「ごめんね鶴谷さん、本当にありがとう」
「いえいえこんなんでよければ喜んで!」

今俺すげぇ美味しい状況にいる。帯が結べないって言ったらまさかの鶴谷さんが着付けをやってくれるという状況に。しかもこの浴衣ちょっと長さがあってないから調節しながら帯をセットしなきゃいけないと言ったら、鶴谷さんはそれまでやってくれた。

つまり、今俺は鶴谷さんに抱締められている状況にいるということなんだよ!!!なぁ!!!!!おい!!!!鶴谷さんにな!!!!!!抱きしめられているんだよ!!!!!!!!!!

落ち着け俺!!!俺の俺落ち着け!!!!俺の腰に鶴谷さんが抱き着いていつからと言って反応すんな!!!!今反応したらガチで嫌われるぞ!!!!!!男兵助、これぐらい耐えろ!!!!!!!!!!

っていうか鶴谷さん超いい匂いする…。これ絶対エッセンシャル……。可愛い作ってるとか鶴谷さん可愛い………。
俺変態過ぎ死んだ方がいい…。


「これでどう?苦しくない?」
「大丈夫!本当に助かったよ、ありがとう!」

「いえいえ!尾浜くんは?大丈夫?」
「今鶴谷さんの見よう見まねでやってみたけど、どう?」
「うん、大丈夫大丈夫、崩れる心配はないよ」

鶴谷さんが勘ちゃんの帯に手をかけぐいぐいを動かしてみるが、崩れる気配はない。おk!と手でサインを出すと、勘ちゃんはありがと!と水を口に含んだ。

立花先輩のクラスから鶴谷さんの手を引いて逃亡中、ポケットに入れていたケータイが鳴った。画面を付けるとそこには勘ちゃんからのLINEで、先に体育館へ行っているというメッセージだった。どうやら俺が教室に戻ってこないので衣装も持って体育館へ先に行ったらしい。もう適当に逃亡していたので教室へ行くよりこのまま体育館へ行った方が近い。ありがたい。

体育館へ行くと、まだそこに三郎たちの姿はなく、勘ちゃんが一人で紙袋を持って舞台裏に来ていた。鶴谷さんとは一旦そこで別れたのだが、着付けを教えてくれる雷蔵がいない。き、着れない!というわけで鶴谷さんに帯の結び方を教えてもらうため、関係者以外立ち入り禁止だけどかくかくしかじかでと理由を話して鶴谷さんも中に入ってもらった。

鶴谷さんは俺に帯を結んでくれている間、勘ちゃんと鶴谷さんの友人をナンパした話をしていた。大塚さん。どうやら俺たちのクラスに衣装提供をしてくれた噂のレイヤーさんだったらしい。勘ちゃんと鶴谷さんの話聞く限りかなり綺麗な人のようだ。モデルみたいとかどういうこと。俺も逢ってみたい。

勘ちゃんも二年二組だという話をしていなかったのか、その大塚さんという人の正体を今知ってびっくりしていた。今度お礼言おうとか言ってるけど、絶対それ次に逢う約束こじつける気だ!さすが勘ちゃん!百戦錬磨の見た目は将校!!


「紀子ちゃんなかなか良い子だった!かなり話もあうしね!」
「私狂なところさえなければ普通の子なんだけどね!」

大塚さんに迷惑かけてないようでなにより。


ステージでは高等部一年の一組のバンドが撤退していて、次のバンドが機材のセットに取り掛かっていた。次じゃないのかな勘ちゃんバンドの出番。残りの三人はまだか。

着物をひらひらとさせながら残りの三人を待っていると、「へいすけー!かんえもーん!」と遠くから八左ヱ門の声がした。来た来たとその方向へ視線を向けるt


「うわぁぁあーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!竹谷くんなんでそれ着てんのーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!?!?!?!?!?!?!?」

「あ!鶴谷!どうよ俺似合ってる!?」
「ドキドキで壊れそう1000%LOVE!!!!!!!!!!!!!!!」


入ってきたのは桜蘭の制服に身を包む三郎と雷蔵と、まさかのエースのズボンにエースの帽子を被りブーツを履いてウィッグまで被っている八左ヱ門だった。

なんでそれ着てんdいやそれよりお前それ似合うとかどういうことだ!!!!!クソッッッ!!!ナチュラルボーン体質め!!!!!!筋肉を寄越せ!!!!その腹筋を俺に譲れ!!!!!!!!


「さっき勘ちゃんのツレの女が、鶴谷のクラスで三郎と雷蔵の写真撮ってた俺と目があった瞬間追い剥ぎしてきて……」
「紀子ォオオオオオオオ!!!!!!!!」

鶴谷さんは瞬時にケータイを取り出し連写で八左ヱ門を撮りはじめた。信じられない速度で写真を保存し再び撮影を開始した。
なるほど、その噂の大塚さんに追い剥ぎにあったと。まぁ八左ヱ門筋肉すげぇしな、こういうキャラ似合うだろうと思ってたし!!!!!


「ごめんね竹谷くん……!うちの娘が本当にごめんね………!!」
「あ、いやいや!いいからいいから!俺もちょっとこれ正直似合ってんじゃねぇのかなとか思ってるぐらいテンションあがってっから!」
「素敵だよ竹谷くん写真撮らせてーーーーーーーーッッッ!!」

鶴谷さんはバッグからケータイを取り出しカメラを起動させ、設定は連写に。カシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャと素早い音を鳴らしながら、データフォルダはみるみるうちに八左ヱ門で埋め尽くされていっているようだった。

俺も負けずと、自分のケータイで八左ヱ門をとりまくった。かなり似合ってて困る。興奮する。ちょっと火拳のポーズして欲しいのだ。早くしろ。火拳やれ!!!!早くしろ!!!!!!!!!!

なんなんだよちっくしょーーーーーー!!!!!!!羨ましいほどに似合ってんなクソッッッ!!!!!!


「もういいだろ兵助…」
「ありがとう八左ヱ門お前ってやつは!!!!」

「はいはい離れろ俺も着替えるから!!」
「八左ヱ門んんんん!!!!」

八左ヱ門に抱き着いて喜びを表現したのに額をぐいと押されべりっと体は剥がされてしまった。テレんなよ!!!!!!!お前ホモじゃねぇだろ!!!!!!!!!!!!!

横で騒いでいる三郎と雷蔵もなぜか鶴谷さんは写真におさめていて、

「あ、久々知くん、教室の方まだ混んでるみたいだから、久々知くんの演奏終わったら先に教室戻ってるね」
「そう?解った。じゃぁ俺もこれ終わったら宣伝でまた外回るね。勘ちゃんが衣装の方も持ってきてくれたみたいだし!」
「おk!把握した!」

指をパキパキと鳴らしながら、俺は勘ちゃんバンドの出番を待った。もうそろそろだったはず。皆浴衣に着替え終え楽器を持ち、喉を潤すために水を飲んだりしていた。

準備は良いですかと司会をしていた兵太夫に言われ、勘ちゃんがいつでもいいと返事を返す。
もういる意味が無くなってしまったからか、鶴谷さんが、そろりと舞台裏から出て行こうとしていた。

「鶴谷さん、」
「ん?」

肩をちょんちょんとつつき、俺はうたプリの舞台裏のようにハイタッチをしたくて両手を小さく上げた。すると鶴谷さんにその意図が伝わったのか、にやりと笑って一歩前に踏み出した。


「闇に光りを灯し…荒れ野に花を咲かせ、心を大空に輝かせる……。」


さwwwwすwwwがwwwwwww鶴谷wwwwさんwwwwwwwwwwwwwwwwwww完璧すぎクッソワロwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww



「音楽は、世界を変える!」


両手を前に出して、


「行ってらっしゃい!頑張ってね!!」


鶴谷さんが、笑顔で皆とハイタッチをしていった。


「頑張れ久々知くん!応援してるね!」
「うんありがとう!ガンガンいくぜ!」

パチンと良い音を鳴らして、俺はそのままステージに立った。やはり一般公開で一般のお客さんも多かったからか、客席はかなりの人数で埋まっていた。うわ、なにこれなんてライブ。アイドルにでもなった気分。恐れ多すぎる。ST☆RISHもこんな緊張感だったんでしょうか。僕には到底耐えられそうにありません。

開セレより確実にお客さん多いだろこれ。おかしい。何故こんなに客がいるのかさっぱりわからん。あれか、もしかしてポスター効果か。鶴谷さんの描いたポスターのモデルが出るぞと話題になったか。


『 はーいみなさんこんちはー!大川祭楽しんでますかー!?勘ちゃんバンドでーす! 』


ぶわりと揺れる色とりどりのペンライトが眩しくて、鶴谷さんの姿が確認できない。照明も俺らの上の前から来てるから、どうしても最前列の方しか見れない。うおおおお緊張で死ぬ鶴谷さんを一目見ておきたい!!!!!!

パキパキと指を鳴らしながら観客の中を目を細めてみていると、うぉっ!と声がして、押し出されるようにステージに腕が伸びた。あ、もしかしてと思っていると、やはりそれは鶴谷さんで、後ろには戸塚さんと浅水さんも一緒に来ていた。
俺は思わず顔がゆるんで、手をヒラヒラと小さく振ってしまった。鶴谷さんも俺に気付いてくれたのか、笑ってペンライトを振ってくれた。

いざ演奏が始まりキーボードに手をかける。もう人前で演奏するのは初めてじゃない。鶴谷さんに手も振ってもらった。音を間違えることなんてありえない!!!!!


勘ちゃんの歌を歌いながら、ふと気が付いた。そういえば、鶴谷さんは結局のところ、八左ヱ門のことをどう思っているのだろうか。
さっきもコスプレに興奮していたとはいえ、嬉しそうに八左ヱ門の写真を撮っていたし、過去を辿れば、やっぱり八左ヱ門と一緒に居て楽しそうな表情をしているのを何度か思い出してしまう。鶴谷さんのことを諦めることはやめたとはいえ、やっぱりそこのところは気になってしまうわけで。

こんな腐男子が同類とはいえこんな天使を好きになってしまうなんて烏滸がましい。だけどやっぱりこんなに想ってるんだから、嫌いになる方が無理って話だよね。

そりゃ俺より八左ヱ門たちの方がかっこいいだろうし、鶴谷さんに俺を好いてほしいなんて図々しいにも程はあるけど、やっぱり好きなもんな好きなんだし、どうせ文化祭終わったら気持ちを伝えるって心の準備は出来てんだから、今更鶴谷さんが八左ヱ門を好きでもなんでもいい!!俺は俺の気持ちに正直に生きる!!

ドゥワナウォニィチャーーーーン!!イイカライイカラー!テリーヲシンジテー!!!!









『 ありがとねー!!是非俺たちの教室にも遊びにきてねーー!!投票もよろしくね!! 』


演奏が終わり撤退。一瞬ステージ上から鶴谷さんを探したが、終わってからすぐ教室に行ってしまったのか、もうそこに鶴谷さんの姿はなかった。

勘ちゃんが持ってきてくれた衣装を着て、ついでに暇だろうから雷蔵たちにもコスしてもらい、まさかのうちのクラスの出し物の宣伝部隊として一緒に行動してもらうことにした。中等部のほうにも顔を出してきたらしく、もう回る予定の店は全て回って、仕事もなくて退屈なのだろいう。まぁそれならいいか、ちょっとうちのクラス、アイルーの手も借りたいほどに忙しいんだ手伝えよ。


「あ、やば、宣伝用のチラシ忘れたわ」
「あぁ、じゃぁ僕がとってくるよ、ちょっと教室にケータイ忘れちゃって」
「ありがとう雷蔵、すまないのだ」
「いいよ、気にしないで!」

雷蔵がそういい校舎の中へ戻っていった。チラシがないことには口頭で場所を伝えなきゃいけないしなかなか面倒なのだ。雷蔵が戻るならちょうどいい。一緒に取ってきてもらおう。

暑いのでウィッグを外して服だけコス状態。もういいと思うこれで。暑いし。髪蒸れるし。
二年二組へどうぞーと適当に宣伝していると、「あのぉ、」と声をかけられた。


「すいません、もし違ってたらあれなんですけど………」
「はい?」


「…もしかして、夏コミでお逢いしませんでした……?」



俺に声をかけてきた二人組の子。はて、こんな子友人にいたかな、と一瞬で考えていると、彼女は夏コミで逢ったと言った。え?誰だ?売り子の人か?


「……えーっと、」
「あ、私達、南天の売り子してたんですけど……」

「…………あ、あ!?…あぁ!!あぁぁ!!はい!はい!!そうだ思い出した!」
「あ!やっぱり!南天が豆腐と幸村書いたスケブ、取りに来た人ですよね!?」
「そうです!お久しぶりです!っていうか、偶然ですね!」

「やっぱりそうでしたかー!」
「ほらほら!私の言ったとおりでしょ!」

キャーと手を取りテンションを上げる二人組。そうだ、この人たちは確かに夏コミで南天さんの売り子をやっていた人たちだ。ちょっと世間話?みたいなのをした時間もあったから中々顔を覚えている。そうだそうだ、この人たち、南天さんの売り子さんたちだ!


「お兄さんこの学園の人だったんですね!」
「えぇ、二年です」

「……えっ、…二年、ですか…?」

「はい、えっと、あなたはご友人に逢いに?」


そういうと二人は、目をパチクリさせ見つめあった。










「私たち、その………」

「……南天に、逢いに来たんですけど…」











「………はい?」


「…正体、ご存じないんですか……?」





今、この二人はなんて言った?

俺の信者している南天さんに、逢いに来た、だと?


南天さんが、この学園の生徒?







…………えっ、



…え?






「え……」

「南天、知らないんですか…?」
「し、らない…です………」


二人は再び顔を合わせ、また、俺に視線を戻した。




「南天の正体h「大変だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!!!!」



二人が何かを言おうとした時、雷蔵が校舎から大声を上げて走ってきた。話の途中だったが、いつも冷静な雷蔵がかなり焦っている。っていうか暴走している。一体何があったんだ。


「どうしたの雷蔵?」


「大変だよ兵助!!奈緒ちゃんが、奈緒ちゃんがミスコンの五位にランクインしてたんだって!!!!!」


「あぁ!?!?!?!?!?!?」

「さ、三年の先輩方にはめられたって、さっき教室で立花先輩に奈緒ちゃんが叫んでたんだ!!なんだか解んないけど、三年の先輩にはめられて昨日その通知が来なかったって!!そ、それで、なんも準備なんかしてないって、奈緒ちゃんが大慌てで…っ!!」


息も途切れ途切れに雷蔵がそう伝えると、只ならぬ状態で戻ってきた雷蔵に気付いた三郎と八左ヱ門と勘右衛門も一緒にその話を聞いていた。

「はめられた!?鶴谷が三年の女に!?」
「なんで鶴谷さんが先輩にはめられんの!?」
「もしかして、鶴谷さん立花先輩たちと仲良かったし、恨みでも買ってたんじゃないのか!?」

ミスコンは一晩でアピールする一芸を完成させて来なければならない。ミスコンの予定時間はあと30分後。どう頑張っても今から何かを準備するなんて到底無理だ。
なにがあって鶴谷さんが先輩にはめられたのかはしらないが、なんといういじめ。鶴谷さんに恥でもかかせるつもりか!


「ミスコンて何処だっけ!?」
「体育館!あと30分ないよ!!」

「俺たちも行こう!」
「そうだな、行こう兵助!」

「あぁ!すいません、親友が、………って、あれ?」


振り向くとそこに、さっきの二人はいなかった。



「兵助行くぞ!!」
「あ、待って!!」


鶴谷さんがミスコンにランクイン!?鶴谷さんが!?

やっぱり!?そうだよね!?!?鶴谷さんぐらい天使ならミスコンにランクインするよね!?これもう学園の天使に公式認定される日も近いね!?!?!?みんなの天使になっちゃうね!?!?!?










"皆の"、天使?











「其れだけは阻止なのだぁああああああああ!!!!!!」


「おい兵助がとんでもない早さで走ってるぞ!!」
「誰だあいつに立体起動装置渡したの!!」
「イェエエエエエガァアアアーーーーッッ!!!」

「待ってろ俺の天使ィイイイイイ!!!」

「リヴァイ兵長この人です」
「兵長俺です駆逐してください!!!」

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