「んー……」
やっぱりこの本は絶版だから何処にもないか…。
えー、オークションはやだなー。これこの間五万で落札されてたぞ…。五万て…。絶対そんなん買えんわ…。
「奈緒…」
「はい?あー!長次さんこんにちは」
「…お兄ちゃんと呼べ……」
「もうそんな呼び方できません勘弁してください」
レジ打ちをしていると見知った顔が来た。数冊の本と引換券を出してきたのは、学園の先輩であり仙蔵兄ちゃんの友人の中在家長次さんだ。
長次さんはよく仙蔵兄ちゃんと一緒にいる友人の一人だ。その流れで小さいころから仲良くさせていただいているので、先輩呼びじゃなくてさん呼びなんです。
…昔は幼かったから長次兄ちゃん呼びだったけどね…。
「長次さん」
「……」
「…長次さん」
「……」
「………………ちょ、長次兄ちゃん…」
「なんだ奈緒」
「すげぇハッキリ返事した…!」
仙蔵兄ちゃんの周りは変態しかいないのかな怖いな。
可愛がってくださるのは嬉しいけどこれもう変態やで。
あ、そういえば奈緒ちゃんは今バイト中です。チッスチッス。
本屋の改装工事終わったんで再開しました。ニートちゃんじゃないッス。
「はい、ご予約本はこれであってますか?」
「あぁ、ありがとう…」
「その作者さん面白いですよね。私好きですよ。新作出たんですか」
「…読み終わったらでいいなら、貸すが…」
「うほっ!まじですか是非!」
お会計を済ませて袋に本を詰め込み長次さんに渡した。長次さんは新品の本を買うときビニールカバーを外さないで欲しいタイプの人だもんね。覚えてるよ私。
いや私もそうですよ。なんで態々あれビリッと外してうっすい安っぽいブックカバー取り付けるんですかね本屋って????
あれっていい迷惑ですよね???????普通にそのまま渡してくれていいですよね?????????
「…何を、深刻そうな顔をしていたんだ…?」
「あ、えっとー、ほ、欲しい本がありまして…」
「…?なんという本だ?」
これなんですけど、とパソコンの画面を向けて長次さんに私が探していた本を見せた。
私が欲している本は妖怪とか神様とか、天使、悪魔、魔女、魔法、都市伝説本、ギリシア神話、妖怪、武器、甲冑、黒魔術等々とか、武器とか防具とか、そういうものが一冊にギュッと閉じ込められた夢のような本である。かなり分厚くかなり大きい。
以前友人のサークルさんで凄くこういうパロディが上手い人がいて、その秘密はなんなのかと聞いたところ、この本を参考にしていると見せてもらったことがあった。
これは是非とも欲しい。何処で売っているのかと聞いてみると今はもう人気が無さ過ぎて絶版になっているという話を聞いて絶望した。
いやもうこういう本は今こそ必要ですよ出版社!!!主に私が欲しているんですよ!!!!!!!
オークションで見てもかなりの高値。こんなの手に入るわけが無い。
「…もそ…」
「…こ、こういうの眺めるのが好きで」
「…そうか…」
「……そうです…」
仙蔵兄ちゃんと友達→私のこと知ってる→仙蔵兄ちゃんからきっと私のこと聞いてる→十中八九、私の別の顔を知ってるはず
長次さんには私のこういう活動のことは言ってないけれど、きっと知っているはずだ。私はえへへと苦笑いをして画面を閉じた。
みつけたら買っておいてくれるとか、長次さん優しすぎワロタwwwwwwwwwwwwwww
「ところで、長次さんのクラスは文化祭何やるんですか?」
「…喫茶店だ…」
「へぇ!」
「私が、料理担当だ…是非……遊びに来てくれ…」
「長次さんの手作りケーキが食べられると聞いて!!!!!!!!!!!!」
「もちろん、作る…」
「絶ッッッ対行きます!!!!!!!!!!!!」
長次さんの手作りケーキめちゃめちゃ美味しかったの覚えてるwwwwwwwwwwwwwww仙蔵兄ちゃんから貰って食べたことあるwwwwwwww
まじ美味しすぎて嫉妬しそうになりましたwwww
なんなのあの料理男子wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
それではと長次さんは手を振ってお店から出て行った。
まじ長次さんの背中に飛びつきたい。お父さんみたい。絶対口に出さないけど。お父さんみたい。言ったら殺されると思うけど。
いやいや待て待て!!!!あの逞しくて広い背中はこへ兄のためにあるんだから!!!!!!!奈緒ちゃん自重!!!!!!!!!!!!
あの背中に飛びついていいのはこへ兄と……
不和くんだけーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!!!!!
長雷ヒィィイィィイーーーーーーwwwwwwwwwwww俺得ーーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwww
長こへおいしいよね!!!!!!長こへ欲しいよね!!!!!!!!!!!!!!でも長雷もおいしいよね!!!!!!!!
鉢屋くんには悪いけど先輩×後輩ほどおいしいものってないよね!!!!!!!長雷んまぁい
薄い本出したいね!!!!!!!!!!!!!文化祭で即売会したいよねーーーーーーー!!!!!!!!
多分こへ兄にぶっ殺されること間違いなしだけどねーーーー!!!
そういえば私ずっと考えてたんだけど、
久々知くん腐男子ってことは、ホモに抵抗ないってことじゃん???
つ ま り
竹谷くんと付き合っている可能性まじで跳ね上がりましたよね!?!?!?!?!?!?
これもう私の妄想内でおさまるような問題ではなくなってきましたね!?!?!?!?
しかも久々知くんが腐ってること他のイケメン集たちも知ってたじゃん!?!?!?ってことは竹谷くんも知ってるってことじゃん!?!?!?
ホモ好きな久々知くんを拒絶していないところ見る限りきっと竹谷くんもホモに抵抗とかないわけじゃん!?!?!?いやもしホモに抵抗あるという設定でおいておいても、それでも久々知くんと一緒に遊んでいるってことはさ!!!!!
つまりさ!!!!!!!!
ホモ祭りだーーーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
しかも他のメンバーもそんな久々知くんと不和くんをキモがったりしないってことはホモに抵抗ないってことじゃんつまりみんなホモってことじゃん奈緒ちゃん歓喜じゃんウォオオオオォオオォオオ
「すいませーん」
「あ、すいません、お待たせいたしm」
「鶴谷!?」
「あれ、竹谷くん!?」
噂をすれば!!!!!!まさかの!!!!!!
ホモのご来店だーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
やせいの ホモ が あらわれた!
どうする? ▼
→たたかう
どうぐ
にげる
おほー
「おほーで」
「え?」
「あっ、」
レジの前にいて私に声をかけてきたのは、絶賛ホモ妄想中の竹谷くんでした。なんだよ今日は久々知くんと一緒じゃねぇのかよ!!!!!クソが!!!!!!!!
制服ってことはさっきまで遊んでたのか!?!?!?それともバンドの練習か!?!?!?つまり久々知くんも一緒だったんだろ!?!?!?隠さなくても全部解ってんだよ!!!!!!!!!!!!!!!
だったらこんなとこ寄り道してねぇで夜も遅いんだから送ってやれよ!!!!!!!!!っていうかこんな時間まで何してんだよ!!!!!!!!!!!!!!
「あぁ、そういえば鶴谷は夏休みは本屋が改装工事してるって言ってたな!」
「そう、此処でバイトしてたの」
「そっかー、此処だったのか!」
「どうしたの?買い物?」
「あ、そうだった。なぁ、ここってこういうタイトルの本って置いてねぇ?」
「どれどれー?」
開かれたケータイのメモ画面に書かれていた本のタイトルは「世界の歴史と豆腐の話・料理」だった。
なwんwだwよwこwれwwwwwwwwwwしwしかもwww作者外人かよwwwwwwwww日本人じゃねぇのかよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
一体wwww誰得なんだよwwwwwwwwwwwwwww
久々知くんしか得しねぇわwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
「ちょっと待ってね検索かけてみるから」
「頼むわ」
カタカタとレジ横にあるパソコンにタイトルを打ち込む。が、検索結果に引っかからない。
「うーんうちには置いてないみたいだわ」
「うわーそっか」
「取り寄せとかでいいなら出来るけど。やる?」
「まじか!ちょっと頼むわ!」
もしかしてこれ久々知くんプレゼントなんです!?!?!?!?豆腐の本だもんね久々知くんにあげるしかないよね!?!?!?!?!?
「…もしかして、久々知くんにプレゼント?」
「お、よくわかったな!」
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!!
ま、マジだったアアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
久々知くんの貢いでんの!?!?!?「俺から兵助の心が離れないように」って必死で繋いでんの!?!?!?!?
竹谷くんまじか!?!?!?!?そんなキャバ嬢に貢みたいな感じなんか!?!?!?!?!?
「もうすぐ兵助の誕生日でさぁ」
なんだ誕生日プレゼントか。貢いでんじゃねぇのか。つまらん。
「へぇ、久々知くん誕生日近いの?」
「あー、文化祭終わった後だけどな」
「そっか。じゃぁもう一ヶ月もないね」
「準備とか片付けでバタバタしてて用意する時間とかなさそうだし、忙しくなる前に買っておこうとおもってさぁ」
「うんうん、多分そっちのほうがいいね」
文化祭の片付け結構疲れるしねー。一日がかりで片付けるし、文化祭からそう遠くないなら先に準備しておいたほうがいいかもしれないね。
が、ここで問題発生が。
「アッー!竹谷くんこれもう販売されてないよ!絶版だよこれ!」
「何!?」
ほら!と画面を向けると、開いてあるその本の出版社のページを見て竹谷くんは「おほー…」とうなだれた。
生「おほー」いただきましたーーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
いやwwwww冷静に考えたらwwwwwwwwwwこんな誰得本wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww今のご時世で出版してるわけないッスよねwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
電子書籍になってもwwwww久々知くん以外wwwwwwww買wわwなwいwッwスwwよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
「残念だけど…絶版となると取り寄せは…」
「出来ない、よなぁ…」
一体これは何部刷られた本なのか。
一応同時にオークションサイトでも検索をかけてみたが一件も引wっwかwかwらwなwいwwwwwwwwwwwwこいつはヒデェwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
「兵助がこれ欲しいって言っててさぁ…これで本屋五件目なんだけど…」
「探してたんだ…」
「ないなら仕方ねぇなぁ。もう諦める。別の何か考えるか」
「そうだねー。私もプレゼント用意しようかな」
「お、ま、まじか!そりゃ絶対兵助喜ぶって!」
「うん、私も何か考えとくよ」
そっかー久々知くん誕生日近いのかー。それはおめでたいなぁ。同じクラスだし隣の席だし、最近もっと仲良くなったし。折角このタイミングでこんな素敵な情報貰ったから何かプレゼントを用意しよう!そうしよう!何にしよう!
豆腐のあのキャラのグッツでいいかなーーーwwwwwwwwww喜んでくれるかなーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
あ、ダメだきっと彼あれコンプリートしてるわ。きっと極めてるわ。
「鶴谷もう上がり?」
「うん、もうそろ閉店するからあがりー」
「じゃぁ送ってくよ。もう遅いし危ねぇし」
「えっ、いいっていいって、毎回こんな時間だから大丈夫だよ」
「喋りながら帰ろうぜ?俺鶴谷とONE PIECEについて語りたいんだよ!」
「エースは私のお兄ちゃんだから!!!!!!!すぐ着替えてくるから待ってて!!!!!!!!!!!!!」
竹谷くんはさりげなく車道側を歩いてくれる系男子でした。
かっこよすぎだろ。いい加減にしろ。これいつも久々知くんにやってあげてんだろふざけんなよタケメンコラ。
「それにしても…兵助のプレゼントどうすっかなー…」
そんなに悩むなら竹谷くんの首にリボン巻いて「俺がプレゼントだよ///」とかクソみてぇなことやったらいいんじゃねぇの!?!?!?!?
たまには右にまわったらどうなnそうはさせない!!!!!!!!!!!!
「え!?竹谷くんBASARA知ってんの!?」
「俺に佐助使わせたらヤバイ」
「ちょっと今度対戦しようか私家康ちゃんまじ極めたから」
「まじで!?でも俺ソフト持ってねぇから…」
「うちにあるから!!今度遊びに来てよ!!」
「まじで!行く行く!佐助だったら絶対負けねぇからな!」
「今竹谷くんは家康クラスタの私を本気にさせた」
「…お母さーん……」
「なぁに??」
「……この、…豆腐の本って、……誰の?」
「あぁこれ?これお母さんのよ。大学時代これでレポート書けって教授に渡されてお返しするの忘れてたのよねぇ」
「………こ、これさぁ、友達が欲しいって言ってたんだけど…」
「あらそう。あげちゃってもいいわよ?もうお返しする機会ないだろうし、レポート以外に呼んだ記憶もないわ」
うちにあったとか予想外すぎたわ……。
どういうことなんだよ…。
じゃぁまぁとりあえず、
竹谷くんにあげよーーーーーっとwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
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久々知の誕生日は公式とは違うと思います勝手に決めましたはい