「大川祭のクラスの出し物を決めたいと思います」
「意見のある方は手を上げてください」


…いや、まさか鶴谷さんが、八左ヱ門を好きだったなんて……。
かなりショックだ………。

俺のこの長い恋は親友である八左ヱ門の手によって壊されるのか…!
なんてことだ……!ツラすぎる…!!!


だ、誰を恨めばいいんだ!?八左ヱ門か!?八左ヱ門なのか!?
いや八左ヱ門は鶴谷さんが好きになっただけだから関係ないな…。

鶴谷さんは完全に恨むべき相手ではないな…。これじゃただの逆恨みみたいな……。


…いや俺だ、恨むべきは俺だ。とっとと腹決めて告白をすればよかったんだ。バカやろう何考えてんだ俺はそれが出来たら一年以上も片思いしてねぇっつうの。クソが。


待て待て考えれば考えるほど俺ヤンデレになってしまいそうだ。怖い。落ち着け。落ち着け。



…そうだ、落ち着け久々知兵助。まだ本人の口からそうだと聞いたわけではないし、可能性は捨てない方がいいんだとは思う。


……でも、あの反応はどう見ても「恋してます」って顔だったな…。


やっぱりこういう可愛い子って不良みたいなヤツを好くっていうのがお決まりなのか。なんで優等生キャラ選択したんだ俺。
「人生やりなおしたい」と思うぐらいにはヤバい。


クラスの文化祭実行委員がHRの最中に教壇に立ち、『クラスの出し物について』と黒板に書いた。
あぁ、そういえばうちのクラスまだ出し物決まってなかったな。なにするんだろう。



…鶴谷さんはまたポスターか。どんだけ熱中してんだよ。凄いな。






「…煩悩よ去れ……!」





…なんか今凄く恐ろしい独り言が聞こえた…!どんだけ追い詰められてんだ鶴谷さん…!




「兵助今年なにやりたい?」
「別に、俺はなんでもいいよ」
「俺も特にないなー。」


きっと真面目に意見出ているってことは、このクラスも優勝狙っているんだろう。俺は食券でも焼肉屋でもどっちでもいいなぁ。でもやるからには優勝したい。
去年は一年生ながら大健闘の総合3位だったし。今年こそ優勝まで行きたいな。


「鶴谷さんは何かやりたいことある?」
「んー。特にはないなぁ。尾浜くんは?」
「俺は飲食店がやりたい!」
「それ絶対食べるの目的だよね?」


絵を描く作業を一旦止めて、鶴谷さんはシャーペンの芯をカチリとしまいこっちに目を向けた。

「久々知くんは?」
「俺?うーん……別に俺もそんなに興味ないなぁ」


むしろ文化祭は参加しなくてもいいんじゃないかぐらいには今までどうでもいいと思ってたよ。とは言えない。

今年はやる気満々ですよ。なんたって鶴谷さんと同じクラスってことは一緒に出し物やるってことですから。鶴谷さんのポスターでこの文化祭始まるんですから。俺が休むわけないじゃないですか。


「去年は久々知くんのクラス何やったの?」
「俺のクラスはお化け屋敷だったよ」
「あ、3組だっけ。私も行ったよー。やたら怖かったの覚えてる」
「はは、ありがとう。俺は受付だったんだけどね」


去年は俺が実行委員やらされて、なんでか解んないけどお化け屋敷に決定したなー。構成全部任されたときちょっと終わったと思ったけど予想外に繁盛しててよかったわ。今年なにやるんだろう。実行委員じゃなくてよかった。


フリマ、ワッフル、アイス、映画上映、たこ焼き。毎年ありきたりなのしか出てこないなぁ。

おい誰だコスプレ喫茶とか出してんの。いいぞもっと推せ。鶴谷さんにやってもらいたいぞ。



なるほど。コスプレ喫茶いいな。他にやるクラスは絶対って言ってもいいほどにいないだろうな。

鶴谷さんには何似合うかな。妲己とか似合いそう。鶴谷さんさりげなく胸あるし。お巡りさん俺はここです。
あとMs.バレンタインとかビビも似合いそう。鶴谷さんチャイナとかワンピースとかそういうの似合うと思うんだ。ランカとかさ。足細いし。お巡りさん俺はここです。

ブルーローズも捨てがたい。お巡りさん俺は此処です。あんな布面積少ないキャラ妄想してすいません。逮捕してください。




「じゃぁ多数決しますねー」




多数決で決めるらしい。皆がわいわいと手を上げる。
パッと見たところ、一番票数が多かったのはコスプレ喫茶だった。おぉまじか。このクラスまじか。





「じゃぁコスプレ喫茶に決定でいいでしょうかー」






このクラスまじかよおい!!!!!!!!!!!!!!
どこ向かってんだよ!!!!!!!!!!!!!

俺は断言するぞ!!!文化祭の日この教室は満員になる!!!!!!!!!!!!!
主に俺みたいなやつらで!!!!!!!!!!!








「じゃぁ男子は執事の格好で、女子はメイドの格好でいいですかー?」








は?

メイドか執事なの?

選択肢それだけ?


それって普通のメイド喫茶じゃない?




お前らコスプレってそれだけかよ。普通に考えてコスプレっていったらアニメの方だろう。それはただのメイド喫茶だ執事喫茶だ。俺は認めないぞ。

だけどここで「アニメのコスしろよ」って言ったらたぶんドン引かれるわ。やめとこう。俺受付やろう。













「コスプレって、アニメのキャラの方のコスプレじゃないの?」













教室が、一瞬シンと静まって、視線が全部声の主である、鶴谷さんへと向いた。



……鶴谷さん、まじか。鶴谷さんまじなのか。俺と同じ思考だったのか。

ってことは鶴谷さんのなんらかのコスが見れるというわけか!!




イィイイイイィィイイイヤッホォオオオオォオオオオォォォオオオ!!!!!!!!!!!!!!







「いいんじゃない?そっちのコスプレも。
メイドとか執事とかって、毎年どっかしらのクラスがやってるし、絶対別のクラスと被るよね。でもアニメのキャラの方のコスプレだったら何処のクラスとも被らなくていいと思うな。優勝狙うなら、だけどね」

「俺もそっちの方がいいと思うなー。このクラスも優勝狙ってるっしょ?だったら他のクラスとは比べ物にならないようなもんやった方が面白いっしょー!」


さすが勘ちゃん対応早ぇな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
感謝するよ!!!!!!!!!!!!!!!!

今俺の頭の中鶴谷さんがなんのコスプレするのかしか考えてないわ!!!!!!!!!!!!!!!!やばい脳内荒ぶってきた!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!





兵助がそういうなら

勘ちゃんもあー言ってるし

いいんじゃない?

アニメとかよくわかんないけど

さすが奈緒だな

俺らと発想が違うわ鶴谷





うおおおおおおおおおおおおおおおおおお事はプラスの方向に動いているみたいだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

っていうか鶴谷さんのクラスの女子男子問わない人気凄いな。
「さすが奈緒だな」ってどういうことなの「俺らと発想が違うわ鶴谷」とかどういうことなの。普通「アニメのコスプレとかキモ」って言うところだっただろうに。そして賛成した俺も叩かれるところだっただろうに。

言ってから今のはちょっとヤバかったかなと思ったけど、この感じなら俺がオタクですってことバレなさそう。よかったまじよかった。


「でも、衣装とかどうすんの?」
「あ、私の友達にそういうのの道の人がいる。サイズどうかわかんないけどー、多分貸してくれると思う」

「まじかよ鶴谷の交友関係どうなってんだよ!」
「鶴谷パネェな!」
「私を誰だと思っている!敬え称えろ!!」
「すげぇすげぇ!」


すげぇな!!!!!!!!!どういうことなんですかその関係!!!!!!!!!!!!!!!!!!
今度紹介してください!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



「変な発言してごめんね。そして庇ってくれてありがとう」

「いや、鶴谷さん凄い発想するね」
「な、俺も普通に執事かメイドしか出てこなかったわ」


実行委員に今衣装を借りれるかどうか聞いてみてといわれ、鶴谷さんはケータイを取り出してメールを打ち始めた。そっか今ダメだと言われたら買出しとかそういうのも決めなきゃだめだもんな。




「よっしゃ、優勝はうちのクラスが貰った」



どうやら無事衣装提供はしてもらえるらしく、鶴谷さんの一言で教室はさらに盛り上がった。
まじか。これ現実か。うちの教室コスプレ会場になるのか。アツい。今学期俺の心臓働きすぎワロタ。

多分雷蔵とか入り浸ってるかもしれないな。この教室。





っていうか、もしかして鶴谷さんてアニメとかよく見てるのかな。

「鶴谷さんてアニメ詳しいの?」


思いきって聞いちゃう、の段。


「え、あ、うーん、そ、そこそこ?こーゆー友達いるし、た、たまに、見る、ぐらいかな」

まじか、これもしかして深く語り合える的可能性とか…!!


「…た、例えば?」

「…えっと、ONE PIECEとか、戦国BASARAとか?」


うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお俺の好みジャストミィィイイイィィィイイィィイイイイイイイト!!!!!!!!!!!!!



「本当?俺もそれ好きだよ」
「まじかー面白いよね!」
「うん、あれは面白い」



「…」
「…」








でもごめん鶴谷さん!!!!!!!!!!!!!!!

俺が語り合いたいのはそこから更に
ディープなところへいったところなんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



口滑らせて変なこと言っちゃって
ドン引きされたら困るからこれ以上はやめとこう……

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