文化祭初日の開セレの日に一般のお客さんは来ない。今日は学園内の生徒だけで楽しむ日なのだ。開セレの服装は決められていないので、クラスTシャツを着ていたり、制服だったり、私のようにコスプレしていても怒られない。あ、そうそう、うちのクラスのクラスTシャツは真美がデザインしました。あいつこういうカッコイイデザインめっちゃ上手い。腹立つ。裏山。
壇上に出て宣伝する子以外はみんなクラスTシャツを着て、摂津のくんが売っていたペンライトを持って楽しんでいた。
今私を含むコスプレをしているクラスメイトは舞台袖で待機してます。何故ってそろそろ我々のクラスの出番だからですよ!!!!!!!
喋っている間のBGMとしてこれをかけてーと曲を指示して音響担当をしている留兄ちゃんに音楽プレイヤーを渡した。
「お、奈緒今日めちゃめちゃ可愛いな」
「留兄ちゃんに言われるとめっちゃ嬉しい!!!!ほかの変態どもと大違い!!!!!!!!」
「本当に可愛いぞ。あとで写真撮らせてくれよ」
「喜んで!!!」
留兄ちゃんに頭を撫でられた。めっちゃ嬉しい。のだが、
「貴様!」
「痛ェ!」
何故か般若のような顔をした仙蔵兄ちゃんがその留兄ちゃんの手をバシンッ!と叩き落した。
「私の可愛い奈緒に触れるな!!!そして何私の奈緒の前でだけ格好つけている留三郎!!いつも奈緒ハァハァとかほざいているくせに!!奈緒はやらんぞ!!」
「んんんんなこと言ってねぇだろ!!っていうかその"私の"っていうのやめろ!!」
「やかましい!!何がめちゃめちゃ可愛いだ食満ち悪い!!!奈緒が可愛い事なぞ私は17年前から既に知っていたわ!!!!」
「気持ち悪ィぞ仙蔵」
「気持ち悪いよ仙蔵兄ちゃん」
「奈緒ーーーッッ!!!」
私が仙蔵兄ちゃんと親戚だということはやはりあまり知られていないらしく、舞台袖でこんなやりとりをしていたからかクラスメイトが「なにこの光景」とでも言いたそうな目でこっちを見ていたこっち見んな。
あれ親戚の兄なのと説明するとえーっ!と驚いてみんな口元を隠したり目を見開いたりラジバンダリ。久々知くんは知っていたからか苦笑いしていたけど尾浜くんは口をあんぐりあけて「まじか」とつぶやいていた。
「奈緒!ランカなんだ!可愛いよ!」
「伊作兄ちゃん!あれ、何やってんの実行委員じゃないよね?」
「僕は留三郎の手伝いで音響やってんだ!だから此処にいるの」
「そっか、伊作兄ちゃん久しぶb痛ァ!!」
「奈緒!可愛いぞ奈緒!なんて可愛いんだ奈緒!」
「潮江先輩痛いです痛いですぐぇぇえ苦しい苦しい死ぬ死ぬ死ぬ!!!!」
「その呼び方はやめろバカタレ!!!なんで俺だけ先輩呼びなんだ!!」
「お兄ちゃんって呼べるようなwwwwお顔ではwwww無いのでwwwwwブフォォwwwwwwwwww」
「奈緒…!?」
「何故私の奈緒を抱きしめている!?文次郎離れろ!!貴様殺されたいのか!!」
「お前の血がこいつに混じってるかと思うと不憫でならねぇよ!!」
「何を!?もう一度言ってみろ!!!」
…ここにこへ兄と長次兄ちゃんいなくて本当によかったと思ってます。多分ここにあの二人も居たら普通に殴り合いの喧嘩になってたと思う。とんでもねぇシスコン集団。
私の人生は仙蔵兄ちゃんと遊んでいたことによって大きく狂ったのかもしれない。あの時仙蔵兄ちゃんの友達であるこの先輩がたに逢っていなければ私の人生はもっと穏やかになっていたかもしれない。今日みたいに謎の先輩方に恨まれることも無かったかもしれない…。好いていてくれているのは嬉しいけど…これはあまりにもカオスでござる……ワロエナイ…。
まぁべつにそのおかげでホモ充できてんだけどね!?!?!?!?!?
今目の前で文仙見れてるし、今音響室で伊留してるだろうしね!?!?!?!おいしいね!?!?!?!?!?多分こんなんで興奮してんの私だけだろうけどね!?!?!?!?!
学園の要注意人物やイケメン組、昨年度ミスコンのミスター一位を「お兄ちゃん」呼びしている私は一体どういう存在なのかと、舞台袖に居るクラスメイトや他のクラスの子達が困惑の視線を向けてきていた。
知り合いです。そんでこいつらはただのホモです。
「奈緒、お前のクラスの番だ!行け!頑張れよ!」
「ダンケ!行ってきまーす!」
潮江先輩を締め上げている仙蔵兄ちゃんがそう言ったので、私はクラスメイトに行くぞー!と声をかけて舞台上に上がった。
舞台に上がると、やはりこの学園の生徒の数は尋常では無いほどの多さなのだと実感した。BGMがかかり、生徒の席がざわざわと騒ぎ始めた。それはそうだ、突然こんなクオリティの高いコスプレ集団が出てきては何事か理解できるまで時間がかかるだろう。
そしてなんとか脳内整理が出来てきこの完成度に興奮しているのか、オタクさんや自称オタクさんたちは舞台上に居るコスプレをしている私たちのキャラの名前を大声で叫び始めた。
ちょwwwwwwwwアニメをwww知らんwwww一般人がwwww困惑しはじめてwwwwワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
《 みんな!抱きしめて!銀河の〜〜〜? 》
\はちぇまれぇー!/
ブッホwwwwwwwwwwwwwwwww何このよく訓練された生徒たちwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
マイクを持ってそう挨拶すると、ランカ・リーというキャラを知っている生徒がウォオオオ!と野太い声を出しペンライトをブンブンと振り回した。うほwwwwwwwwライブみたいでワロタwwwwwwwwwwww
《 えー、改めましてこんにちは!高等部二年一組、"喫茶AnimeIzm"でーす!これでも喫茶店を経営する予定のクラスです!私たちのクラスは皆さんに、此処にいるコスプレしてる私たちが美味しいお菓子やお茶を提供しながら、二次元の話に華を咲かせたりして、さらに新入生の皆さんには学校案内もしてしまおうという色々ぶちこみすぎたクラスでーす! 》
やっほーと手を振りながらそう私がマイクで話しながら舞台袖に目線を向けると、仙蔵兄ちゃんが倒れていて潮江先輩に抱えられて運ばれていた。文仙…!?舞台袖で文仙してる…だと…!?
《 じゃぁうちのクラスのコスプレ代表者に御挨拶願います!あの人の名前呼んでみましょー!せーの! 》
そう言い久々知くんを指差すと、
\バニーちゃーん!!/
そう、生徒席が一体となって叫んだ。女率が高い。
お前ら全員腐女子だろ!!!!!!!!!!!!!絶対そうだろ!!!!!!!!!!後で絶対店来いよ!!!!!!!今顔覚えたからな!!!!!!!!!!!!!!!!
「僕はバニーじゃない!バーナビーです!」
くwwwwwくwwwwwwwwwwちwwwwwwwwwwwくwwwwwwwwwwwんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
《 タイガー&バニーの、文化祭実行委員の方、バーナビーです!……こんにちは。…えっと、是非、遊びに来てください 》
バニーちゃんテンション低すぎクソワロンヌwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ここでバニーちゃんを入れたのは大成功だったようで、タイバニの知名度も良かったのか、思った異常に生徒席がわいた。良かった良かった。
大成功を収めながら私たちは入ってきた方向とは逆の舞台袖に退場するように指示された。私たちがそっち方向へ足をすすめると、私は尾浜くんに腕を引っ張られ入ってきた方向と同じ方向へと連れて行かれた。どうやらこれから着替えるのでウィッグのはずし方と特殊なことになってる服の脱ぎ方を教えて欲しいらしい。そうだったこれから有志バンドだった。潮江先輩が此処にいたのは重い楽器を運んできたからだ。そうだったすっかり忘れてた。
「ねぇ鶴谷さん!」
「お!なぁに久々知くん!」
「応援しててね!俺絶対間違えないから!」
「もちろんだとも!!めっちゃペンライト振るから!!頑張ってね!!」
私はグッと久々知くんの手を握った。バニーちゃんなら出来るよ!!やれば出来る24歳児だもんね!!頑張ってね!!!!!!
「鶴谷さん俺も俺も!」
「うおおお尾浜くんももちろん頑張れ!!!」
尾浜くんとハイタッチを交わして、私は自分のクラスの席についた。隣の席…あぁそうだここ久々知くんの席だった。忘れてた忘れてた。
しばらく他の有志団体が何個も何個も続いた。ダンスだったりバンドだったりユニットを組んで歌ったり。時には漫才やコントなんてのもあったけど、やっぱり大川の生徒だからか、全員が全員クオリティがめちゃめちゃ高かった。見てるこっちもかなり楽しい。
バンドが何個か続いて、浦風くんのアナウンスが入った。
《 続きましては、高等部2年生の有志バンド、"勘ちゃんバンド"の登場です 》
ヴォベンヌwwwwwwwwwwwwこのやる気のないチーム名wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwどう考えても尾浜くんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
うちのクラスや他のクラスは其れを察したのか、みんなが一斉にブホッと吹き出して笑ったwwwwww
そして私たちの予想は大正解だったらしく、舞台袖からわらわら手を振りながら出てきたのはあのイケメン集団で………
ハァアアアアアアーーーーッッッ!?!?!?!?!?!何で和服なん!?!?!?!?なんで着物なん!?!?!?!?!?ちょっとそれいおえうhづいさくぇyぐwせdrftgイケメンすぎやしませんこと!?!?!?!?!?お姉さん聞いてませんけど!?!?!?!?
何を隠そう、私は和装がツボの腐女子です。着物とか、ヤバいんですって。え、ちょっと待って、これは卑怯すぎるwwwwwwwwwwwカッコいいにも程があるwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
《 いぇーいこんちはー☆勘ちゃんでーす☆ 》
尾浜くんが着物の合わせに手を突っ込んでマイクを持ちながらそう挨拶すると、やっぱりこの集団の人気は凄いのか、同学年、先輩、後輩、各方向の席からみんなの名前を呼ぶ声が上がりまくっていた。ちょっとみんなうるさいよ!!!!!!!!うちのクラスのイケメンが挨拶してんだから静かに!!!!!!!!!!
挨拶している間にみんなが各々の楽器をセットして、音を確めはじめた。
《 えーっと、まずは、みんなもう知ってるかもしれないけど、今回の大川祭のポスター見たでしょ?実はあれ俺達がモデルに描かれているんですよ。あのポスター描いたのうちのクラスの鶴谷さんって子で……あ、ほら!さっきのランカちゃん!凄いでしょ!鶴谷さーん! 》
舞台上から尾浜くんがこっちに向かって手をぶんぶん手をふりまくったので、私も負けじと椅子に立ち上がり
「尾浜くーん!!ヤバイよかっこいいよ!!!みんな頑張ってねー!!!イケメェェエエン!!!」
《 ありがとー!応援しててねー!! 》
腕がぶちぎれるんじゃねぇかと言うほどにペンライトをぶんぶん振り回した。それに答えてくれるように尾浜くんをはじめとする鉢屋くんや不和くんや竹谷くんやバnあ、久々知くんが手をふりまくってくれた。
これwwwww絶対過激派にwwwwwwww殺されますよねwwwwwwwwwwwwwww
いや、後悔は無い(キリッ
《 てなわけで、俺達も鶴谷さんのポスターに負けないぐらい気合入れてやりたいと思うのでー、応援よろしくねー!この歌知ってる人いたら一緒に歌ってね!俺歌詞間違えちゃうかもしれないから! 》
冗談まじりにそう言って尾浜くんはマイクスタンドをはじに運んでセンターにたった。いい?とOKサインをみんなに出すと、うんとみんな小さくうなずいた。ちょっと待ってよイケメンにも程があるって。私そろそろ死にそうだよ。辛抱できずに私は真美と京子の横に移動した。どうしようイケメンすぎると三人でわいわいしていると、留兄ちゃんがいい仕事をし始めて照明が色を変えた。
竹谷くんがドラムのスティックを三回叩き、スピーカーから流れる楽器の爆音は、私も京子も真美も興奮するには十分なほどの音だった。聞き覚えがあるというか、大好きすぎる。そして何故彼らがこの曲を選んだのかと考えたところ、きっとそれは久々知くんに原因があることだろうと三人は予想した。
ぇぇぇえええ嘘でしょ!?!?!まじでそれ演奏するの!?!?!?!?!?
どんだけ無駄な才能隠してたの!?!?!?!?!?!?うぇdrftgyふじこl;p!?!?!?!?!?!?!?!
綺麗な久々知くんのキーボードの旋律がリードしながらドラムやベースやギターの音がそれにあわせて音楽を作っていった。
卑怯!!!!!これは惚れてしまってもしょうがないよね!!!!!!ごめんね竹谷くんちょっとキーボードやってる久々知くんカッコよくてしょうがねぇわ!!!!!!!!!!!!!!これは卑怯!!!!!!!!!過激派連中に加わってしまいそう私!!!!!!!
っていうかみんなイケメェエエェエエーーーーンッッッ!!!!!!!!!
前奏が終わり、尾浜くんは大きく息を吸い込んだ。
それはなんとも信じられないような声量、声域、歌唱力、そして何よりプロでもないのにこの演奏力。ちょっと意味が解らない。あの人たちは何??????うちの学園のアイドルじゃなかったの??????プロなの??????ジャ忍ズなの?????????なんというか体育館全体でプロレベルの「弾いてみた」を聞いてる気分。
っていうか千本桜って何?????なんであれ演奏できるの????っていうかなんでwwwww尾浜くんこれ歌ってんのwwwwww誰の影響でボカロとか聞いてんのwwwwwwwwwwボカロ好きには悪い言い方かもしれんけどwwwwwww尾浜くん一般人じゃろwwwwwwwwwwwwwwwww
「真美ちゃんどうしよちょっと意味解んない!!!!!!!どうしよう勘ちゃんバンドクッッッソカッコいい!!!ヲタ芸うったほうがいいのかな!?!??!?!?!」
「ランカちゃんの衣装でヲタ芸はやめろ!!そんなランカちゃん見たくない!!!」
「いつヲタ芸うつの?」
「今でしょ!!!!!!!!」
「ああああああああああ突撃いいいいいいい!!!!!」
借りもの衣装だしから今日はこれで接客しようと思ってたからあまり動きたくなかったんだけどもう無理!!!!こんなの聞かされて踊らないわけがない!!!!!!!
「おい奈緒!!誰がランカ様の格好でヲタ芸うてといった!!!」
「真美ちゃん!!!」
「それなら致し方ない!!!俺も踊るわ!!!!!!!」
クラスメイトでヲタ芸うってるやつがいるwwwwwと指を差されたのだが、他のクラスの根暗、アイドルヲタも、私たちの突然のヲタ芸を見て摂津のくんから買ったであろうペンライトをぶんぶん振り回してステージ前は異様な雰囲気に包まれていた。盛り上がってるのが、勘ちゃんバンドの歌と演奏なのか、私たちのヲタ芸なのかぶっちゃけよくわからないレベルである。
ただ一つ言えることとしては、ヲタ芸をうっている女子は私と真美と京子の三人であるということだけだ。
っていうか久々知くんピアノ上手すぎじゃね?!!?!??!?たまに集会で校歌の伴奏してるの見てたけどこれ上手いとかそういうレベルじゃないよね?!?!?!英才教育なの!??!何歳からピアノ弾いて何歳から弾いてみたやってんの!?!?!??!間奏のピアノって人間業じゃないような楽譜だったよね!??!人間じゃないの!?!?
最後の決め台詞で天高らかに指で撃ち抜いたように尾浜くんは手を挙げ、見事に勘ちゃんバンドの演奏は終了した。客席は完全にスタンディングオベーション状態である。恐らくこの客の中に聞いたことのない曲だとお思いの方もおられるだろうに。それなのに、この盛り上がりよう。尾浜くんたちの人徳と技の成せるわざなんだろうなぁと、
「うわああああ鶴谷どうした!?」
「おい戸塚が倒れたぞ!!」
「浅水ゥウウウウ!??!?」
ペンライトを落とし膝から崩れ落ちて、私達は体育館の床に倒れて思ったのであった。
「なぁ京子、真美よ…」
「なんじゃらほい…」
「勘ちゃんバンドのファンクラブ入ろうぜ…」
「俺鉢雷担な」
「おれ尾鉢担」
「氏ねwwwwww」