頬に手を当て大絶叫。

いつ以来だろうか。こんなに大声で叫んだの。
カラオケで真っ赤な誓い歌って以来か。死ぬ。ちょっと喉痛い。



いや、今それどころじゃねぇだろ奈緒。




私の叫び声は大雨の音にかき消されて教室には静寂が訪れていた。雨さえ降っていなければ今はシンとした教室で久々知くんと見つめあっていたことになるだろう。雨ありがとう。今だけ愛してる。今だけね。

真っ赤な顔をした久々知くんは私をずっと見ていた。めっちゃ見てた。

状況をやっと脳内整理し終えた私は、ハッと意識を取り戻し、慌てて床に散らばるスマ本をかき集めた。


「鶴谷、さん」
「お願い!!この事他の人には黙ってて!!」


久々知くんにこの事が知られたからにはなんとしてでも口止めしておかねばなるまい。
私が腐女子ということは本当に限られた人間しか知らない秘密だ。学園生活がまだ1年半も残っているのにこんなところで人生詰むわけにはいかない。

頼むよ久々知くん。黙ってて!!

頼むから!!!!!!!!!!!!!!


「あ、あの、」
「お願い!!お願いだからこの事は他言しないで!!!」

「鶴谷さん、」
「お願いだから!!!」


顔を真っ赤にして紙袋にスマ本を詰め込み私は久々知くんに何度も何度もお願い!と叫び続けた。




「鶴谷さん、」


「そうだよ!!そう私は腐女子なの!!秘密にしてたけど腐ってんの!!ぶっちゃけかなり腐ってるの!!久々知くんがドン引きするぐらいホモとか好きなんよね!?!?これ他の人に知られたら人生詰むんじゃねぇかってぐらいホモ好きなの!!本当にマジで!!!だから忘れてください!!!なんならもう二度と久々知くんとは口きかないんで!!!久々知くんの人生の妨げにならないように生きていきますんで!!!!!!

それじゃぁまた明日!!!っていうかもう絡まないからさようなら!!!」



紙袋を抱えてバッグを担ぎ飛び出すようにその場から離れた。






のだが、
















「あ、あの!鶴谷さん!!」

「はい!?!?」













まさかの、逃走失敗。


其の原因は、今私の右腕を掴んでいる久々知王子のせいである。



「…あの、あのさぁ…!」

「私に対する"気持ち悪いんだけどクソやろう"という暴言なら喜んでいただきます!!」
「ち、違う!違うから!」


てっきり引き止めてまで悪口言うのか久々知くんたらとっても腹黒いのね!!とか一瞬にして思ったけど、どうやらそうではないらしい。

王子は、なんというか、王子も、顔が真っ赤で。

そりゃテレますよね!!!!!!!目の前で男同士でアッー♂してる本なんて見せられて恥ずかしくないわけないよね!!!!!!
もしかしたら俺もこんなことでネタにされてんじゃねぇのかなとか思っちゃいますよねそりゃぁ!!!!!

悪ィな!!!!!!!ネタにしちまってるんだよこれが!!!!!!!!!!!!!!





「あの、さぁ」
「な、なんでしょうか…」


久々知くんはまだ力強く、私の腕を掴んだままだった。


そして、意を決したように顔をあげ、思いっきり息を吸って、





























「俺さぁ!!!!幸村と政宗はいい加減に戦とかやめてとっとと結婚すべきだと思うんだよね!!!!!!」












そう、叫ばれた。
















「…ゑっ」















……王子、今、なんて……!?












もしかして、久々知くん、その発言























おま、おま、……おま、

























腐ってんの、かよ…!?















「幸村と政宗はいい加減に結婚すべきだよね!?鶴谷さんもそう思うだろ!?!?」

















大事なことだから二回言った。


これすげぇ大事なことだろ。


だから二回言ったんだろ。



何回脳内でリピートしても、

今の台詞は、そういう意味だ。それしかない。






久々知くんの、口から、

まさかの、こんな、発言出てきて、

私は、私は、












私は!!!!!!!!!!!!!!!

今!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


凄く!!!!!!!!!!!!!!!!

興奮しているんです!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!








「…思う……!!」







「思うよね!?」

「…凄い思うよ!!!!その勢いで佐助と小十郎もずっと一緒にいるべきだと思うの!!!!」

「だよね!!色々過去抱えているであろう佐助を小十郎が支えてあげるんだよね!?」

「そうだよ!!!あと瀬戸内も関ヶ原もとっとと武器置いて新婚生活楽しめばいいと思うの!!!でも元親と家康ちゃんでガチムチコンビもいいと思うの!!!」

「俺は松永さんに慶次がヤンデレればいいとおもうんだけど!!!!」

「美味しい!!!!そのCP凄く美味しいよぉおおおおお!!!!!!!!」





久々知くんはさらに私の腕を掴む手に力を込めて私を引き寄せるように引っ張ってきた。

おいおい久々知くん!!!!!


おいおい!!!!久々知くん!!!!!!お前、まじか!!!!!!!!!!!





「それからおじさんとバニーちゃんはヒーロー引退していちゃいちゃしてればいいよね!?そしたら楓ちゃんもちょっと複雑かもしれないけど大好きな3人で暮らせるから絶対そうするべきだよね!?」

「わかるよ!!!私もずっとそう思ってるからね!!!できればおじさんにエプロンしてもらいたいようね!?!?おじさんに「お帰りバニーちゃんご飯にするお風呂にするそれとも」って言って欲しいよね!?!?」

「そしたらバニーちゃんは最後まで聞かないで「おじさんにします」って答えてくれるよね!?!?」

「絶対答えてくれるよね!!!きっとそうだよね!!!!!!」

「メイプルハニーは!?」

「うんめぇええええ!!!!!!!!」



「あとさぁ、俺的にはアメリカとフランスが仲良くしてくれるとこの世界はとても平和になると思うんだけどどう思う!?」





ウワァアアアアアアア!!!!!!久々知くんそんなジャンルまで語れるか!!!!!!!!!





「私は本田のヤンデレがルートさんに向けばいいと思うの!!!」

「解るよ!!!本田のヤンデレは絶対に精神的に追い詰めてきそうだよね!!!」

「出来ればイギリス×プロイセンも欲しいところだけどね!!!」

「イギリスのヤンデレですねおいしいです!!!」


「マルエーとか美味しいよね!?!?」

「うめぇよ!でも俺は白ひげよりドレホが欲しい!!」

「超新星何処絡ませてもおいしいよね!?!?」

「出来ればスモドレがほしいところだけどね!?」

「海軍時代のドレークさんください!!!!」

「超ください!!!!!!」



「…私さぁ、白澤は」

「右」

「久々知くんまじ話解るね!!!!!!」

「いや鶴谷さんこそどんだけ俺と話しあうんだって話だよね!?!?」





そうして私と久々知くんはがっしりと手を取り

声を揃えてこう叫んだ。

















「「メルアド交換しない!?」」






















とんでもない同士が出来ましたーーーーーーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww





おいおい久々知くんまじかお前まじなのかwwwwwwwwwww


くっそーこんなことってあるのかよwwwwwwwwwwwwwwww
完全にこの発想なかったわーーーーーーーwwwwwwwwwwノーマークだったわツラいわーーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

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