「2アウトランナー1,3塁オールファースト!」
「「はーい!」」
「里香!とったら落ち着いてベース踏めばいいからね!」
「了解!」


面をセットしてピッチャーの投げやすいであろう高さにグローブを持ってくる。
高校のソフト部はやる気がない感じ全開だったので、ソフト部を続けなくて本当に良かったと思う。顧問もやる気ないみたいだし。これなら近所のバッティングセンターに毎日通った方がためになるだろう。

あー、中学に戻りたい。思いっきりソフトやりたい。

バッターはバッドを三回全力で振るが、全て私のグローブの中に飛び込んできた。


「ストライク!バッターアウト!」


「はいチェンジ!次京子さんから打ってきてー」
「う、打てないってば!」
「大丈夫バットに当てればどっかしら転がるから。そしたらあそこに向かって走ればいいよ。あ!誰かサードランナーコーチャー行って!」

所詮体育なんだから。背中を押して京子はヘルメットを被って打席に立った。3組のクラスの女子がふわふわした髪をなびかせながら「えい!」とピッチャーマウンドからボールを投げる。

「それは振らなくていい!!」
「っ!!」


背筋を伸ばして京子がバッドを止めると審判をつとめている日向先生が「ボール」と呟いた。後は任せたとでも言わんばかりに私は次の次の順番に供えてスウィングを始めた。

隣のコートでテニスをしている男子がチラリと視線に入る。残念ながら私はテニプリの知識は無い。一時期ハマりかけたのだが、真美に「なるほどな。奈緒は人生を捧げる覚悟が出来た、と。」とか言われてヤメた。テニプリクラスタ怖すぎる。
でも海堂がイケメンすぎるってことだけは覚えてる。マムシさんまじマムシさん。





昨日は本当に信じられないことばかりだった。

まさかあの久々知くんが腐っているだなんて、全く思いもしなかった。
あの後教室で腐トークをして、真美と京子に久々知くんを紹介し、帰ろうとしたら、久々知くんに紹介したいヤツがいるといわれ、私は腐トークに華を咲かせながら久々知くんの後を自転車で着いていった。雨は丁度やんでいた。

たどり着いた場所は大きなマンションだった。なれた手つきで部屋番号を押すと、『あれ?兵助?どうした?』と聞きなれた声が聞こえた。


『急にどうしたの?』
「やぁ雷蔵。今大丈夫?」
『うん?平気だよ?三郎もバイトでいないし。どうしたの?上がってく?』
「うん、ちょっと紹介したい子がいるんだけど」
『う、うん?お茶入れるから、入ってきていいよー』


ピッと音が切れて、私はその声の主を頭に中で思い出した。今のほわっとした落ち着く声は、多分、不破くんだ。
私の勘違いでなければ、不破くんと私は既に友達であるはずだ。今更紹介と言われても何がなんだか解らない。

エレベーターに乗り込み「あの、」と久々知くんに声をかけると久々知くんは


「雷蔵も仲間だから」

と言った。


「……は?」
「だから、俺と鶴谷さんと、一緒ってこと」
「……はぁ!?!?」


今日の流れ、今日の話の流れからすると、不破くんも、腐っている、ということなのだろうか!?!?!?!?!?

え!?!?!?まじで!?!?!?!?あの不破くんが!?!?!?!?!?!?
不破くんまで腐ってんの!?!?!?じょじょじょ冗談だよね!?!?

不破くんが何者なのかは知らないけどエレベーターはあろう事か最上階で止まった。イケメンの上に金持ちとかクソワロリンヌ。爆発して欲しい。


「やぁへいすk……あれ?鶴谷、さん?」


久々知くんと私が、何故自分の家に来たのかということで不破くんは大層混乱しているような顔をしていた。


「ど、どうしたの?なんか、珍しいコンビだけど」

「あのね不破くん、私ルートさんと本田がイチャイチャしてれば世界恐慌なんて起こらないと思うの」

「鶴谷さん早く家に入って」


エレベーター内で不破くんの好みを聞き出し挨拶代わりに不破くんの好きなCPを推すと不破くんは腕を引っ張って快くおうちの中に入れてくれた。
お邪魔しますとおうちに上がると、中は凄く綺麗なお部屋だった。っていうかまじで鉢屋くんと同棲じてんのかよおらわくわくすっぞ♂

どうぞとリビングに通されて、テキトーに座ってと言われたので私はソファの前にバッグを置き腰掛けた。お菓子やら飲み物やらを運んでくれる不破くんは、テーブルに何もかもを置くと

「さて鶴谷さん」

と正座した。


「……え、あの、まじなの?」
「まじです」
「…鶴谷さん………腐ってんの?」
「不破くんと久々知くんに負けず劣らず腐ってるよ」
「……」

どういうことなの、と久々知くんに声をかけて、ことの事情、さっき起こった手提げを引っくり返して私の世界が解放されたことを話した。
ちなみにその証拠がこちらになります、とあの下着屋の袋を出し、中身を見ると、不破くんはグワッと目を見開いて、大爆笑した。


「うっわwwwwwww本当に鶴谷さん腐ってたんだwwwwwwwww全然気付かなかったよーwwwwwwwwwwwwwwww」

「いやいや不破くんも久々知くんもそんなオーラ全く感じさせなかったじゃんwwwwwwww忍びすぎだっつーのwwwwwwwwwwwwwwww」
「鶴谷さん腐ってるとかまじ予想外だったわwwwwwwwwwwwwwwww」
「俺も思わず三度見くらいしてしまったのだwwwwwwwwwwwwwwww」
「隣の席なのに気付かないとかwwwwどんだけwwwwwwwwwwww」

「ちょっと語り明かしませんかwwwwwwwwwっていうか改めてお友達になってくださいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「よwwww喜んでぇええーーーwwwwwwwwwwwww」

鉢屋くんはバイトで遅くまで帰ってこられないと言うので、私たちはそのまま鉢屋くんが帰宅する時間ギリギリまで喋っていた。いやなんか気付いたら7時とか過ぎてたからwwwwwwwお礼をこめて晩御飯作らせて頂きましたwwwwwwwwwwww


「はい、出来ましたー。こてっチャーハンでーすwwwwwww」
「まwwwじwwwww鶴谷さん極まってるwwwwwwwwwwwwww」
「こてっチャーハン作れるとかwwwwwwwみwwなwぎwっwてwきwたwwwwwwwwww」


もちろん鉢屋くんの分も残しておきましたとも。鉢屋くんから見ればこれはただのチャーハンだろうからな!!!!!!!!!!
これはおじさんが愛しのバニーちゃんのために作るんだからねッッ!!!!そんでもってバニーちゃんがおじさんのために練習しちゃうんだからねッッ!!!!!!!!!!

話を聞くと鉢屋くんは一般人らしい。クソッ。


「だからね不破くん、R18に踏み入れたら待っているのは天国だけなんだって」
「うーん、ちょっと抵抗あるんだよねぇ」
「じゃぁちょっとこれ読んでみ?」

スッと自分のバッグから今日返却されたばかりの漫画を出した。知る人ぞ知る名作「同級生」である。待っててと自室にこもる不破くん。30分後、不破くんは「僕が間違ってた」と涙を流して出てきた。


「いらっしゃい不破くんこちらの世界へ」
「お前はもう戻れないところまできてしまったのだ」
「僕間違ってたよ…!今まで抵抗あるとか言ってた僕が恥ずかしい……!」
「何も言わなくていいんだよッッ!!私たちはもう仲間なんだから!!」
「おめでとう雷蔵!!これから明るい未来が待ってるぞ!!」
「うん…!!」

これなんの宗教だよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww不破くん泣いちゃったよwwwwwwwwwwwwwwww意味わかんねぇよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


と、いうことがあった昨晩。こてっチャーハンも気に入ってもらえてよかったです。そして新たな友達も増えて嬉しかったです。


で、昨日の興奮冷めやらず学校で昨日の出来事を話していると、鉢屋くんたちその他イケメン集が来てしまい、私がヲタクだと言うことがバレ、久々知くんと不破くんの性質を知っているらしいので、つまり私も腐っているということがバレてしまったのだ。

まぁ皆黙っててくれるって言ってたし、これ以上広がることはないだろう。良かった良かった。

ヲタクだということを知られても腐っていることを知られるのはまずいよねー。







「ストラーイク!バッターチェンジ!」


「あぁ!?空振りだけで2アウトだァ!?ナメてんのかお前ら!!」

「奈緒落ち着けー」
「経験者はいいよねぇそんな事言えて!」

「黙れクズども!この奈緒ちゃんの華麗なるバッティング見てろよ!3年間5番でパワーバッターを勤めたこの私の実力を!!今こそ発揮するとき!!」
「頑張れ奈緒ー!!」

3組チームがタイムを申し出たので、私は自前のバッティンググローブをはめてバッドを構えた。ううう懐かしいこの感じ!中学を思い出す!


「鶴谷さん!」
「?お?久々知くん?」


ソフトのコートと隣接しているテニスコートから、ネット越しに声をかけられた。
テニスラケット持ってる久々知くん王子すぎクソワロタwwwwwwwwwwwwwwwwww王子オーラちょっと自重したまえよwwwwwwwwwwwwwwwwww何処の青春学園の方ですかーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwww

「次鶴谷さんの打順?」
「そう!私元々ソフト部だからさ」
「…鶴谷さん、2アウトだけど…」


久々知くんがガシャンとネットを揺らしたので、



「このままじゃ、試合にならねぇんだよ…」



私はたっちゃんの名台詞をかましてバッターボックスに立った。
ブハッ!と噴出したということは、このネタどうやら通じたようだ。久々知くんネタわかりすぎワロタwwwwwwwwwwwwwwww


「え!奈緒ちゃんが打つの!?どこどこ!?」
「不破くーん!応援してね!」
「あ、奈緒ちゃん!頑張れ!しっかり見てるからね!」

昨日のあれ以来不破くんは私を名前で呼ぶようになりました。いや、私は恐れ多くて呼べないんだけどね。…過激派…いや、ファンに睨まれたくないし……。


「おー、鶴谷さんが打つのか。頑張れー!」
「頑張って鶴谷さん!」
「ありがとう鉢屋くん尾浜くん!」

「鶴谷頑張れー!応援してるぞー!」
「ありがとう竹谷くん!!」


「ちょっと三郎も雷蔵もハチもうちのクラス応援しなさいよ!」
「今鶴谷さんのせいで負けてるんだからね!」

「いやぁ経験者相手じゃ勝てねぇだろ」
「諦めろって」
「奈緒ちゃんじゃ無理だろうねー」


やめて2組イケメン集!!私過激派の敵にはなりたくないの!!!!そういう逆撫でするようなこと言わないでッッッ!!!!!!


……ほらほらほらーーーーー!!!!!睨まれてるよ私ーーーーーー!!!!!!!!!!


「頑張れ鶴谷さん!」
「おう!任しといてー!」


ヒィーーーーーーーーーーwwwwww久々知くんのスマイル頂きましたーーーーーーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


「竹谷八左ヱ門は久々知兵助を愛しています。世界中の誰よりも。」


って言ってくださいな竹谷くーーーーーーーーんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwおおーーーい竹谷くんwwwwwwwww言ってくださいなーーーwwwwwwwwwww言えよ。



ハッ、竹谷だからタッちゃん……!!

久々知くんは……ヘッ、ちゃん………?



wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

オナラ真拳の使い手さんチーーーーーッスwwwwwwwwwwwwwwwwwww



「じゃぁ鶴谷からな。2アウトランナー無し。ゲーム再開!」


ホームベースの端を二箇所バット先で叩いて「来い!」と腰を低く構える。所詮相手はド素人。
空振りなんてクソな真似は断じてしない!!!!!!!


「奈緒ー、手加減してよー!」
「バカタレ経験者なめんなよ」


ピッチャーをつとめる三組の友人が振りかぶり





「竹谷くんが…」




ふわりと飛んできたボールに狙いを定め




「言うまで…」





軸足を踏ん張りバットを振り下ろし





「打つのを…!!」






ド真ん中に叩き込みと、









「やめないッッッ!!!」








予定通り、ボールはセンターの頭上を越えて


グラウンドの端へと飛んでいった。






「ボラボラボラボラボラボラボラボラボラーレ・ヴィーアァァアア!!!」


「さすが鶴谷さん!俺たちにできない事を平然とやってのけるッ!!」
「そこにシビれる!あこがれるゥ!!」


「WRYYY!!」

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