「高等部二年一組"AnimeIzm"へようこそいらっしゃーい!」

「"ポクテの丸焼き"おふたつですね少々お待ちください!」

「はい"ハッちんのたこ焼き"おまちどうさまー!」

「すいません今ルナティックなら宣伝に出てますのでー」

「あ、お客さんそれ以上そのキャラdisるとうちのオーナーがキレるんでやめてください」

「途中編入または新入生の方は是非学校案内も聞いて言ってくだささいねー!」


「ランカちゃーん!こっち向いてー!」
「キラッ☆」


正直疲れました。もう帰りたいと思ってます。

こんにちは。このクラスの出し物"AnimeIzm"の総監督、プロデュース、なんか、その他諸々を全力で務めさせていただきました、鶴谷奈緒です。ただ今何処からどう見てもお前らオタクだろってヤツらに囲まれて写真撮られまくってます。正直私はここでこんなことをしている場合じゃない。注文されたもの届けなきゃいけないし注文されたものの在庫をチェックしなければならないというのに貴様らは我先にとカメラ構えやがって!!!!邪魔だどけ!!!!!私はお前らの相手をしている場合じゃない!!!!猫の手も借りたいほどだというのに!!!!!!!!!!


「ごめんこれ代わりに持ってって!!」

「はいよー!!」


お盆に乗せておいた飲み物を私の後ろを通り去る友人に託し、私はそのまま写真撮影に応じた。今朝在庫補充が終わってすぐ、私は一時間以上かけてメイクを施しブスな元のツラを隠した。OK、もう今は完璧にランカです。私が超時空シンデレラだッッッ!!!!

「はいお客さんはもうお値段分撮影しましたのでご退場くださーい」
「退場!!そして退場だ!!」
「ちょ、ちょっと待ってください!!ランカちゃんふぁfdすはwせdfrtgひゅj!!」

「ヒィwwwwwwwwwキモすぎワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

やっぱりマナーを守れないような人は必ずしもいるみたいで、払った分の撮影を終えてもまだ図々しくカメラを構えるお客さんがいるとさっきコス担当の友達から通報があった。たった今私も被害にあったところで、良男のコスをした男子がお客さんを強制退場させてくれた。よし仕事に戻ろう。

でもこればっかりはどうすることもできずにとりあえず手の空いてる人に監視してもらいながらやってもらうしかない……、とか思ってたら案の定手が足りなくなってきてしまった。
接客している人は言われれば学園のパンフを持ってお客さんに学園案内を説明しなきゃいけないし、うーんちょっとこの店やること欲張りすぎたかな。まぁそのおかげで儲かっているみたいだし、満員御礼。でも本当に疲れた。


「奈緒先輩!」
「おう浦風くんこんにちhうわその手に持つカメラから嫌な予感がぷんぷんする」

「立花先輩のお使いです!写真撮らせてください!」
「やっぱりーーーーッッ!!!」


浦風くんは私にお金を渡して、見覚えのある一眼を構えた。これたしか私用にと仙蔵兄ちゃんがバイトの初給料で買ったやつだ。変態もここまでくるとどうしようもねぇなと諦めたのはあのカメラの存在である。お金を貰ってしまったからには仕方ないと、私は控えめににゃんっとポーズをとった。

「奈緒先輩お可愛いですね!」
「ありがとう三反田くんも可愛いよちゅっちゅっ!」

浦風くんと一緒に教室に入ってきた三反田くんが可愛すぎて思わず抱きしめた。のだが、すぐに顔を赤くして離れてしまった。もーーーーこの学年の子純情ばっかりで嫌ッッ!!!本当に可愛くて嫌ッッ!!!いい加減にしてッッッ!!!!藤数してて!!!!!!百合してて!!!!!!!!!!!!!!

仙蔵兄ちゃんのせいで労力を使わせてごめんねと、私はポケットマネーで毛ーキをごちそうした。大丈夫それ髪の毛じゃなくて飴細工だから。それを持って二人は教室を出て行ってしまった。ちらりとケータイを開き中を覗くと、時間はもうすぐ午前と午後と担当を交代する予定時刻だった。力があれば午後も仕事をする予定だったのだが、やっぱりほかの店も見たいし、あぁんそういえば二人とも写真撮れば良かった…。

ケータイを取り出し画面を開くと、やっぱりもうお昼休憩の時間だった。っていうか、午前担当と午後担当の交代時間。私は体力さえあればこのまま午後の仕事もやろうと最初はおもっていたのだが、やっぱり体力は空っぽ状態だし、他の教室も見て回りたかったので交代することにした。
そういえば午前は外部で宣伝予定の久々知くんたちは何処へ。休憩の時間だから戻ってきていいよと伝えるために久々知くんに電話をかけた。……だのが、出なかった。ありゃりゃ、お取込み中かな。っていうか久々知くんに電話かけたの初めてだヤバい緊張した。ヒッヒッフー。


「あ、鉢y……いや不破くん?」


廊下に出てきょろきょろと久々知くんか尾浜くんの影を探したのだが、見当たらず、その代わりに不破くんか鉢屋くんの後ろ姿が目に入った。

「ねぇねぇ尾浜くんか久々知くん見なかった?」

「勘ちゃん……兵助…?」
「そう、二人をみなk」


「それって、こ ん な 顔 の や つ じ ゃ な か っ た … ?」


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


出、出たーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!
よっよおっよっよyyっよよ妖怪のっぺらぼうやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「こらー三郎!!何してんの!!奈緒ちゃん大丈夫!?」

「ふああはふあうっふわうhw不破くんでででっでっでで出た!!出た!!!こんな白昼堂々出た!!!!よっよっよ妖怪だーーーーー!!!!!」
「落ち着いて奈緒ちゃんこれ三郎だから!!!」
「妖怪三郎!?!?!?ウワアァァァアアアアアアーーーーーーッッ!!!鉢屋くんを返せーーーーー!!!」

「鶴谷wwさwwwwんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏臨兵闘者皆陣裂在前……あ…?は、鉢屋くん!?」

「私だよwwwごめんね鶴谷さんwwwwwww」


振り向いたのっぺらぼうは、己の顔を鷲掴むと、バリバリッと音を立てて顔をはがした。真っ白い顔の下から出てきたのは、イケメンでした。

「は!?ほ、本当に鉢屋くん!?」
「三郎こういうの得意だから……」
「私たちのクラスお化け屋敷なんだ。今交代してもらったところでね、その前に折角だから鶴谷さんのところへ来ようと思って…」


そして計画通り声をかけてきたので、そのまま驚かしたのだという。まじ鉢屋くん勘弁してよ私そういうのダメなんだから!!!

「なっ!何をするだァーッ!ゆるさんッ!!」
「ちょwwwごめんってばwwwwwwwwww」

ぐわっと拳を振り上げたのだが、それはむなしくキャッチされてしまった。くそー冷静に考えたらチャイナ服で大絶叫て恥ずかしいにも程があるわ!!!
不破くんはごめんねと言いながらそんな私の頭をよしよしと撫でた。くそっ、イケメンめっ。

「竹谷くんは?」
「ハチなら今中等部の後輩のところに行ってるよ!バンド前に顔出しに行きたいって!」
「あららそっか。じゃぁ二人だけでもうちの店寄ってってよ、二人ならサービスするから!」

「あー……それよりさ、奈緒ちゃん?」
「ん?」



































「うわー!夢みたい!これ本当に着てもいいの!?」
「あ、これ雷蔵の部屋で読んだことある!」

「不破くん鉢屋くんあれやってあれ!!」

不破くんと鉢屋くんは手を取ってくるりと振り向いて


「「どっちが雷蔵くんでしょうかゲーム!」」

と言った。

「ファアアアアアアアアアアーーーーーーーッッッ!!!!!!生きててよかった!!!」


膝から崩れ落ちてジーザス。私は今目の前に天使を降臨させてしまった。ホスト部の制服を二人に来て欲しいとこっそり持ち込んでおいて正解だった。不破くんはどうやら死ぬ前に一度コスプレをしてみたかったのだという。だけど機会がなく今まで断念。そしてついに!!!その夢を!!!今!!!!実現させてしまったのだッッ!!!!!!!!

「お願いしますそのまま接客してくださいオナシャスッッッ!!!!!!」
「お安い御用!」
「どうせ休憩っつってもやることないしね」

二人はそのまままるでここは自分たちの教室ですとでも言うかのようにうちのクラスで接客を始めたwwwwwwちょっとwwwwwwwww他クラスまで巻き込み始めたぞこの店wwwwwwwwwwwヤベェwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


「奈緒ーーーーーーッッ!!!!」
「あ、紀子!来てくれたの!?」

「あらやだ本当に可愛い写真撮らせなさいよちょっとそこのあなたこの娘の撮影代いくらなの早く会計して!!!」

「最高にヤベェやつ来ちゃったンゴ……」


待っていた友人は、スライディングするかのように廊下を滑り、何処からか取り出したカメラを構えて問答無用で写真を撮りはじめてしまった。このクラスに衣装提供をしてくれた紀子大先生だ。

「紀子さん気持ち悪いです…」
「何とでも言いなさい!!!!だからにゃんってポーズをとりなさい!!!さぁ早く!!!!!!」

万札をクラスメイトに叩きつけ、デコレーションされた黒板を背景に私を立たせて、一見モデルの様な女が私を信じられないキモさで写真を撮りはじめた。これをみたクラスメイトは「本日の最優秀ヤバい客が決定しました」という視線を浴びせてくる。ヤバい、本当に紀子キモい。赤茶な髪を巻いてグラサンにミニスカニーハイ。おいっぱいさえあればグラビアかモデルかと勘違いするほどの美貌の持ち主が、蟹股で私を撮るわ撮るわノンストップで撮影してくる。まじキモい。こいつヤバい。


「あ、みんなこれ不審者じゃないから。えっと、衣装提供してくれたレイヤーの紀子です」
「大塚紀子です。衣装、気に入ってもらえているみたいで嬉しいわ」


この発言に、クラスメイトはみんな紀子への視線を変えた。VIP待遇で「こちらへどうぞ!!」と今は使っていない木下先生の椅子を引っ張り出し、サービスですと飲み物まで持ってきやがった。これなんて女王陛下?


「有紀と理沙ならさっきルナティックを見たって走り去っていっちゃったわ」
「ごめんそれうちのクラスメイトだわ」
「あの二人がみつからないから勝手にこっち来ちゃったけど……来て正解ね」

ジュルリと涎を垂らして紀子さんは撮った写真のデータを見返した。キモい。仙蔵兄ちゃんとタメはれそうなぐらいキモい。


「さ、学園案内して頂戴?奈緒なら衣装汚しても怒らないから、その格好のままでいて」
「紀子がいいならいいけど」
「そう?良かったわ、じゃぁ行きましょう!」


紀子は誰彼構わず腕くんじゃう系女子です。私も今絡まれてます。おっぱいに当たらないのが残念です。おっぱいなんてなかっtうわなにするごめ

パンフレットを広げて行き先を確認するが、私はちょっとトイレに行きたくなって紀子には外で待っててもらうことにした。

「ごめんすぐ戻ってくるから」
「じゃぁここで待ってるわ」


トイレにはいって用を済ませ、鏡を見て化粧を直した。


………そういえば、今朝緊張した。まじで緊張した。久々知くんが私のこと好きとかあの二人が言いだすから…!!だからあのあと二人で家庭科室いるのまじで緊張した……!!!!

いやいやいや!!!そんなわけないって解ってるよ!?!?!解ってるけど変な意味でね!?!?!なんかもう変に意識してしまってさぁ!!!!!
解ってるよ!!!!彼には彼氏がいるんだ!!!!!竹久々なんだって解ってるよ!!!!!大丈夫!!!!!万が一久々知くんがノンケだったとしても私の様なキモオタブスを好きになるわけないじゃん!!!!!!万が一ノンケだったらの場合ね!?!?彼ホモだし!!!!!!


「彼はホモ彼はホモ彼はホモ………よし!!!」


鏡に向かって呪文を唱えてトイレを出た。


「お待たせのり……紀子?」


だが、トイレの外には、紀子の姿がなかった。




「…鶴谷さん?」

「あ、久々知くん」


声をかけられ後ろを振り向くと、もう既にクラスTシャツに着替えている久々知くんの姿が。あれ尾浜くんは?一緒じゃないの?尾久々は?



「えっと、あ、そうだ、ねぇこの変でモデルみたいなヤツみなかった?背がこのぐらいでサングラスしててー…」

「…俺今トイレにいたから…。鶴谷さん、勘ちゃん見てない?」

「えっ、尾浜くん?一緒じゃないの?」

「トイレから出てきたらいなくなっちゃってたのだ」


二人でトイレに行ってたの?!?!?!?!?!連れション!?!?!?!?!ついでにナニしてたの!?!?!?!?

二人で相棒が消えてしまったという謎の事態に、久々知くんはうーん?と首をかしげた。あらやだ可愛い。



「あ、ごめん」
「俺もなのだ」


するとピロッと二人のケータイが鳴り、ポケットに手を突っ込みケータイを開いた。紀子からのLINEだ。













【ごめん凄いイケメンに声かけられちゃったから遊んでくる】
















嫌な予感がして、私が久々知くんに顔を向けると、

久々知くんはゆっくり、ケータイの画面をこっちに向けた。













【悪ィ超可愛い子いたからナンパしちゃったテヘペロ☆】



\(^o^)/

41
back next
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -