「では、本日はここまで。明日から通常授業だからなー」
「「「ありがとうございました!」」」


やっとHRも終わり、ふっと溜息。あぁまた騒がしい毎日が始めるなと思いながら、黒板の上にぶらさがっている時計を目に入れた。

今日は別に用事が無い。昼飯どうしようかな。


「サンキュ!おーい兵助!帰ろうぜー!」

声のする方へ振り向くと、八左ヱ門が教室の後ろの扉から顔を出していた。

「あぁ、今行く」


あれ、八左ヱ門の前にいるの鶴谷さんじゃないの?

そういえば今日始めて見たな。っていうかあのプールの日からあってなかった。まぁそりゃそうだけど。

水着姿が可愛すぎてプールで撮った集合写真を待ち受けにしてるなんて言えない。変態か俺は。


「な、今日も兵助んち行っていい?」
「またか、別に構わないのだ」

どうせまたゲームでもしに来るんだろ。八左ヱ門は結局夏休みほとんど俺の家で過ごしたと言っても過言ではないのだ。宿題は俺の力でなんとか終わらせたがちょっと遊びすぎだ。

バッグに腕を通し扉の方へ近寄ると、やっぱり八左ヱ門の前いたのは鶴谷さんだった。どうしたの。なんで鼻押さえての。


「…鶴谷?どうした?大丈夫か?」
「大丈夫、ちょっと興奮しただけ」
「え?」

どうしたんだろう。


「あ、じゃぁ私帰るから。じゃぁね竹谷くん久々知くん。また明日ー」
「じゃぁな!」
「また明日」

嗚呼、二学期初日に喋れた。なんていい日なんだろう。っていうかまた明日ーの時の笑顔の破壊力ヤバい。可愛い。ツラい。

鶴谷さんが俺らに背を向け下駄箱に向かい歩き始めたとき、突然、校内放送のチャイムが鳴った。






《2年1組、鶴谷奈緒。2年1組、鶴谷奈緒。大至急五階風紀委員会室へ来い。5分以内に来なければお前の恥ずかしい過去と秘密を全てこの場で学園生徒全員にバラす》

「おんぎゃああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」





今まで聞いたことの無い雄叫びを上げ、鶴谷さんは真っ青な顔をして

「京子真美ごめん今日は行けそうに無いじゃぁね竹谷くん久々知くんさようならまた明日あああああああああ!!!」

五階へと続く階段へ物凄いスピードで走り去って行った。



「…今の、立花先輩か?」
「多分、あの声はそうなのだ…」
「大川のラスボスに呼び出されるとか、鶴谷何やったんだ?」
「……さぁ…」


明日元気な姿だといいな。そう言って俺らは校門へと向かった。























「あぁー!お前なんでそんな離れてんだよ!」
「なんでそこで○押すんだよ。佐助のBASARA技は威力あるけど範囲狭いって何度言えば解るんだよ」
「クッソ!せっかくゲージ溜めたのに…!」
「卿から生じるものは…」
「やめろ!!その技やめろ!!一発で死ぬ!!」

やっぱり八左ヱ門はゲームをしにきた。帰りにマックに立ち寄り持ち帰りで注文し、今はポテトを食いながらゲームをやってる。

1ヶ月も俺の家に来ていて何故学習できない。いい加減にキャラの技範囲ぐらい覚えろ。


「だぁーもう!なんでこれ兵助に勝てないんだろ!」
「俺と八左ヱ門とじゃ詰んだ日数が違うのだ」

「なんでそこまで松永使いこなしてんだよ…」
「一番使いやすいのは孫市だよ」
「孫市は俺の好みの女ドストライクだけど接近戦が好きなんだよ」


対戦でハンデもつけてるのに負ける八左ヱ門wwww乙ですwwwwwwwwww

折角松永で松佐表現してやってんのにふざけんなちゃんと抵抗しろ。


「あー、もうポテトやけ食いする!うわ冷めてる!」
「当たり前だろ」

ゲーム本体の電源を切り、コントローラーを置いた。ゲームが消えたので部屋にシャッフルで音楽をかける。あ、シェリルだ。


「で?話たいことってなんなんのだ?」

そう、今日は何か話したいことがあると八左ヱ門は言っていた。でもとりあえずゲームやりたいと言われ、その話は後々に回してしまったのだ。


「そうだ!あのさ、もうちょいしたら大川祭あるじゃん!」
「あぁ。今年はいつだっけ」
「10月の頭!」
「今年はちょっと遅いんだな」

「そんなこたぁどうでもいいんだよ!な、そこでさ、有志のバンド組まないか?」
「バンド?」

大川祭の前夜祭では、有志としてあの広い体育館で色んな出し物をするやつらがいる。去年は、バンドとかはもちろん、コントをやったやつもいれば、漫才とか、マジックとかをやってたやつらもいた。出し物は事前オーディションがあるわけではないのだが、これは高等部以上のヤツらではないと参加できない。


「なんでバンドなんか」
「この間勘ちゃんと話してたんだよ。去年は何も出来なかったから今年はなんかやりてぇなって!」
「へぇ」
「兵助ピアノ弾けただろ?な、キーボードやってくれよ!」

確かにピアノは昔やっていた。だが最近は式の校歌の伴奏を弾く以外は全くと言っていいほど触ってない。キーボードなんて出来る自信が無い。

八左ヱ門の話ではあの俺らも入れてあの五人でやるらしい。八左ヱ門がドラムで、勘ちゃんがボーカル、雷蔵がベースで三郎がギター。それで、俺がキーボード、か。


「…いや、俺はパス」
「なんでだよ!」
「最近あんまり触ってないし、やれるかどうかわかんないのだ」
「お前ならやれるって!まだ一ヶ月もあるし、あいつらも結構ノリ気なんだよ!」
「そうは言ってもなぁ…」

勘ちゃんはカラオケで凄く上手いの知ってる。八左ヱ門も雷蔵も三郎も、かじってる程度とか言ってたけどかなり出来るのを知ってる。俺はもう中学のときにピアノやめたし、そこそこ足を引っ張る可能性もある。…不安だ。


「うーん、やっぱりやめとくよ。キーボードは他のヤツを探してくれ」



「…お前がそう言うと思って、こういうものを勘ちゃんから預かってきた」
「なんだ?」

「このSDカードが欲しければ、いい返事を聞かせてくれ!」

八左ヱ門が胸からSDカードの入ったケースを取り出した。「中身を見ろ」といわれ、自分のスマホからSDカードを抜き、それに差し替える。














…え、何これ












「勘ちゃんが面白がって撮った鶴谷写真特集だ!!」

「…!?」



「見ろ!うたた寝する鶴谷、飯をほお張る鶴谷、濡れた髪を掻きあげる鶴谷!しかも影から取ったお前らのツーショットも入っている!!」
「なんだこれ!!勘ちゃんいつの間に撮ってたんだ!!」


「お前の奢ったかき氷を幸せそうにほお張る鶴谷もある!しかも、飯食ってるやつ以外は全て水着姿だ!!!」




なんだこれ!!!!!!!!ふざけんな勘ちゃんなんで全部送ってくれなかったんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

クッソ超可愛いじゃないかどうすればいいんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




「極めつけはこれだ!!!!!!!」
「…っな!!」














「水着のお尻の食い込みを直す瞬間の鶴谷だァ!!!」








































こうして俺は有志バンドのキーボードをやることになった。

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