「久々知くん、今日の放課後お暇?」

「え?」

「いやそのお茶でもどうかなーと思いましてですね」


これは夢か?と勘ちゃんに目線を送ると、勘ちゃんは目頭を押さえて親指を立てた。













「久々知くんの部屋超綺麗。これロココ?クソ高かったでしょ」

「かなりしたねー。もうこれで統一しちゃっていいかなーって。鶴谷さんこそ部屋めっちゃかっこよくない?」

「和室って和室な〜みたいなのないから集めるの苦労したわ。ふなもりとか真美にもらったやつだしねー」


俺はまじで夢でも見ているのでしょうか。何故俺は想い人と二人でスタバなんておしゃれな場所でどうぶつの森なんてやってるんでしょうか。あ、こんにちは。久々知兵助です。

鶴谷さんのお部屋すごい和だ。そして服がPROだ。自分でデザインしたとか言ってたけど鶴谷さんは本当に何者なのだろうか。プロなのか。絵描きさんなのかな。タッチペンでここまで着物表現できるって凄すぎだろ。俺なんか支部のQRコードからとったやつだぞ。レベルが違いすぎるわ。


っていうか!!!!!DSの色が鶴谷さんとお揃いだったんだけど!?!?!?んんんんなにのこ偶然!!!!!!素敵すぎじゃね!?!?


そんなことどうでもいい。どうぶつの森やってる鶴谷さんの可愛さったらない。「あ、柿!もらってもいい!?うちに生えてないの!!」とか言って俺に期待の目を向けるのやめてください可愛くてしょうがないです。柿なんていくらでも持って行っていいよ。もうそんなの全部あげるよ。木ごと持って帰りなよ。いっそうちの村あげるよ。鶴谷さんがうちの村の村長やっていいよ。

左手の位置に置いてあるコーヒーを口に運びながら、俺の村に遊びに来ている鶴谷さんの後を追った。あ、グミちゃん可愛いよね。スナイルはいらん。


「久々知くんこれ掘っていい?化石?」

「あ、それたぶん落とし穴の種だよ」

「なぜwwwwこのような場所にwwwwww」

「こいつ喋り方うざいから嫌いなんだよwwwww」

「ちょwww村長黒すぎワロタwwwwwwwwwwwww」


鶴谷さんはスナイルの目の間でおちょくるようにくるりんぱをやって逃走した。小学生かよwww

このコーヒーは鶴谷さんが奢ってくれたものだ。そもそも今日のこの突然のお茶会には理由があった。その理由とは、文化祭でかなり俺に迷惑をかけたと鶴谷さんが思っていたかららしい。
実行委員長も自分があんなにでしゃばらなければ俺ももっと楽できたでしょごめんね、と鶴谷さんは自転車にまたがりながら俺にそう言った。


鶴谷さんはどれだけいい子なんだろうか。俺はそんなこと一ミリとして気にしていなかったのに。確かに鶴谷さんがあそこまで熱くなっていたから俺も混ざりたいと思って飛び出していったのに。鶴谷さんのせいなんかじゃない。俺が勝手にやったこと。鶴谷さんを恨むなんて論外だ。

だから一度は俺はそのお誘いを断った。


「え、いいよいいよ、本当に俺気にしてないから。大丈夫だよ」
「……そ、そう?」


大丈夫だよと俺が手を振りながらそれを制すと、「兵助」と小声で俺の後頭部に勘ちゃんが話しかけてきた。俺はハッとして勘ちゃんの方に神経を集中させた。




「…今、お前の脳内に直接語りかけている……」



いやめっちゃ後頭部に語りかけてるじゃん。






「…いいか、…鶴谷さんと……お茶に行け……。ここは鶴谷さんの好意に甘えて……お茶に行け…。お前…今日DS持ってただろ………。今日のお昼休憩中……鶴谷さん…どうぶつの森やってたぞ……。

鶴谷さんとお茶をして…通信するんだ……。通信するんだ………!!」



「…ハッ」

「久々知くん?」


幸い鶴谷さんの位置から勘ちゃんは見えていないらしく、勘ちゃんの小声は届いていないようだった。勘ちゃんはそれだけ言い残して俺の背後から忍びのようにスッ…といなくなった。



「でも、鶴谷さんとお茶はしたいかも」



俺の口から出たそのセリフでちょっとバレたかななんて思ってたけど、そんなことはなかったみたいだ。鶴谷さんはじゃぁスタバ行こう!と駐輪場をビシッと指差して教室を出て行った。俺は勘ちゃんに一度抱き着いてから教室を出て行った。今度勘ちゃんに何か奢るね。

自転車にまたがり勘ちゃんからどうぶつの森をやってた鶴谷さんの目撃情報のことを話すと、鶴谷さんはやってたかもwwとバッグをあさってDSを取り出した。驚くことにそれは俺とおそろいの色で、お揃いだ!と俺がバッグから取り出すと、鶴谷さんはパっと笑顔になって本当だー!とはしゃいだ。可愛すぎて鼻血でそうだった。
スタバ行ったら通信しよう!と鶴谷さんと俺は急いで自転車にまたがり校門をくぐって駅へと向かった。道中知らない後輩に名を呼ばれたけど、知らんぷりして俺は自転車をこぎ続けた。呼ばれてるよと鶴谷さんに言われて気が付かなかったふりをしたけれど、そんな知らない後輩に手をふってられるほど俺の思考に余裕はない。鶴谷さんに勘違いされたくないし。

ついたら鶴谷さんは俺に好きなもの奢らせてと財布を取り出した。とりあえず一番好きなコーヒーを奢ってもらったけれど、奢られっぱなしなのはよくないのだ。お礼だからとは言っていたけど俺は何も気にしてない。お礼されるようなこともしてないし。



「あ、ちょっとトイレ行ってきていい?」

「どーぞどーぞ」


俺は財布をポケットに突っ込みDSを置いて席を立った。向かうはレジ。シナモンロールとかでいいかな。鶴谷さんの食い物の好み知らないけど、俺好きだからこれにしよう。シナモン嫌いだったらどうし……いや抹茶にシナモンかけてたしそれはないか。大丈夫か。

シナモンロール指さし二つお願いしますと店員に注文した。ちらりと鶴谷さんに視線を向けると、ちょうどレジに背を向けているような状態の席なのでこっちは見向きもしなかった。



今日の開催セレモニーはやばかった。まだ一般公開じゃない学園内だけのものだったのに、うちのクラスの店は大盛況だった。かなり早い段階で食い物は品切れになるし、後はほとんど写真撮影の対応に忙しかった。鶴谷さんの頼みより俺と勘ちゃんはバンドの衣装のまま、着物で接客をすることになったのだが、それが大うけだったみたいなのだ。バンドやばかったですと声をかけてくれる後輩や先輩や同級生で俺と勘ちゃんは大忙しだった。着物とはいえここは店。とりあえず写真撮影は有料だといったのだが、100円というのが格安なのかみんな惜しむことなく会計に金を払っていった。冷静に考えれば文化祭終わった後ならいくらでも撮れるのになに考えてんだろ。まぁ着物姿は今日までだけど。

鶴谷さんは鶴谷さんであの三年生の先輩方に囲まれて忙しそうだった。忙しそうというか、鬱陶しそうにしてたwwwwwwww
あの先輩方を足蹴にするとかwwwwww鶴谷さん最強すぎwwwwwwwwwwwwwwww

浅水さんが言ってた。「尾浜くんと久々知くんと奈緒だけでいくら稼いでんだろ」と。


ちなみに、俺今年も鶴谷さんにミスコン投票したよ。あたりまえじゃん俺の天使に入れずに誰に入れるっていうんだ。去年のミスコンで優勝した先輩は、ない。ありえない。一回迫られたことあったけど何もときめかなかった。化粧濃いし、香水臭かったし。っていうかあの人七松先輩に遊ばれて捨てられたって噂あったけど、まじなのかな。七松先輩が本気になるとかありえないだろ。七松先輩は鶴谷さんに夢中じゃん。あの化粧で塗り固めた顔に本気になってくれると思ってたなんてめでたい頭してるのだ。

それに比べて鶴谷さんは…。なんで去年ランクインしなかったんだろ…。

っていうか今年も鶴谷さんに通知いってなかったみたいだから、今年もランクインせずか……。開セレであそこまでかましたからちょっと期待してたんだけどなぁ…。

ミスター?ミスターは今年は勘ちゃんに入れたよ。バンドで歌ってる勘ちゃんめっちゃカッコよかったし。いや、初めは立花先輩に入れようと思ってたんだけど……。ほら……ねぇ…。鶴谷さんとのやりとり見て……複雑な、気分に、なったというか………。


おまたせいたしましたと声をかけられ、トレーを持っておれは席に戻った。おかえりと振り向いてくれる鶴谷さんは俺が持ってるものを見てハアァァとため息を吐いた。


「…久々知くんいい加減にしてよイケメンすぎるよ」

「コーヒーを鶴谷さんが奢ってくれたから、これは俺の驕りね」

「久々知くん本当にゲームの人みたいなことするね」

「あら、お嫌い?」

「お好きでござるぅ!!」


ナミさんはショートの方が良かった。ちょっと尾田先生許せない。


「ありがとう!私これ大好きなの!いただきます!」

「どうぞ」


鶴谷さんはシナモンロールが大好きなのかなるほど!!!!!!!!家で練習しよう!!!!!!!!!!!!!!

鶴谷さんは今日はお疲れ様でしたと微笑んでDSの電源を落とし、一緒にシナモンロールを頬張った。ハアァァアアーーーーッッッ!!!!!!!頬張る鶴谷さん可愛いィイイイイイイーーーーーーーー!!!!syさしゃysysyさやyさあやyさyさ写メ撮りたい!!!!!!!!!


一、二口食べ進めると、「なんていうか、」と鶴谷さんが口を開いた。

「今日のあの混み具合からすると、」
「うん、明日はもっと大変だろうね」

「放課後に商品仕越ししといて正解だっただろうね」
「それでも明日売り切れそうなのだ」
「やっぱり同時進行で食べ物作るしかないかな?」
「うーん…それが一番いいだろうね」

余計に作ってしまったかもしれないと思っていた食べ物のメニューも綺麗に完売したので、俺たちは放課後ちょっと残って明日の分のメニューを作った。申し訳なかったけど皆楽しそうにやってて安心した。明日はもっと忙しいぞ気合入れろよ。


「っていうか、本当に巻き込む様な形になっちゃってごめんね…」

「本当に気にしてないって。むしろあぁなったら俺も出るしかないと思ってたぐらいだし!」
「久々知くんいい人やでぇ…」

「それより、俺は鶴谷さんともっと仲良くなれた気がして凄い嬉しいよ」
「そろそろ涙でちゃうからやめてぇ!!」


やめてくれよぉ!!俺そんなこと言われたら嬉しくて泣いちまうよぉおおーー!!


「私も久々知くんと仲良くなれた気がして嬉しいよ!」
「俺的にはめっちゃ仲良くなった気がするよ!」
「本人がそういうなら…!!私は明日から明るく生きていける気がする…!!」


鶴谷さんにこんなあったかい言葉かけてもらえるなんて…。俺の最期も近いな…。


「っていうか、バンドまじでカッコよすぎたんだけど、どういうことなの????なんで前もって千本桜やるって言ってくれなかったの????」
「ごめんwwwすっかり忘れてたwwwwww」

「ありゃー久々知くんもだけど、竹谷くんも尾浜くんも不破くんも鉢屋くんも彼女できるよ。文化祭中なんかい告白をされることか」
「ははは、そりゃないよ」
「いーや私が保証する。みんな絶対文化祭中に彼女出来るね」

「勘ちゃんは絶対にないよ。不特定多数の子と遊んでる方が好きだって言ってたし」
「なんでだろう…。凄い腹立つ発言なのに尾浜くんなら許せちゃう不思議……。」


確かに。「勘ちゃんなら仕方ない」で片づけられる不思議。

っていうか、俺は俺で鶴谷さんにも恋人が出来るんじゃないのかって気が気じゃないんですけどね。今日の鶴谷さんまじで可愛かったし(※毎日可愛い)。文化祭終わったら一人や二人から告白されそうな気がする…。

いやまぁぶっちゃけた話まだ八左ヱ門も危惧しっぱなしですけどね。「ドラムの竹谷くんまじやばかった」と鶴谷さんが言ってたの聞いてちょっとビビった。やっぱり八左ヱ門のこと好きなのかなぁとか。

いやそんなことより俺バンド終わった後鶴谷さんから「結婚してください」って言われたんだよ!!!!!!!!!!!!!!ビックリしすぎて心臓止まるかと思ったわ!!!!!!!!!!!!
むしろOKするところだったわ!!!!!!!!!!!!!!!!やめてくれよそういうの心臓に悪いから!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

チクショーーーー俺は本気ですとでもいえばよかったわクソーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!


「…むしろ、鶴谷さんは?」

「へ?」
「彼氏とか、欲しいとか思わないの?」
「私?んー、そうだね欲しいとか思ったことないなぁ。どうせこんな趣味バレたらキモがられるだろうしwwwww」


まぁそうだよな。理解してくれる人ならいいけど、ホモとか絶対普通の男の人って嫌そうだしな。









「久々知くんみたいに私の趣味理解してくれるような、同じ趣味もった人がいいねぇ」







!?!?!?!?!??!?!!??!?!?!?!?!??!?!??!??!?!





「あ、の、さぁ、」
「んー?」

「…あ、いや、なんでもない」
「どうした久々知くん…。」



俺の心拍数で遊ぶのはやめてください……。




「あ!そうだ!久々知くんもう少ししたら誕生日なんだって!?」

「え!?」
「竹谷くんから聞いたよー。文化祭終わった後なんだってね?私もプレゼント用意するから!なにがいい!?何かほしいものない!?」


すると鶴谷さんは突然、俺の誕生日の話をし始めた。なぜ俺の誕生日なんて知っているのかと疑問になったのだが、その後すぐに出てきた八左ヱ門の名前。なるほど、八左ヱ門から聞いたのか。それなら仕方ない。

ビビッたなんで俺の誕生日なんて知ってんだと思ったわ。あ、俺鶴谷さんの誕生日知らないなぁ。今度聞こう。


「ありがとう、でも…俺別になにもいらないよ?」
「そうおっしゃらずに。めでたいことなんですから」

「鶴谷さんが祝ってくれるだけで嬉しいよ?」
「今回ばかりはその甘言に騙されないぞ!!!さぁ欲しいものを私にねだるんだッッッ!!!!」


鶴谷さんが俺の誕生日を知ってくれているだけで嬉しいのに、まさか誕生日プレゼントまでくれるとは。

欲しいものをねだれと言われても、これといったものは何も思いつかない。なんだろうなぁ。そんな高いものねだってもなぁ。っていうかそういう気持ちだけで嬉しいし………。


敷いて言うなら鶴谷さんが欲しいです!!!!!!!!!!!!!!鶴谷さんという存在が欲しいです!!!!!!!!!
俺にください!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!







……あ、






「じゃぁ…」

「wktk」






こういうのは、ありだろうか。
















「鶴谷さんの一日、俺にくれない?」












「……What?」



この返答は予想外だったのか、鶴谷さんは真顔で、そう、つぶやきストローから口を離して、「え、え、」とごもりはじめた。




「わ、私の一日?」

「あ、い、いや、む、無理ならいいんだけど、その、鶴谷さんと、どっか遊びに行きたいなーって。こういう趣味理解してくれる人あんまいないし、一日中喋りながらどっか行きたいなーって思ったんだけど……」


バァァァアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーー口に出してみたはいいけどめっちゃ緊張してるううぅぅぅぅうううううアァァァアアーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
無理ですとか言われたらどうしようーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!!!




「…ダメ?」

「んんんん喜んでェエエエエーーーーッッッ!!!!」


……なん…だと…!?!?!?!?!??



「…え、え?ほ、本当にいいの?」
「久々知くんがそう仰るなら私の一日や二日喜んで差し出しますわ!!!」


いつにしようか!!と鶴谷さんは手帳をバッグから取り出してシフト表を開いた。ままっまままmっまままじでかぁあぁぁああーーーー!!!言ってみるもんだーーーー!!!!!!!!!!!!!!



「じゃぁー…此処は?」

「土曜?全然余裕だよ」

「じゃぁ此処にしよう?」

「オッケー!久々知くんDAYって書き込んどくね!!!」


鶴谷さんはボールペンをノックし赤い先を出して、幸村の絵を描き吹き出しに「久々知くんと遊ぶでござる」と書き込んだ。


「上w手wすwぎwwwwww鶴谷さん俺の手帳にもそれ描いてwwwwwwwwww」
「喜んで!!!!」

「…ちょ!!くそって!!!」
「気にしない気にしない」

クソ鶴谷と遊ぶと描かれてしまったけど、鶴谷さんの絵が上手すぎてワロタ。なにこれやっぱり上手すぎ。



「どうしよう!どこ行こうか!」
「とはいったものの、どこでもいいなぁ…」
「じゃぁこれは文化祭終わってから考えようか?」

「そうだね、そうしよう!…いや本当にいいの?」
「なにを今更!!私も久々知くんとでかけたいよ!!」


八左ヱ門聞こえてるかーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?!??
俺ついに鶴谷さんとデートできるようになったみたいだぞーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

半年前の俺は話しかけることすらできなかったのに今は二人で出かける約束までできるようになったzこksだjでゃうhでゅwせdfrtgyふjき!!!!!!!!!!!!!!!!


「そうだ、竹谷くんとかも誘う?」


「えっ」
「いやほら私みたいなんと二人きりより人数多い方が楽しくない?」
「あ、う、うん、そうだね。そういわれれば、そっちの方が」


「あ、いや、でも一日中ホモの話するんだったら二人のほうがいいかwwww気がつかなくてごめんwwwwwwwwwwwww」

「そうだね!俺そっちの方が安心するわ!!」
「ごめんねーーーwwwwwwwwwwwwwwwww」


危ねぇ……!!!!八左ヱ門も来ることになるところだった………!!!




……でも、もしかして鶴谷さんは八左ヱ門のこと誘いたかったのかな…。




あー、もう!!!!鶴谷さん八左ヱ門こと好きなの!?!?!?好きならもう俺にこんなお茶誘ったりとかデートおkしたりとか期待させるようなことしないでよ!!!!!!







……って言える度胸があれば…。









…………うん、やっぱり、早く気持ち伝えておこう。ダメでもいいや。早くこのもやもやから解放されたい。俺の気持ち知ってほしい。

文化祭終わったらにしよう。今のこの関係もうちょっと味わってから、それから、俺の気持ち聞いてもらおう。




「鶴谷さん」

「はい」




どうか、どうか話だけでもいいです。俺の話、聞いてください。

漢久々知兵助、勝負に出る。





「あのさ、文化祭終わったらさ、」

「うんうん」

「俺、鶴谷さんに聞いてほしい話があるんだ」

「私?」

「そう。鶴谷さん」

「い、今じゃなくて?文化祭終わってから?」

「そう」

「うん、いいよ…。…………………なに?」

「それ言っちゃダメじゃんwwwww」

「めっちゃ気になるンゴwwwwwwwwww」


鶴谷さんは笑ってるけど、俺からしてみればかなり重大なお話です。

もしかしたら、これを境にもう二度と喋ることすら出来なくなるかもしれない。気まずくなって顔を合わすことすらもうできなくなるかもしれない。

でもまぁ、言わずに後悔するよりは言って後悔したい。上手くいくのも上手くいかないのも五分五分。正直八左ヱ門のこともあるし、上手くいく確率は少ない。と、思ってる。っていうかむしろあの先輩方の中に鶴谷さんの好きな相手がいるのかもしれない。

でも、早くこの気持ちだけは聞いてほしい。



「おk、文化祭早く終われ」

「いやいやいや」


せめて文化祭が終わるまでっていうのは俺の我儘かもしれないけど、これで最後。伸ばすのはもうやめよう。文化祭が終わったら、どうせ実行委員という俺たちのつながりもなくなる。

だったら、その前に。


トレーをかたして席を立ち、俺と鶴谷さんは店を出た。暗いから家まで送って行くと言ったのだが、鶴谷さんはどうやらこの後バイト先に用事があるみたいで、俺たちはそこで別れることになった。



「じゃ、明日の一般公開も気合入れて頑張ろうね!!」

「うん!明日もよろしくね!」

「こっちこそ!!じゃ!バイバイ!また明日!」

「今日は楽しかったよ!!誘ってくれてありがとう!!また明日ね!!」

「ばいばーい!」






明日で最後。明日の文化祭を最後に、俺たちの繋がりはなくなる。

だったらせめて、明日を全力で楽しもう。

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