私の恋が終わりを告げた。

ずっと片思いをしていた町の着物屋さんの若主人がお嫁さんを貰ったらしい。今日輿入れだって、くのたまの子が教えてくれた。
無理して貯金を崩してあの人に着物を仕立ててもらったり、近くによるたびに超えかけてたり。地味に努力していたのに…。


涙も涸れるほどには泣いた。泣きつくした。

裏山の木の上で膝を抱えて泣いた。



あーちくしょう!なんで私がこんな目にあわなきゃいけないのよ!!




「神様!仏様!御釈迦様!!どうか私にもこの身を守ってくれるような、素敵な恋人をくださーい!!!」




座っていた木の枝に立ち、

そう、大声で叫ぶと、




























「その願い、私が叶えてやろう!」












と、私の叫び声に答えるような声が聞こえた。

























ただし、



うちの委員長の声で。




























「んー……」


もぞもぞと布団の中で寝返りを打ち、戸の隙間から漏れる月の光から避けるように身体の向きを変えた。
今日は休校なんだからお昼過ぎまで寝ていたい。うん、そうする。予定もないし。にしてもんでこんな夜中に目が覚めたんだ。

っていうかなんで戸開いてるんだろ。私昨日閉めたのに。



私は一人部屋だ。誰かが開けるなんてことまずありえない。



「…寒……」


縮こまるように布団にもぐり、横にあったものに抱きついた。あーあったかい何これ…。











………何これ…?









「よぉ!」

「………!?!?!?!?」


寒さとかそんなことどうでもいいほどに頭が一気にシャキッ!!と覚めた。
ガバッと布団を蹴り飛ばして身体を起きあg


「もう起きるのか?まだ子の刻だぞ?」

「な、な!?!?」

「なんだ?どうした名前?」


「こ、ここ、此処で何してるんですか七松先輩!!!」


れない!!!!

起き上がる身体を阻止するかのように腰に(いつの間にか)回された腕に引っ張られた。
ドサリと体勢は元に戻され、私は七松先輩の逞しい二の腕に腕枕されている状態になってしまった。


「見て解らんか!添い寝だ!」

「んなもん知っとるわ!!!」

「名前は体温高いな…。私は此処へ来る途中で身体が冷めてしまって…」

「ギャァァァア!!まじで何してんですかあんた!!ここくのいち長屋ですよ!?!?」

「何って聞かれたら夜這いとしか答えられんのだが」

「やっぱり答えなくていいです!!!」


「安心しろ!いけいけどんどんで優しくしてやるから!」

「何勝手に一戦おっぱじめようとしてんですか!ちょ、やめてくださいってば…!!」


「お!名前は意外と力が強いな!なかなか押し倒されてくれん!」

「此処で押し倒されたら完全に終了しますよね!!!」

「何が?」

「私の貞操がです!!!」

「いいじゃないか」

「良くないですよね!?!?」

「私じゃ不満だと言うのか」

「七松先輩の真顔怖ぇええ!!」



グググと恋人繋ぎになっている手を押し返す。ここで流された完全に食われる。まさかの委員長に食われる。


七松先輩に食われる → 確実に孕む


これアカン!!!絶対に流されるわけにいかん!!!
な、中在家先輩は何してるの!?!?同室の方脱走してますけど?!!?首輪してないんです!?!?



「私に抱かれるのが不服か」

「真顔はやめてください!!恐れ多いという意味でですね!!」

「名前、この手の力を緩めろ」

「なにまじでヤろうとしてんですか嫌ですよ!!」

「これはパワーハラスメントだ、屈しろ」

「職権乱用反対!!!」





「何故抵抗する?お前は私の女になったのだろう?」


「……は、」





突然の七松先輩の直下型爆弾に気を緩めて、

手は布団へとドサリと着地した。




「夕方、お前の願いを叶えてやると言っただろう」



「…!? やっぱりあれ七松先輩の声だったんですか…。あ、あれは、ただの……」

「聞き間違いか?」

「…はい、そうだと、思ってました……」


だって、昨夜の夕食のときにお会いしても何もおっしゃらなかったし。
私の空耳かと思って…。


「なるほどな、聞き間違いで私の声を聞くほどに私のことが好きなのだな」

「ち、ちが…!」

「?私のことが嫌いか?好きか?どっちなんだ?」



「ど、……いや、そりゃ、ど、どっちかっつったら、す、好きですけど…」



「なら問題ないじゃないか!」

「いやいやいや」



七松先輩の思考回路ヤベェポジティブすぎだろ…。
どうなってんだこの人…。

両腕を押さえつけられ押し倒されている状態ではあるが、一度この状況を整理する必要がある。
ぐるぐると頭を回転させて七松先輩がしたいこと七松先輩がおっしゃられたことを全て整理する。

あまりにも突然いろんなことが起こりすぎて何が何だが解らない。


うんうんうなっていると、「あのな名前」とつぶやいて、
七松先輩は顔を私の首に擦り寄らせた。



「っ、!せん、ぱい?」

「私は思うのだが、もう終わった失恋を引きずるよりも、無理やり新しい恋見つけたほうが面白いかもしれんぞ?」



……七松先輩はきっと、私のことを心配してくださっているのだろうな。

この人は暴君だが後輩の事をよく見ていてくださっている。




「それに相手はこの私だ!きっと暇はさせんと思うぞ!」




委員会のときと同じような笑顔をにぱっと輝かせ、




「……じゃぁ、七松先輩のことしか考えられないようにしてくださいますか?」

「…今誘ったのはお前のほうだ。後悔するなよ」




近づく七松先輩のお顔で、部屋を覗いていた月が姿を隠した。





















Screw Driver

無自覚にお前を酔わせる














「その1、私の事を名前で呼べ」

「小平太、……さん」

「…テレるな」

「じゃぁ言わせないでくださいよ」


「その2、私に抱かれろ」

「いくらなんでも早すぎませんか?」
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