「ねぇ久作」
「なんだ名前」
「今日不思議な夢を見たわ」
「どんな?」
「私も久作も見たことのない服に身を包んでいて」
「うん」
「おはようって言いながら何かに跨って風を切るの」
「馬?」
「ううん、なんか解らないけど鉄の塊」
「んー?」
「それでね、土でも草でもない道の上をずっと走ってね」
「うん」
「大きなお城に入るの」
「此処より大きい城?」
「此処よりはもっと小さいけど、とにかく横に大きかったわ」
「ふんふん」
「それでね、私と久作は小さい部屋に入って隣同士に座るの」
「うん」
「なんかの本を開きながら何かを紙に書いて」
「うん」
「たまにその本を立ててこっそり二人で文のやりとりをするの」
「うん」
「それが終わったらね、二人で外に出て食事をして、それが終わったら本が沢山ある部屋で一緒に読むの」
「うん」
「久作が読んでくれるの。とても心地良いその声でいろんな話を読んでくれるのよ」
「へぇ」
「私はその久作の横顔を見て、あぁ、幸せだなぁって涙を零したわ」
「幸せだったんだ」
「えぇ、とても幸せな気分だったわ」
「不思議な夢だね」
「とても不思議な夢」
「この世界じゃないのに」
「そう、この世界じゃないのに、私と貴方は笑いあっていれたわ」
「もし身分が同じなら」
「もしあなたが忍じゃなかったら」
「もし名前が一国の姫じゃなかったら」
「あんな幸せに巡り合えてたかもしれないのにね」
「もし俺が名前の忍じゃなかったら」
「もし私が貴方に守られていなかったら」
「もうすぐこの城も崩れるでしょう」
「案外早く決着がついたのね」
「私が最期まで御側についておりますよ」
「ありがとう久作。私今、とても幸せだわ」
「生まれ変わったらもっと幸せになりましょう」
「そしたら、あの夢みたいに、またおはようって言いあってくれる?」
「えぇもちろん」
「あの夢みたいに、隣に座ってくれる?」
「もちろん」
「あの夢みたいに、貴方と食事が出来るかしら」
「もちろん」
「あの夢みたいに、また、本を読んでくれる?」
「えぇ、もちろんです」
「約束よ」
「約束致します」
「ありがとう久作、大好きよ」
「俺もだよ名前」
夢、淡き光に消え「おはよう久作!」
「名前、おはよう」
「今日不思議な夢を見たわ」
「どんな?」
「私も久作も昔の服に身を包んでいて」
「うん」
「おはようって言いながら変な建物の中を歩いてるの」
「城?」
「ううん、なんか解らないけど平屋みたいな」
「んー?」
「それでね、私と久作はずっと一緒だったのよ」
「へぇー」
「不思議な夢だったわ」
「それは確かに不思議な夢だね」
「でもなんだか、今と何も変わんないような感じだったなぁ」
「そう。なんだか解んないけどそりゃいいことだね」
「うん、なんだか幸せ」
「お前は簡単に幸せが手に入るなぁ」
「なんだその言い方!コラ待て!」
「早くしないと遅刻するぞー」
今、淡き光を灯す