「高等部三年一組で豪華賞品を狙いませんかー!コインカジノ"LastChance"へいらっしゃーい!」

「全ての模擬店回ったら三年二組の"長次のケーキ"へ是非おこしをー!」

「廃院を完全再現!スリル満点のお化け屋敷は高等部三年三組"戦慄病棟139号室"へどうぞー!」

「男子はメイド女子は執事!男女逆転メイドカフェ高等部一年一組へ是非来てくださーい!」

「高等部一年二組では手作りプラネタリウムを上映中です!一旦休息はうちの教室でどうぞー!」

「貴方の髪型かわいく結ってくれます!遊びに夢中で崩れちゃったらぜひうちのクラスへー!」


右で左で看板をぶら下げたり大きく声を張り上げたりしている宣伝隊でごった返している校門の近く。俺は今そこで勘ちゃんと一緒に客の誘導をしています。宣伝と言うか誘導というか。
今年の文化祭は去年よりはるかに客数が多い気がする。特に制服を着ている子が。高等部からの途中入学を考えている子が今年は多いってことかな。じゃぁ今年は倍率上がりそうだな。皆頑張れ。クソみたいな先輩がここで待ってるよ。俺のことです。はい。

今日は昨日の衣装とは違う服装でお送りしております。が、これが結構反応良くてびっくり。俺に似合うかなーとか心配したけど、どうやらその心配は無用だったようだ。


「あ、あの、すいませんそれって、もしかして…臨也のコスですか…?」

「写メ撮らせてもらえませんかー…!」


門の近くにある花壇に腰掛けぼーっとしていると、私服の女の子二人組に声をかけられた。カメラを構えられたが、すまない俺の写真は今日はずっと有料制なのだ。
ケータイにはテニプリのストラップ。バッグには黒バスのストラップ。お、これはイケるかもしれない。一般人ではないこと確実。

ポケットに手を突っ込み連絡を飛ばして、俺は立ち上がり彼女二人の肩に腕を回してにっこり笑って

「俺、二年でカフェやってんだけど、遊びに来ない?」

にっこり笑ってそういえば、彼女達はやっぱり顔を赤くしてうんと頷いた。勘ちゃんの教えてくれた「営業スマイル」、夏以来良く活用させていただいております。

ゆっくり歩いて進んでいくと、




ビュンッ!




と、凄いスピードで、俺の顔面目がけてゴミ箱が飛んできた。頭を下げてそのゴミ箱をよけると、後ろにあった樹に大きくぶつかってぐわんと鳴って地に落ちた。
肩を組んでいた女の子は「ブフォアァァアアーーーーーッッ!!!」と叫んで、俺から、勘ちゃんから距離を取った。


「く〜〜〜く〜〜〜ち〜〜〜く〜〜〜〜〜〜ん…」

「勘ちゃん…」

「学園の北門には来るなっていわなかったっけかぁ〜?久々知くんよぉ〜〜」


ゴミ箱が吹っ飛んできたということに周りにいた宣伝隊もお客さんも、その大きな音に驚き視線をこっちに向けた。このシーンを知っているであろうヤツらはカメラを構えたりしはじめた。勘ちゃんと俺は打ち合わせ通りに険悪なムードを作り出してこれから一戦おっぱじめますとでもいうかのような雰囲気を醸し出した。




そして近寄りくるっと振り向き、






「「この続きは二年一組の"AnimeIzm"にて!お待ちしておりまーす!"」」





そう言うと、ワッと拍手が起きて俺たちはそのまま校舎へ逃げるようにかけこんだ。


「よっしゃぁ大成功!」
「また忙しくなるのだ…」

「でも俺らもう少ししたら交代じゃないのか?」
「…あ、もうそんな時間か」


うざやのコートを脱ぐと、勘ちゃんもグラサンを外してシャツをまくった。ポケットに入れておいたケータイを出すと時間はもうすぐ午後の店番のやつらと交代する時間だった。

俺たちは午後有志バンドの発表があるので仕事は午前担当だ。この後ちょっとお昼ご飯兼で休憩時間がある。だったらもう教室に戻ろうと勘ちゃんは階段を上がっていった。


「久々知先輩!」
「尾浜先輩ー!」

「伊助、どうしたその荷物?」
「庄ちゃーん?なんだか重そうだな」

「ジュースはいかがですか?キンキンに冷えてて全部100円ですよ!」
「中等部の校舎までお客さんあんまり来なくて、外に持って行って販売しようと思ったんです」


階段を上がっている途中で声をかけられ顔を上げると、後輩の姿が目に入った。大きなクーラーボックスを担いだ伊助と庄左ヱ門の姿だ。
このクソ暑い中それを持って歩き回っている理由は教室にいるだけではあまり売れ行きが良くないからと言うことだ。

確かに中等部の校舎は門から少し離れている場所にある。あそこまで行くには知り合いがない限り高等部で満足して帰ってしまいそうだ。途中入学を考えている小学生たちがちらほらと歩いて向かっているのを目にするぐらいで、あまり客数は期待できないだろう。確か俺も中等部の時の文化祭の思い出なんて本当に暇だった、ってことしか覚えてない。


「中等部の校舎は遠いから大変だろうな…」
「じゃぁ俺がそれ買うよ。ボックスごと借りて行っていい?」

「えっ!これ全部ですか!?」

「うちのクラスの連中に差し入れするのだ。そうすればお前らも荷物減るだろ?」
「じゃぁ俺も半分出すよ。庄ちゃん会計して」

「は、はい!ありがとうございます!」


伊助が担いでいたクーラーボックスを受け取り担ぎ、庄ちゃんが領収書を書いて(そんなもん持ち歩いてんのか…)勘ちゃんに渡すと、ありがとうございました!と二人で頭を下げた。
可愛い後輩のためだからなぁと勘ちゃんは走り去る庄左ヱ門と伊助の後ろ姿を微笑んで見続けた。行こうと声をかけ俺たちは重い荷物を担いでのたのたと教室へ戻った。

またさらに客増えてるなぁと思いながらも教室へ戻ると、やはり教室は大盛況で、テーブルはすべて埋まっていた。差し入れだとクーラーボックスと置くと、接客していた連中が次から次へとジュースを持って行った。だが俺と勘ちゃんはデュラファンからの撮影会が始まってしまい、ジュースをとるどころではなくなってしまった。みんなちゃんととったかな。


「「どっちが三郎くんでしょうかゲーム!」」

「ちょっとwwwwwwwwなんで雷蔵と三郎がうちで働いてるんだよwwwwwwwwwwwwww」
「さっき鶴谷さんに借りたんだよ」
「僕一回でいいからコスプレしてみたいって頼んでさぁ!!似合う!?」
「二人とも写真撮らせて!!!」



…あれ、そういえば鶴谷さんの姿が見当たらない。

今朝鶴谷さんが娘々ランカで教室に入ってきたとき、リアルに鼻血が噴出して勘ちゃんの多大なる迷惑をかけた。だって鶴谷さんがランカちゃんだよ!?!?!?!?!?!?!昨日の星間飛行でもう既にやばかったのに二日続けてランカちゃん!?!?!?!?!?しかも今度はチャイナ!?!?!?!?!?生足!?!?!?!?!?!?!??

あの人まじで俺のこと殺す気か!?!?!?!?!?!って思った。本当にヤバかった。ツラかった。


「ねぇ戸塚さん、鶴谷さん知らない?」
「奈緒ならさっき美女なご友人と腕を組んで出かけられたでござる」
「そっか、ありがと。戸塚さんもジュースどうぞ」
「忝い!!」


戸塚さんにジュースを手渡し、俺は着替えスペースへ逃げ込み着替えをした。中で勘ちゃんはもうクラスTシャツに着替えてケータイをいじっていた。


「勘ちゃん着替えるの早いのだ」
「まぁね。どっかに可愛い子いないかな…」
「また変な女捕まえるなよ」
「なんだよその前科があるような言い方」
「常習犯なのだ」


着替えを済ませて外へ出て、廊下へ向かった。隣のクラスのお化け屋敷に入ろうと勘ちゃんに言われたのだが、何が悲しくて男二人でお化け屋敷なんかに入らなきゃならないんだ。俺は光速で拒否した。雷蔵も三郎もなんかうちで働いているみたいだし、八左ヱ門も中等部にいってしまったみたいだし。


「勘ちゃんトイレ行きたい」
「じゃぁ俺ここで待ってるよ」


トイレに入りようを済ませて、鏡を見ながら化粧を落とした。

……そういえば今朝ヤバかったな…。まさか朝からエプロンという最強装備をした鶴谷さんと二人きりで家庭科室とか…。「俺たち結婚してたっけ?」とか思うレベルにはヤバかった……。

鶴谷さんまじ可愛い!!!あのままお持ち帰りしたい!!!!いやランカでもいいけど!!!!!!!!!



「鶴谷さんまじ天使鶴谷さんまじ天使鶴谷さんまじ天使………よし!!!」


何が良しだ俺のバカ!!!!!!

鏡に向かって謎の呪文を唱えて、俺はトイレを出た。



すると横から


「紀子?」


天使の声が。



「…鶴谷さん?」

「あ、久々知くん」



チャイナのまま出歩いちゃダメだよ鶴谷さん!!!!!!!!!!
襲われたらどうするの!!!!!!!!!天使だって自覚してよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

何かを探すようにキョロキョロする鶴谷さん。あれ?勘ちゃんいなくね?



「えっと、あ、そうだ、ねぇこの変でモデルみたいなヤツみなかった?背がこのぐらいでサングラスしててー…」

「…俺今トイレにいたから…。鶴谷さん、勘ちゃん見てない?」

「えっ、尾浜くん?一緒じゃないの?」

「トイレから出てきたらいなくなっちゃってたのだ」



もーーーー!!!待ってるって言ったくせに!!!!!!!





「あ、ごめん」
「俺もなのだ」





するとピロッと二人のケータイが鳴り、ポケットに手を突っ込みケータイを開いた。勘ちゃんからのLINEだ。


























【悪ィ超可愛い子いたからナンパしちゃったテヘペロ☆】

















嫌な予感がして、俺が鶴谷さんに顔を向けると、

鶴谷さんはゆっくり、ケータイの画面をこっちに向けた。




















【ごめん凄いイケメンに声かけられちゃったから遊んでくる】


\(^o^)/

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