キャップを深く被ってネクタイを締めさせ、少しはみ出ていたラインをティッシュでふき取りチークを軽く叩く。

うっほwwwwwwwww尾浜くん素敵すぎワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
こんなにおじさんの服wwwww着こなせる人wwwwwwwwwwwwwwそうそういねぇwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

尾浜くんて細いけど肩ガッシリしてるし背高いけどヒョロヒョロじゃなくて腹筋あるし太ももシュッとしてるし、


いやらしいッッ!!!!!!!!!!!!!!!


そのいやらしいお体で何人の女性と男性と口説いてきたの!?!?!?!?!?!?


尾浜くんのドレッドをネットにしまってカポッとウィッグをかぶせる。

ギャボォオオオオオオオオオオ素敵ィイイイーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!

「はい尾浜くん終了!素敵!カッコイイ!最高!さすが私!はい笑って!はいチーズ!」
「いぇーい☆」

パシャリと軽い音が鳴り、私は満足して画面を消してポケットにケータイをしまった。


「はい尾浜くん終了!最後はー?」
「俺。よろしくね」
「久々知くんか!じゃー、これ首に巻いて!んで目ぇつぶって上向いてて!」
「わかった」

「京子後何分!?」
「人間の寿命はどうせ短い。死に急ぐ必要もなかろう」
「テメェわりとまじで殺すぞ」

ガチャガチャとメイクボックスをあさりファンデ、ライナー、チーク、シャドウをひっくり返して机の上にだし、久々知くんのメイクに取り掛かった。
京子が答えてくれなかったのでケータイを取り出し一瞬だけ画面をつける。アッー!もう時間ないがな!

わたわたと手を動かしながら久々知くんの前髪をピンで止めてデコを出して下地を塗る。久々知くん予想通りに髪ふわふわ!!!素敵!!!ウホホホッホッホーッ!!!!シャンプー何使ってんの!?!?!?竹谷くんにちょっとキューティクルわけてあげな!?!?!?!?!?


「アッー!久々知くんちょっと今動かないで目つぶってて上向いてて動かないで!!」
「は、はい」


何故今こんなにせかされているのかというと、開催セレモニーで1クラスずつ壇上に上がり「こんな店やってまーす☆」という宣伝をするというのをさっき(前)文化祭実行委員から聞いたのだ。てっきり私も知っているものだと思って教えてくれなかったらしい。

そういえば去年も一昨年も開セレでそんなことしてたなぁ。私は舞台の下で見てただけだけど、そうだ私は今期の文化祭実行委員だった。久々知くんと急遽やることになったんだった。準備楽しくてそんなことすっかり忘れてたンゴ。
文化祭実行委員を含むクラスの何人かで宣伝をしなければならないらしく、とりあえず尾浜くんと久々知くんは絶対。後女子も人前に出てもいいという子の挙手制で何人か選んだ。

いや、このクラス凄い。なんか男子も女子もかなりのりきになっていているみたいです。台詞も覚えてきてるし、決めポーズとか研究したとかいってるし、凄い子なんてアニメ一気にDVD借りて見たとか漫画全部読んだいうヤツもいた。お前良くDVD借りれたな今度俺にも又貸ししろ。

仙蔵兄ちゃんの情報によると今年の文化祭は去年一昨年に比べてかなり客の人数が跳ね上がるらしい。どうやら学園に文化祭の日程とか行き方とか、一般人でも入れるのかとかいう問い合わせが例年よりかなり大量に来ているという。事務員の小松田さんがそれらの情報を間違って伝えていなければ、客数に期待はできるらしい。

ポスターのおかげだと言われたのはかなり嬉しいけど、抱きつかれそうになったので鳩尾に一発入れた。いい笑顔だった。気持ち悪い。


あ、ちなみに今は完全に廊下側の窓締め切ってカーテンしてます。開セレで出るとはいえ今廊下にいっぱい人来られても困るしね。



それにしてもこのクラスをこんなにしてしまって………。奈緒ちゃんはなんて罪深いんでしょうか秀吉様……。いや、そんなことない。罪なんてない。

俺は「正しい」と思ったからやったんだ…後悔はない。こんな世界とはいえ、俺は俺の信じられる道を歩いていたい!

そうだ!これは俺の単独行動ではない!久々知くんだって共犯だし、京子だって真美だって共犯だ!俺だけじゃない!国家ぐるみの犯罪は罪にならないって何処かのデデデ大王が言ってたわ!!


「あ!!久々知くんと尾浜くんって有志バンドの発表あるんだっけ!?メイクしちゃまずかった!?」

「いや大丈夫。舞台裏で衣装着替えられるのだ」
「メイクはこのまんまでも別に違和感ないと思うし!さすがにズラはとるけど、大丈夫!心配しないで!」
「ごめんねー後先考えないで行動してて…」


ぱふぱふとファンデを叩いて隣に座る尾浜くんたちに声をかけると、尾浜くんは大きな紙袋を持ってきた。どうやら中身はバンド用の衣装らしい。兵助のここ置いておくぞと久々知くんが言うと、メイク中で口が開けないので「んー」とつぶやいた。

なんかこれあれね!?!?!?!?久々知くんがキキキキキキスする直前のお顔拝見しているわけですよね!?!?!?!?ねぇねぇ竹谷くんごめんなさいねこういう彼氏しか見れないような貴重な顔みてしまってごめんなさいね!?!?!?!?!?!?!?
っていうか久々知くん睫毛長ぇし肌すべすべだし目おっきいし眉毛めっちゃ整ってるし意味解んねぇなおい!!!!!!女子力高ぇよクソが!!!!!!!!!!!!羨ましい!!!!!!!!!


…なんかマスカラもする必要ないしそんなにファンデもいらんだろうし……。綺麗な顔してんなぁー……。


はい終わり!と首のタオルを取ってヘアピンを取り外して髪をブラシでとかす。ウィッグじゃなくて久々知くんの地毛でいけそう。あのバニーちゃんの髪型。でもバンドやるもんね。ウィッグにしておこうか。
ネットをかぶせてウィッグを取り出してかぽりとかぶせた。


…これなんて実写化?


「久々知くんってさぁ、改めて見ると本当に女の子の憧れ!って顔してるよねぇ」
「…えっ」
「あ、別に悪口じゃなくてね?肌綺麗だし睫毛長いし髪ふわふわだし、凄い羨ましい」
「…そう、かな…」
「うん、めっちゃ綺麗。あ!気ぃ悪くしたらごめんね…!?」

「いや、嬉しいよありがとう。でも鶴谷さんだって肌凄く綺麗だし、髪なんてサラサラじゃん。羨ましい」
「久々知くんそういうのは好きな女の子に言ってあげてwwwwwwww私そういうの免疫ないからドキドキするwwwwwwwwwwwwwwwwww」


なんて笑顔で言うもんだから思わずときめいてしまったわフォカヌポォwwwwwwwwwwwwwwwやめてやめてそういう学園ハンサムやめてwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
私そういうの弱いんですからwwwwwwwww心臓バックバクしちゃうわwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww乙女ゲームとかwwwww多分ドキドキで壊れてしまうからやったことないレベルにはそういうの弱いんだからwwwwwwwwwwwwwwww

髪のサラサラは仙蔵兄ちゃんの遺伝だろうか。いや仙蔵兄ちゃんのっていうか、母方の。

仙蔵兄ちゃんの遺伝とかやだ……気持ち悪い…。

仙蔵兄ちゃんの遺伝子とか…いらない……。


「その美肌の秘訣は何?」
「……豆腐かな…」
「あぁ、久々知くん大好きだもんねぇ」
「そりゃもう毎日食ってるよ」
「ふーん、私も食べようかな。近所に豆乳無料でくれる豆腐屋さんがあってさぁ」
「へぇ!」
「よし、私もこれから毎日豆腐を摂取することを決めた」


肌が久々知くんのようにすべすべになるのなら毎日でも食う。決めた。


「はい全員終了!!お疲れ様私!!!」
「あとは奈緒だけー?」
「That's right!其処をどけ!俺が着替えるスペースを寄越せ!!!!」

「俺がどくのは道にウンコが落ちている時だけだぜ。そういや奈緒って何着るの?」
「見てからのお楽しみだドゥワハハハ!!!」


星間飛行の衣装を持って、カーテンで区切られた着替えスペースへ入る。汗でちょっと張り付く制服を一気に脱ぎ捨て星間飛行の衣装を着用した。お久しぶりですこの衣装…。またお世話になる日が来るとは…(※1万打企画参照)。

急いで紀子直伝メイクをすませてウィッグを被り上履きに足を通した。うーん、ここまで着たら靴まで揃えたいです先生。いや、移動するだけだから上履きでいいか。



















「私の歌を聴けぇぇぇえええ!!」




















フハハハハ!と悪役が登場するように高笑いしてカーテンを開けると、予想外に好評だったらしく、教室がウオオオとわいた。あ、これシェリルの台詞だったわテヘペロ。

教室わきすぎてコスイベ会場みたいワロタwwwwwwwwwwwwwwwwww


「あばばばば!!奈緒の星間飛行が生で見れるだなんて感激でござる!!!!!!」
「我が生涯に一片の悔い無し!!!!」
「介錯いたす!!!!!!!!」
「メメタァ」

パンチをするふりをすると「その格好で蟹股すんじゃねぇよ」と怒られた。正直すまんかった。



「鶴谷さん…」

「?…ハッ!久々知くん!?ごごごごごめんねもしかしてマクロス大好きだった!?ランカちゃん派だった!?!?お目汚ししてごめんね!?!?!?」


声をかけられ後ろを振り向くと、物凄い真顔の久々知王子が立っていらっしゃった。まずい。もしかして「俺の嫁を汚すんじゃNEEEE!!」とか鉄拳制裁食らうかもしれない!!

いやいやいや、致し方あるまい!!その拳を俺は受け止めよう!!!例え奈落の其処に落ちようとも!!!それが俺の罪なのだからッッッ!!!!!!!


「鶴谷さん……」
「…!?」















すると、久々知くんは、スッ……、と


千 円 札 を 取 り 出 し た 。
















「くwwwwくwwwwちwwwwくwwwwwんwwwwwwwww」

「写真を、写真を是非撮らせてください!!!!!!!」
「ちょwwwwwww久々知くんからお金はとれませぬwwwwwwwwクラス内の撮影はwwww無料でござるwwwwwwwwwwwwww」


とりあえず久々知くんの手にある千円札には財布の中にお帰りいただき、こんなんでよければいくらでもと言った。バニーちゃんとランカの夢のコラボレーションと聞いて許可せぬわけがない。
久々知くんがあいぽんを尾浜くんに渡すと「まじで鶴谷さんがランカちゃんとか感激…」とつぶやいた。そんなに喜んでもらえるとはwwwwwwww光栄でありんすwwwwwwwwwwwwwwwww










「じゃぁ撮るよー!」







「久々知くん、さあ、ごいっしょに!さん、しー!」



「ハッピー!」

「うれピー!」



「「よろピくねー!」」



































もう少しで開催セレモニーだというのに、
我がクラスはなにをしているのだろうかと不安になって入ってきた木下先生が、

「私は海軍の制服を着たい」と言ってきたので当日着てもらうことにした。


久々知くんいわく、「ガープのじいちゃんなら確実に似合う」とな。

いざ、開セレ推参。

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