鶴谷さんが、頬に手を当て大絶叫した。

雨の音ばかりが教室中に響き渡り、鶴谷さんが叫び終えると、教室は雨の音以外なにもなくなった。




まさか、鶴谷さんが。

この鶴谷さんが、腐女子だったなんて。




突然の出来事過ぎて俺の思考回路はショート寸前だった。うさぎたんペロンヌ。


これ、どうすればいいんだ。

「俺も腐っている」と告げるべきなのだろうか。


いや、でも俺は男だ。腐男子という存在を鶴谷さんは受け入れないかもしれない。最悪受け入れないで気持ち悪がるかもしれない。



どうしよう。

とんでもないところに潜んでいた。



まさか、好いた女の子が、同士だったなんて。

大好きだった女の子が、腐女子だったなんて。




「鶴谷、さん」
「お願い!!この事他の人には黙ってて!!」


…そりゃ知られたくないよな、こんな正体。

でも待ってください。俺にも言いたいことがあるんです。


ああでも嫌われたらどうしよう。
男が腐っているというのを受け入れてくれなかったらどうしよう。



「あ、あの、」
「お願い!!お願いだからこの事は他言しないで!!!」

「鶴谷さん、」
「お願いだから!!!」


ヤバイ鶴谷さんめっちゃ焦ってる。とんでもなく焦ってる。

そりゃそうだよね。自分で言うのもあれだけど、こんな学年一位の成績おさめてるガリ勉野郎にバレて、何言われるかわかんないよね。


聞いてください鶴谷さん、違います。他言なんてしませんから。


「鶴谷さん、」


「そうだよ!!そう私は腐女子なの!!秘密にしてたけど腐ってんの!!ぶっちゃけかなり腐ってるの!!久々知くんがドン引きするぐらいホモとか好きなんよね!?!?」


いやしねえよ!!!!
俺も腐ってんだから!!!!!!

頼むよ鶴谷さん俺の話聞いてよ!!!!




「これ他の人に知られたら人生詰むんじゃねぇかってぐらいホモ好きなの!!」



俺もだよ!!!





「本当にマジで!!!だから忘れてください!!!なんならもう二度と久々知くんとは口きかないんで!!!久々知くんの人生の妨げにならないように生きていきますんで!!!!!!」



え、ちょ、ちょっと待って


「それじゃぁまた明日!!!っていうかもう絡まないからさようなら!!!」



鶴谷さんは紙袋を抱えて弾かれるように俺の側から離れた。


これを逃したら、

明日から絶対鶴谷さんに避けられる。



もう二度と話せないかも知れない。









ちょっと待って。



お願いだかちょっと待って。























「あ、あの!鶴谷さん!!」





気付いたら俺は、鶴谷さんの腕をがっしり掴んでいた。





「はい!?!?」






















逃走阻止!!!!!!!!!!


ウワァァアアアアアアアアアアアア阻止したのはいいけどどうすんだよ俺!!!!!!!!!!!!!!!!!!1




「…あの、あのさぁ…!」

「私に対する"気持ち悪いんだけどクソやろう"という暴言なら喜んでいただきます!!」
「ち、違う!違うから!」


鶴谷さん完全に俺に暴言はかれると思い込んでる!違うから違うから!!!

顔を真っ赤にする鶴谷さんに少々(いやかなり)興奮してしまったわでもちょっと落ち着け俺と一度念じる。



これを逃したら、本当にもう近づけなくなるかもしれない。




「あの、さぁ」

「な、なんでしょうか…」






えぇい久々知兵助当たって砕けろ!!!!
腐男子を受け入れてくれないのならそれまでだ!!!!!!そしたらもう鶴谷さんのことは諦めろ!!!!!!!!


俺は意を決して、思いっきり息を吸い込み鶴谷さんの目から視線を外さずに



















「俺さぁ!!!!幸村と政宗はいい加減に戦とかやめてとっとと結婚すべきだと思うんだよね!!!!!!」


























そう、叫んだのだった。








そういえば前に鶴谷さんに好きなアニメを聞いたとき、このアニメの名前が出てきた。


そしてさっきの本の中に、蒼紅があったのを確認した。




鶴谷さんが、本当に同士なら、


この王道CPには必ず反応してくれるはずだ。















「…えっ」

























その「え」が、ドン引きした声なのか、俺が腐男子、ということが予想外だったのか。


鶴谷さんは豆鉄砲でも食らったような顔で小さく声を漏らして俺の目を見た。

マジです。マジなんです。











「幸村と政宗はいい加減に結婚すべきだよね!?鶴谷さんもそう思うだろ!?!?」















ヤケクソになったように俺はもう一度同じ内容を叫んだ。
大事なことだから、二回言った。



マジですよ。俺はこのCPが好きなんです。



俺も、俺も鶴谷さんと同じなんです。


信じてください。俺も、俺も、



俺も、あなたと同じ人間ですッッッ!!!!!



















「…思う……!!」








ウオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!

鶴谷さん本当に俺と同士だったのだァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


アzsxdcfvgbhンjm;l。・w背dr2w3え4r5t6y7うhyjmk、l。qwせdrftgyふじこl;p@:「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!






「思うよね!?」

「…凄い思うよ!!!!その勢いで佐助と小十郎もずっと一緒にいるべきだと思うの!!!!」

「だよね!!色々過去抱えているであろう佐助を小十郎が支えてあげるんだよね!?」

「そうだよ!!!あと瀬戸内も関ヶ原もとっとと武器置いて新婚生活楽しめばいいと思うの!!!でも元親と家康ちゃんでガチムチコンビもいいと思うの!!!」

「俺は松永さんに慶次がヤンデレればいいとおもうんだけど!!!!」

「美味しい!!!!そのCP凄く美味しいよぉおおおおお!!!!!!!!」







これはなんですか神様!!!!!

クソ早すぎるクリスマスプレゼントか何かですか!?!?!

まさか鶴谷さんとこんな話題で語り合える日が来ると思いませんでしたけど!?!?!?!?



興奮冷めやらずつい鶴谷さんの腕を引き寄せてしまったけれど、鶴谷さんも興奮冷めないようで息を荒く更に詰め寄った。




「それからおじさんとバニーちゃんはヒーロー引退していちゃいちゃしてればいいよね!?そしたら楓ちゃんもちょっと複雑かもしれないけど大好きな3人で暮らせるから絶対そうするべきだよね!?」

「わかるよ!!!私もずっとそう思ってるからね!!!できればおじさんにエプロンしてもらいたいようね!?!?おじさんに「お帰りバニーちゃんご飯にするお風呂にするそれとも」って言って欲しいよね!?!?」

「そしたらバニーちゃんは最後まで聞かないで「おじさんにします」って答えてくれるよね!?!?」

「絶対答えてくれるよね!!!きっとそうだよね!!!!!!」

「メイプルハニーは!?」

「うんめぇええええ!!!!!!!!」





何処まで!!!!!鶴谷さんは何処まで語れる人なの!?!?!?!?!




「あとさぁ、俺的にはアメリカとフランスが仲良くしてくれるとこの世界はとても平和になると思うんだけどどう思う!?」

「私は本田のヤンデレがルートさんに向けばいいと思うの!!!」




ウワァアアアアアアア!!!!!!鶴谷さんそんなジャンルまで語れるか!!!!!!!!!





「解るよ!!!本田のヤンデレは絶対に精神的に追い詰めてきそうだよね!!!」

「出来ればイギリス×プロイセンも欲しいところだけどね!!!」

「イギリスのヤンデレですねおいしいです!!!」


「マルエーとか美味しいよね!?!?」

「うめぇよ!でも俺は白ひげよりドレホが欲しい!!」

「超新星何処絡ませてもおいしいよね!?!?」

「出来ればスモドレがほしいところだけどね!?」

「海軍次代のドレークさんください!!!!」

「超ください!!!!!!」



「…私さぁ、白澤は」

「右」

「久々知くんまじ話解るね!!!!」

「いや鶴谷さんこそどんだけ俺と話しあうんだって話だよね!?!?」




そうして俺と鶴谷さんはがっしりと手を取り

声を揃えてこう叫んだ。

























「「メルアド交換しない!?」」




























とんでもない同士が出来ました。




おいおい鶴谷さんマジなんですかこれ本当に現実なんですか。



これ、え、ちょ、まじで?
今赤外線してるの鶴谷さんですけどこれ大丈夫ですか?



まじで現実なんです!?!?!?!?!?!?!?!?!?

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