「うーん…」
「雷蔵、悩んでるなら買ったほうがいいのだ」
「そうだねそうする。すいませんこれお願いします!」

晴天。今年も無事開催されたコミケ。

雷蔵と2人でこの会場を歩き始めて早2時間。もう人が多すぎて何がなんだか解らないのだ。一度迷子になったら死を覚悟したほうがいい。いや本当に。

自分のバッグのほかに大きい袋がひとつ。もうかなり買い占めた。そしてかなり目的のサークルさんにスケブも頼めた。多分雷蔵がいるからOKもらえた部分あるかもしれない。こいつ怪物的くせっ毛じゃなければただのイケメンだからなぁ。

一度休憩。ベンチみたいなところに一回座って戦利品を確認する。っていうかスケブが豪華すぎてヤバイ。にやける。


「あとはあっちの方面だけだねー」
「そうだな。雷蔵大丈夫?」
「大丈夫!今年は熱中症の心配もないよ」
「それはよかったのだ」

帽子を深く被る雷蔵。去年は脱水症状になりかけて大変だったのだ。


「あ、兵助のスケブもうラスト1ページじゃん。どっか買いに行く?」
「いやこれはこれでいいのだ。目当ての人がいるから!」
「南天さんだ」
「そう!」
「僕も欲しいんだ!楽しみ!」

この後いくスペースにいるはず。このラスト1ページはあの人に飾ってもらいたい。

「描いてくれるといいねぇ」
「そこが問題なんだよなぁ」

あの人はあのジャンルでめちゃめちゃ人気がある。もし今年スケブを受け付けているのならそれはそれは凄い数を預かっていそうなのだ。怖い。

去年あの人本人は此処には来なかった。どうやら別の用事がかぶってしまったらしく参加できなかったらしい。売り子だけいてちょっとガッカリしたけど支部のほうでその日の夜、元気に謝罪してた。体調不良ではないらしい。よかった。






目当てのサークルさんのスペースに近寄ると、人が2人いた。どっちかが南天さんだろうか。

とりあえず俺も雷蔵も本を購入し(雷蔵は保存用を、俺は親戚の姉の分も買わねばならぬので保存用と3冊買った)売り子さん?に話しかけた。


「あ、ごめんなさいねー。南天なら今他のサークルさんのとこに挨拶に出かけてて…」


その言葉に会計中の雷蔵とあちゃー顔を合わせる。雷蔵もちょっと楽しみだったらしい。

「多分しばらく帰って来ないと思うんですけど…」
「あの、スケブって」
「あ、受け付けてますよ」
「本当ですか?じゃぁお願いしたいんですけど」

雷蔵の会計がなんだか梃子摺っているらしい。どうやら小銭が足りないらしい。売り子さんその2が自分の財布で両替をしている。お客さん並んで無くてよかったのだ。品物がかなり減っている様子を見ると、もう俺たちが来る前にかなり大量のお客さんが来ていたみたいだ。

よくみたらとんでもない数のスケブが置いてある。これはもう描き終わったヤツだと売り子さんその1が教えてくれた。凄い…!この量を描いたのか…!

「あ、あの、僕もスケブお願いしたいんですけど」
「はいはい。お預かりいたします」

会計中の雷蔵も横から入ってきた。両替まだなのか。

蒼紅以外でも可だと言ってたという話を聞いて、雷蔵は迷わず日本を頼んだ。俺はもう蒼紅のどっちかを描いていただければ今夜は安眠できますと言ったら笑われた。

スケブを渡し、雷蔵はまた両替してる売り子さん2の方へと戻った。

無料配布もありがたくいただこう。あ、親家だ。美味しい。


「それにしても南天のお客さんて、最近男の方結構多いんですよ」

売り子さん1が暇を持て余したのか、俺に話しかけてきた。

「そうですか」
「人気なんですねー」
「俺もかなり信者してます」
「そうですかwwwww」

どうやらこの人は南天さんと友人らしい。羨ましい俺も友達になりたい。かばんについてるはんなり豆腐についてツッコまれたが、大好きなんですと真顔で答えた。これ俺の彼女です。

やっと雷蔵の会計を終え、しばらくしたら戻ってくると伝え、俺たちはコスプレのスペースへ行った。うおおおおおおビビのコスしてる人クオリティ高すぎ写メ撮らせてください。


























「すいません……さっきトイレにいったばっかりで……」


もういい。今年は諦めよう。


結局戻ってきても南天さんに会うことは出来ず、俺らは大人しくスケブを受け取った。こんなに時間空けてきたのにトイレって…。「多分あの子のことだから迷子になってます」と呟く売り子さん2の言葉に思わず苦笑いをした。

「あ!でもスケブはちゃんと描いてましたから」
「ありがとうございます!」

それだけでおなかいっぱいだよーとほくほくした顔で雷蔵と一緒にスケブを開いて、



発狂した。



「えぇ!!!嘘ォ!!!!」
「凄ぇ!!!着色までしてくれてる!!!!」


他の人はシャーペンや鉛筆だったのに、まさかのボールペンにコピックで着色されていた。しかもサインまで入れてくれてる。



嘘だ信じられん。

こここここれ本当に貰っていいんだろうか。


「あとなんかそちらの方のほうにはそのバッグについてる豆腐のぬいぐるみまで描き足してましたけどwwwwwwwww」
「暇を持て余していたみたいでーーーーwwwww」

「豆腐邪魔だったらあとであいつシメときますんでwwwwwwwwwwwww」
「すいませんでしたwwwwww私がそれの話をしたばっかりにwwwwwっうぇwwwwww」









「ゆ き む ら と は ん な り と う ふ な の だ ! !」




「へ、兵助ぇえええええええ!!!」







俺は膝から崩れ落ちた。




こうして俺の中の今年のコミケは終わった。

後は明日から行く親戚の家の姉にこの戦利品を渡しにいくだけだ。地方組み乙。





これどうしよう、額縁に飾ればいいのかな。






とりあえず帰ってすぐ神棚に飾った。怒られた。

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