「なんでこんなところに呼び出しやがったおおおお俺は別に名前と別れる気なんてねぇからないくらお前の頼みだからって俺は絶対おおおおめぇと別れたりしねぇからなもし俺のこと嫌いになったって言うんだったら全部言えよなんだって直すだから頼むから別れるなんて言わねぇでくれ」
「いやちょっとお前落ち着け」
またこいつなんか妄想してやがるなちくしょう手に負えないところまできてやがる。
「じゃぁなんで呼び出しなんてしやがった!」
「別れ話以外で呼び出しちゃいけないのか!」
「だから!名前とは絶対別れねぇっつってんだろ!!」
「だから別れ話じゃねぇよ!!」
人の話を聞け!
そうしていつもの流れ(もう慣れた)を終え、作兵衛は「へ」と呟いてマヌケな顔になった。
「…別れ話、じゃねぇのか」
「だから違うと何度も…」
やっと理解してくれたようだ。
今日はちょっと恋人でもある作兵衛に相談したいことがあって放課後作兵衛の教室に呼び出した。委員会終わったらメールくれと伝えておき、誰もいない教室で今二人きりである。
「相談したいことがあるっていったじゃない」
「あぁ、そうだったそうだった。」
で、何の話だ?
そう言い一番近くの机に座った。あぁ田中君の机が作兵衛の尻にしかれた。
「いやそれがさ、私のクラスの友達から、"富松くんに渡して欲しいんだけど!"って、こんなもん託されちゃってさ…」
「……恋文…」
「ラブレターって言ってくれる?」
そう、これが相談したいことだ。
何故作兵衛の彼女である私が作兵衛あてのラブレターを預かってしまっているのかというと、私と作兵衛が付き合っているということを誰にも知られていないからだ。
作兵衛とは幼馴染で、結構前に付き合い始めた。
の、だが、作兵衛は恐ろしいほどモテる。本当にモテる。
同級生からはもちろん、その優しさから後輩から、この甘いマスクから先輩から。
何のとりえもないただの幼馴染である私が彼と付き合っているだなんて知られたら、次の日から私は学校へは来れなくなるだろう(イジメ的な意味で)。
まじ想像するだけで怖いわ。
しかし私と作兵衛は幼馴染だということは知っている人は知っている。だから多分、彼女は私にこれを託したのだろう。
大迷惑である。
「…なんで受け取ったんだよ」
「…いや、断ろうと思ったんだけどさ…」
「……押されたのか…」
「…その通りでございます………」
「そろそろバラしてもいいんじゃねぇのかな…この関係」
「いやまじ勘弁してください死ぬ」
お前はそろそろ自分のモテ具合を自覚するべきだと思うよ。
女って怖ぇな。そう言いながら机の上で胡坐をかいて受け取ったラブレターをヒラヒラとさせ開封した。
「…ずっと前から好きでした。付き合ってください。明日の放課後2組の教室で待ってます。お返事聞かせてください。」
「それがね、今日なんだわ」
「はぁ!?!?」
「作兵衛委員会で忙しいって言ってたから渡すタイミング無くて………」
昨日預かって、今日渡す。指定された日付は、今日。
最悪である。
多分もうそろそろ彼女も委員会を終えてくると思う。と言いチラリと時計を見ると、
ガタリ、と教室の前の扉が開く音がした。
ラブレターを私にたくした、彼女である。
「あ!あの、」
「あぁ、ごめんね、作兵衛が暇そうにしてたから話してただけ!私はここから退散するから!」
「あ!?名前!?」
「じゃ☆ 頑張ってね☆」
戸惑う作兵衛を放置し、私は教室を後にした。
そして、扉に耳をくっつけて、作兵衛がどう返すか盗み聞きをした。
「あの、手紙読んでもらえた?」
「あ、あぁ」
「その、…お返事、聞かせて貰えたら…」
「あー、えっと………」
「しょ、正直に言ってくれて構わないから!私、その…………」
「……………悪い…。俺さ……
左門と三之助の世話で恋愛どころじゃねぇんだわ。」
間違ってはいないと思うけどその断り方はないだろ!
「…は?」
「あいつら放っておけねぇから…」
「…」
「(バカかテメェは!!!!!)」
次の日「神崎・次屋・富松のホモ説」が流れ始めたのはまた別のお話。