キリ番ヒット ささぬま 様リクエスト
マイ・ボディガード番外編
「苗字さ、ん、…お、おはよ」
「…おはようございます」
「よー陰陽師!おはよ!!」
「い"っ!!っ、…お、おはようございます」
バシッ!!と強く背中を叩かれ、一歩よろけて前のめりに倒れそうになってしまった。
「っと、名前大丈夫?」
「ごめん孫兵…ありがと」
パッと出された色白い腕に捕まりなんとか体勢を整えられたものの、それが悪かった。ほらまた、と指をさされるように他クラスの子やらに影から何やら言われているのがすぐ解る。
「あ…ごめんね名前…僕……」
「あ、いや、その、大丈夫だから…」
「名前ー、早くしないと授業始まっちゃうよー」
「待って藤内」
先日の三之助と左門の一件があってからこの体質も必ずそばにいるこいつらの存在も隠すことなんて出来なくなってしまったわけなのだけれど、私に見えていても他の人たちには見えてはいないようで…。やっぱり一人で喋っているように見えてるんだろうな。
誰も何も言ってこないし、指さすようにあいつが陰陽師って呼ばれてる…なんて悪いんだか良いんだか解んない陰口もたたかれているし…。
あの日私の弁当をひっくり返して三之助と左門にズタボロにされたあのDQN集団はあれから一切私にかかわっていない。むしろ私を避けているようにも見える。怯えてるんだか嫌ってるんだか。
そしてあの一件以来、あのDQN軍団を快く思っていなかった男子や女子はちょいちょい絡んでくださるようにもなった。女子は恐る恐るだけど、男子は、さっきのようにバシッ!と力強く背中を叩いてくるから困ったもんだ。まぁ友達、ではないけど、そういうのちょっと憧れてたし。…陰陽師て呼ぶのやめてくれたら一番いいんだけどね。
幽霊というか、妖怪が見えるし、常に二人ぐらいそばにいるという話をポソリとすると、バカで単純な脳味噌を持ち合わせているであろう男子はスゲー!と目を輝かせたが、
あの現場を見ていない人は信じることなんてできるわけがない。
故に、微塵も信用してない人も少なからずいるようで。
「ねー、あんたが"陰陽師"とか呼ばれてるやつー?」
こうして面識もないのに絡んでくる人は、まだいらっしゃる。
「…だったらなんでしょう」
「なにその目、ウザ。っていうかなにそれ?ゆーれい見えるとかどうせ嘘でしょ?厨二こじらせてんの?まじかわいそうな頭してんねー」
甲高い笑い声でキャハハと喚き散らす化粧の濃い女3人。どうしてこういう女は集団でないと攻撃を仕掛けることができないのでしょうか。単独行動しろよ。文句あるなら一人で来い。
恐らく私に害を与えるであろう人間の登場に、孫兵と藤内はぴたりと私の横についた。
「…信じるも信じないも貴女次第です。今は廊下を通りたいので、其処をどいてもらえませんか」
「はぁ?まだ話の途中なんだけど。何その態度、キモいっつってんの。なにがおんみょーじよ」
階段を上がりたいのにその先に立たれては階段を上がることが出来ない。もうそろそろチャイムが鳴るだろうから階段には誰もいない。っていうかなんでこいつらもこんなギリギリな時間にこんな場所で私なんかの待ち伏せしてんだろ…。頭おかしいのかな……。
突然の見たことのない女(恐らく同級生)にむっと孫兵と藤内が顔を歪めた。ああああ、神様どうかこの二人が変な行動をとりませんように…!
孫兵の毒は入れば7歩以内に致命傷を負わせるし藤内は天邪鬼だから何するか解んないし、喧嘩っ早い左門と三之助がいなくて本当に良かった…!!あの二人だったらまたこいつらズタボロにしてる……!!
「そーゆーのやめてくんなーい?目障りなんだよねぇ、ゆーれい見えるとか嘘言って注目集めようとすんの、まじでキモいから」
「…あの、っ!!!
『そういうのやめてくんなーい?目障りなんだよねぇ、そのきったねぇ化粧とくっせぇ香水ふりまいてぶっとい大根みたいな足晒して注目集めようとすんの、まじでキモいから』
「…っ、ハァ!?今なんつった!?」
背筋がぞぞっと冷え、それは藤内が私に絡みつくように抱き着き体を乗っ取ったのだと理解した時には時すでに遅く、腕は勝手に持ち上がり指はビシッと女を指差して、耳元で喋る藤内の言葉がそのまま、私の口から出ていってしまった。意思とは全く関係のない行動、言動。ああ、天邪鬼に乗っ取られた。
私の頬に藤内の頬が当たり、ふふといたずらっ子のように藤内が微笑んだのがすぐに解った。
天邪鬼とは、地方によって伝わっている内容は違うが、「人の口真似なので人をからかう妖怪」というのが一番有名だ。
藤内はからかうというか、完全に一戦しかけるような言い方をして私の口を乗っ取るので本当にやっかいだ。
それに今回の相手はこのDQN女。「すいません今の私の意思の言葉ではないです」と言ったところでこいつらは絶対に信じない。声は完全に藤内の声なのに、これにすら気づかないなんて……。
さてどうするかなぁ。
「テメェ今なんつった!!ぶっとばすぞ!!」
『テメェこの距離で聞こえねえのか!!ぶっとばすぞ!!』
「〜っ!調子のってんじゃねぇブス!誰に向かって言ってんだよ!」
『調子のってんじゃねぇドブス!鏡見て言ってみろよ!』
真っ赤になりながら逆上するように私の胸ぐらを力いっぱい掴み、テメェ!と口を荒げた。あああ藤内お願いだからその辺にしておいてください誰もいないとはいえこの状況はなかなか最悪すぎる…。早く教室に行きたい…。
『ねぇ孫兵、もういいでしょ?』
「ッ!?イヤァッ!」
その言葉が私の口から出たその瞬間、目の前にいた3人が叫び声をあげて尻餅をつき、紐でぎゅっと結ばれたように身体が一か所にまとまってしまった。
ほわりと体が藤内から解放されたように軽くなる。身体から重みが無くなって、改めてその叫び声を上げ座り込んでしまった三人組を見下ろすと、女の体がギチギチと何かに縛られる用に腕が締め付けられていった。原因不明の痛みか、其れ故の恐怖か、女の目には少しずつ涙がたまっていった。
見えないのに徐々に締め付けられる身体。
正体は、七蛇歩の孫兵の身体だ。
何を考えているのか、女三人を締め殺そうとしている孫兵は徐々に口をその女の耳元に近づけ、
聞いたことのない地を這うような低い低い声で、
『 もう一度名前に手を出してみろ。今度は貴様ら全員噛み殺してやる 』
そう、リーダー格である女の子の耳元で言った。聞こえるように喋ったのかな。どんな手を使ったのかはさっぱり解らないが、その声は女の子に聞こえていたみたいで、顔を真っ青にし目に涙をいっぱいため、機械のように細かく細かく頷いた。
孫兵に噛まれれば最後、七歩以内に死んでしまうなんて話がある。実際に声を発してるのが誰なのか、むしろ何なのかも解ってない女なのだろうから、孫兵が見逃してくれただけでありがたいと思っておいた方がいい。
孫兵はキレたら人一人殺しかねないから…。やだよ学校内で毒殺なんて…。誰にも孫兵見れないんだから犯人一生捕まらないじゃない……。
「…てなわけなんで、もう、関わらないでください」
廊下に座り込んでガタガタと震える女子を三人跨いで、私は廊下を進んだ。
「あのねぇ藤内、私の体勝手に乗っ取るのやめてっていつもいってるでしょ」
「いいじゃんか名前、どうせあんな人間、名前がいろいろ言っても聞く耳持たないようなどうしようもない連中なんだから」
「だからってあんな暴言…」
「ブスにブスって言って何が悪いのさ?」
「藤内は相変わらずSですねぇ」
「僕らの契約は名前の命を狙わないこと。つまり、名前身を守ることだよ。これぐらいやらないと名前はすぐまた変な奴らに絡まれちゃうんだから」
「いやいや孫兵、これはやりすぎってやつだよ明らかに」
「作兵衛も左門も三之助も数馬も、名前のこと心配してんだから、」
「だからってあれはちょっとやりすぎではありませんかね……」
廊下を歩きながら、私は己の狂暴すぎるボディーガードと会話しながら教室へ向かった。
明日は別の連中を連れて行くとするかな…。
誰にしようかなー。
左門はすぐにキレるし、
三之助もすぐ手を挙げるし、
作兵衛も容赦なく手出すし、
数馬も意外とキレやすいし、
……あ、だめだ。私のボディーガード誰連れてっても危険すぎる連中だった。
「孫兵、藤内」
「「何?」」
「あのー、…もういいよ、学校来なくて」
「「えぇっ!?」」
「学校ぐらいなんとかなるだろうし…」
「嫌だ嫌だ!学校に名前一人で行けるわけないだろ!」
「なんで僕らの事そうやって突き放すんだよ!」
「やりすぎだったら謝るから!だ、だからそんなこと言わないでよ!」
「名前に捨てられたら僕らどうすればいいの!?」
「す、捨てるとか…っ!言ってないけど…!ちょっと、腕っ、離してよ……!!」
いやいやとしがみつく二人をずるずると引きずりながら教室へ一歩一歩進んでいくのだが、いかんせん二人が重くて全く足が進まない。
あーもう!!誰かなんとかしてよこの妖怪ども!!まだこんなの家に4人もいるだなんて帰るのも嫌になっちゃうじゃん!!!!
別・マイボディーガード「やだやだ!連れてってよー!」
「僕らの事見捨てないで!!」
「離せってば…!解ったから…っ!」
「おい苗字、授業始ま…………何してんだ…?」
「い、いえ別に………っ!!」
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100万ひっとおめでとうござぁぁあぁあああぁぁあぁあああーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
そして楽しいリクエストをありがとうございました!!!!!
私セレクトで孫たんととぅないにさせていただきました!!!おきに召していただけましたでしょうか!!?!?!?
これからも是非「嗚呼、桜か。」をよろしくお願い致します!!!!
伊呂波