次いで雷蔵たちも教室に入ってきたのだが、クラスメイト達の頭はもう鶴谷さんの心配でいっぱいだったようだ。詰め寄られそう問いかけられても俺たちは何もすることが出来ない。

鶴谷さんは一体なんで三年の先輩なんかにはめられたのだろうとは考えてみたが、三郎が言った通り、恐らく立花先輩たちと異常に仲が良いことに対する嫉妬だろう。立花先輩直々に頼まれポスターを描いたし、俺も見たけど、鶴谷さんが立花先輩と一緒に帰っているところを目撃した人もいるだろう。あの先輩方のファン、というか、信者はかなり多いはず。去年優勝した立花先輩の信者はダントツでおおいだろう。そして巻き起こったこの状況。鶴谷さんはただの親戚だと言うのに、とんだとばっちりだ。


「………そうだ、この衣装、持って行ってみよう」


ポツリと、俺はつぶやいた。


「もしかしたら、何か役に立つかもしれない…。ないより、ある方がいいに決まってる!」

「そっか、よし、じゃぁ衣装来てるやつ急いで着替えろ!なにが必要になるか解んないから、鶴谷さんの荷物全部運ぶぞ!」


もはや接客どころではない。注文した商品が手元にあるお客さんは好きなだけゆっくりしていってくださいと告げ、俺たちは鶴谷さんのために荷物という荷物をかき集めた。
たたんでバッグに詰め込んでいる時間もないため、着替えてるやつは衣装をそのまま持っていくように指示。勘ちゃんはクラスTシャツに着替え鶴谷さんのメイク道具を全てメイクボックスに詰め込みそれを持って体育館へ走った。着替え終えた雷蔵と三郎がバチン!とバッグを締め転がさずに持ち上げ大きいキャリーバッグを運んでいった。

俺も急いでクラスTシャツに着替え、衣装を持ち、自分のケータイやら財布やらiPodやらをポケットに突っこんで体育館へ走った。


「なぁ八左ヱ門」
「あ?」
「………鶴谷さんがランクインしたとか、夢かよ」
「お前に取っちゃ今年一番の出来事になるかもな!」


本当は、「鶴谷さんのことどう思ってんの」と聞きたかったんだ。だけどやっぱりそれは聞けなかった。もし八左ヱ門が鶴谷さんに気があってもなくても、この答えだけは八左ヱ門から聞いちゃいけないような気がした。…まぁ、あるって言われれば落ち込むこと間違いなしだけど……。

「こら久々知、竹谷、廊下を走るな」
「木下先生!鶴谷さんがミスコンの五位にランクインしたらしいですよ!」
「俺ら応援に行かないと!」

「な、なに!?鶴谷が!?わ、わしも行くぞ!」
「ちょwwwwww木下先生全力疾走wwwwwwwwwwwww」


注意してきた木下先生が走ってどうするwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww




体育館につく頃には皆と合流してきて、体育館の扉を開けると、そこは大層盛り上がっていた。木下先生は教職員用席の方へ行ったが、俺たちは場所取りより鶴谷三の方が心配だ。
女子の部が先に行われているようだが、舞台に鶴谷さんの姿はなかった。出番がまだなのかな。一人で鶴谷さんを探していると暇そうにぼーっと舞台裏入口からステージを眺めている姿が。綾部だ。

「あ、綾部!」
「おやまぁ久々知先輩。そんなに慌ててどちらへ?」
「鶴谷さんは何処にいる!?」
「えーっと、奈緒先輩でしたら、先ほど舞台裏の更衣室に入って行かれましたよぉー」


本当は部外者以外立ち入り禁止なのだが、綾部はどうぞどうぞと中へ入れてくれた。更衣室へ耳を澄ますと、中から鶴谷さんのぐずるような声が聞こえて来た。こんこんと扉をノックして、

「鶴谷さん、其処にいる?」

と声をかけると、






「その声は、わが友、李徴子ではないか?」






と返事が帰ってきた。

なwんwだwよwwwwwwwww随分と余裕じゃないかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww



「如何にも自分は隴西の李徴である」

教科書通りに返事を返し、更衣室の扉を開けると、三年の先輩方に囲まれて涙目になっている鶴谷さんの姿が。ハタからみたら脅されている容易にしか見えないなこの絵は。主に七松先輩の腕組み怖すぎワロタ。

「聞いたよ!三年の先輩にはめられたって、雷蔵から…!」
「どうしよう久々知くん、わ、私何も準備してないのに……!」

ガタガタと震える手を、思わず俺は握ってしまったがうわああああああああああああああああああああ鶴谷さんの手を握ってるとかああああああああああああああああああああああ図々しいにも程があるぞしかもご両親(立花先輩と潮江先輩)がいらっしゃる前でこんなことしてるだなんて殺され……あれ、殺されない。何も言われない。

なんてこったこの状況でも何も言ってこないほどお二人も焦っておられるのか。


「大丈夫!俺たちに任せて!」

「…え?」


タイミングをはかっていたかのように扉が開き、荷物を抱えたみんなが鶴谷さんに駆け寄った。

「鶴谷聞いたぞ先輩にはめられてたんだって!?」
「僕らも微力ながら力貸すから奈緒ちゃん負けないで!!」
「兵助!!言われたもの全部持ってきたぞ!!」
「あと足りないものある!?」

「た、竹谷くん!?鉢屋くんに、不破くん、お、尾浜くんまで、……って、お前らァアアアア!!!」

「ちょっと奈緒ー!あんたミスコンランクインしたんだって!?」
「何で先輩から恨み買ってんの!?」
「っていうかうちらの奈緒はめた先輩ってどの女!?」
「どうせ立花先輩たち目当てのブスばっかでしょ!?」

「我らの天使をハメるといは何たる愚行か!!」
「腐女子の底力見せつけてやりなされ奈緒!!!」

「俺らの文化祭実行委員はめるとは許せんな!!」
「鶴谷負けんな!!絶対優勝しろよ!!」
「今年の女レベル激低いからお前なら絶対優勝できっから!!」
「うちの学年代表してんだろ!!本気出せよ!!」


更衣室は一瞬にして大人数で埋まってしまった。抱えられていた荷物を設置されていたテーブルの上にぶちまいて、


「これ使って!何かの役に立つかと思って!」


そういうと、鶴谷さんは信じられない、とでも言いたそうな顔で、ふらふらと荷物の方へ近寄って行った。何せ鶴谷さんの持ち物を全て持って来たんだ。これ以上足りないものがあるというのなら俺たちは何処へだって走ってとってくる。

今年の文化祭は、本当に鶴谷さんにはお世話になりっぱなしだった。文化祭実行委員が途中で変更するハプニングからはじまり、だからこそ成功したともいえる事実。鶴谷さんが俺たちを引っ張って行ってくれなければ、きっと此処までうちのクラスは盛り上がることはなかっただろう。


きっとここにいるみんな、同じ気持ちで鶴谷さんの力になりたいとおもっているはずなのだ。



「〜〜〜〜っっ!!!!お力拝借!!!!!!!!」



「よっしゃーまかせろ!!」
「三年泣かせようぜ!!」

鶴谷さんは三年の先輩方を蹴りだし更衣室の扉を閉め、キャリーバッグをひっくり返した。衣装を引っ掴み髪の毛を解き鏡に向かって気合を入れるような顔でよし!と意気込んだ。

手渡したiPodをカリカリと音を立てながら曲を探し。あった!と嬉しそうに画面を見せてきた。

わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ鶴谷さんの星間飛行聞けるとかあqwせdfrtghyじゅきぉ;p:@」「jんdjfjhんvhかうふいふいdgyふじこpl;@「:」「7あwせdrtfyぐhじこpl@;「:!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「久々知くんこの曲!上に留兄ちゃんいるからこれ流すように言って!」

「うん、俺そのまま客席にいるから、頑張ってね!」
「あ、ありがとう!」


iPodを受け取り八左ヱ門たちと一緒に更衣室を出た。


「着替えも手伝いたかっただなんて口が裂けても言えない」
「言ってる言ってる!」

階段を上がり放送室の扉を開けると、善法寺先輩が「久々知?」と俺の存在に気付いた。善法寺先輩が食満先輩の肩を叩くと、ヘッドフォンを外して食満先輩が立ち上がった。


「食満先輩、次の鶴谷さんの出番の時、これ流してください!」
「おい聞いたぞ、奈緒のやつうちの学年のやつにはめられたんだって!?奈緒は大丈夫なのか!?」
「はい!やる気満々です!」
「僕も留三郎も心配だったんだ!辞退しないんだね!さすが僕らの奈緒だ!」
「宜しくお願いします!」

頭を下げ放送室から出て、俺は客席に急いだ。

舞台の目の前はもう客でいっぱいだったのだが、早く早く!とクラスメイト達に押され引かれ、一番いい場所を陣取ってた先輩方の後ろに出た。奈緒さんへの愛パネェ。
ポケットからサイリウムを取り出していた雷蔵たちも、鶴谷さんの出番を待っているようだった。

というか、うちのクラスの連中は完全に犯人を今舞台上で踊ってる先輩だと決めつけたのか、凄い形相で睨んでいた。女の勘がそう言っているのだろうか。恐ろしいのだ女子は。
まぁ確かに去年立花先輩と並んで優勝して他のこの女だったし、一番可能性は大だな。

ありがとー!と無理やり作ったような声で手を振りながら舞台そでに戻って行った先輩。さてお待ちかねの俺の天使のと登場うjはあfd!!!!





『女子の部最後は!高等部二年で唯一のランクイン!二年一組の、鶴谷奈緒先輩です!』




伝七がそう言い舞台そでに引っ込むと、入れ替わりでランカの星間飛行の衣装に身を包んだ俺の天使が現れた。


「うおおおおおお!!鶴谷さん!!鶴谷さーーーーーん!!!」
「兵助落ち着け!!!」

「奈緒ちゃーん!!!奈緒ちゃ、奈緒、ら、ランカァアアアアア!!!!!」
「おい雷蔵お前も落ち着け!!」


俺と雷蔵は自我を失い暴走するようにサイリウムを左右に振りまくった。

そういえば鶴谷さんは開セレの時にこの衣装で舞台に上がっていた。それで顔を覚えている人が「あの子だよほらー!」と思い出したように言い、マクロスを知っている恐らくオタどもが「うおおおおおおおおお!!」と騒ぎ始めた。あ、あの人うちのクラスに客で来てた人だ。あの人はおそらくにわかじゃない。ガチだ。

鶴谷さんは一瞬こそ緊張に強張った表情を見せたが、マイクを握りしめ、上を向き、とびっきりの笑顔で、








みんな!抱きしめて!銀河の!果てまでーーーー!!!









声高らかに、ランカの台詞そう叫んだ。

テンションの上がる前奏が流れ始め、さっきより仕事をしまくっている照明が光り、それにあわせるように鶴谷さんは踊り始めた。


ご存じないのですか!?彼女こそ醜い女の嫉妬のとばっちりを受け、ミスコン一位をもぎ取ろうとしている、超時空シンデレラ鶴谷奈緒さんです!!!!!!!!!!!!!


ちらりと視線を雷蔵に送ると、雷蔵もとびっきり良い笑顔で鶴谷さんと同じ踊りをしちたので、俺も一緒になってキラッとやりましたごめんなさい俺如きがこんなことして雷蔵は天使だからいいけど俺は俺は俺は。

勘ちゃんがかわいー!と言いながら写メを連写していた。ああそうだ俺も撮っておかないととケータイを取り出し、連写設定で大量に保存した。ひらひらと衣装が舞いもう少しでパンツが見えそう。今日の俺ヤバイ。死んだ方がいいかもしれない。連写でパンチラ一枚でも入ってたら俺もう死んでもいいや。


『みんなで一緒にーーー!!!』


鶴谷さんがそういうと、皆が腕を上げ

\ キラァッ! /

と、一緒にやった。

ちょっとwwwwwwwwww今まさかの潮江先輩と中在家先輩も同じ格好してたけどwwwwwwwwwwwwwwwwww中在家先輩と潮江先輩のwwwwwキラッwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

正面から見たかった正面からwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww正面から見たいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww



曲は順調に最後まで何事もなく続いて行った。鶴谷さんの踊りも一ミリも間違えることなく、なんかもう三次元にランカ出てきちゃったのかと思ったわ。

雷蔵とサイリウムを高々をかざし、鶴谷さんと同じくそう叫び、曲は止まった。深々と頭を下げて舞台そでに引っ込むと、俺は全身が金縛りにあったように全く動かず、隣にいた八左ヱ門に倒れこんでしまった。


「兵助!大丈夫か兵助!」
「は、八左ヱ門、俺はもうだめなのだ…」
「生きろ!そなたは美しい!」
「……最期に聞いてくれ…」
「兵助!起きろ!頑張れ兵助!」



「俺の、データフォルダに……鶴谷さんのパンチラは、……は、入っているだろう…………か……」



「へ、兵助ェエエエエエ!!!」






今日の俺、最高にキモイ。







「立つんだ兵助!鉄の兵助!」
「ら、雷蔵…!」

「てっつっの!へいすーけー!!」
「むってっき!へいすーけー!!」


雷蔵の必死の応援になんとか覚醒し、急ぎデータフォルダを確認すると



「ゴフッ!!」
「えええええ兵助ぇええ!?!?」

























パンチラあった。

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