「ででーん!お父さんスイッチ!」
「…?」
「仙蔵も可!!」
ででーんと効果音を口でつけて、私に突き出してきたのは、[あいうえお]と書かれたティッシュ箱だった。
横にはラジコンのリモコンのアンテナのようにストローがついていて、
名前はそれを私に突き出してきた。
お父さんスイッチとは。
「…私はまだ18だが?」
「ち、違う!仙蔵をお父さんだと言ってるわけじゃないから!」
名前はあわてて私に訂正を入れた。
それ知ってるぞ!と間に入ってきたのは、横で弁当を食べていた小平太だった。
どうやら教育テレビでやっているものらしくて、
あいうえおのボタンを押されたら、
その一文字から始まる行動をとらねばならないらしい。
いわゆるあいうえお作文のようなものだと小平太は説明した。
「…なるほどな」
「授業中に作ってたんだ!」
「何をしているんだお前は」
「急に僕にティッシュ箱ある?って聞いてきたから何かと思ったら…」
「お前こんなもんつくってたのか」
「すごいでしょ。一時間クオリティにしてはいい出来じゃない?」
弁当を置いて箱をぽんぽんと投げる名前は
その箱を大層気に入ったらしく
参りますよと言ってアンテナを私に向けた。
「仙蔵スイッチ、あ!」
「……愛しているよ、名前」
「は!!?!?」
顔を真っ赤にして箱を手からポロリと落とす。
それを小平太がキャッチして
「ちょ、小平太!」
「仙蔵スイッチ!い!」
「…いつでも名前のことを考えている」
今度はそれを長次が受け取り
「仙蔵スイッチ…う…」
「運命の相手はお前だ」
留三郎が箱をくるくると回しながら
「仙蔵スイッチ、え」
「永遠に私のそばにいてくれ」
伊作が最後にボタンを押して
「仙蔵スイッチ、お!」
「おいで、名前」
恋愛スイッチ「それは反則じゃないの仙蔵」
「私の言語力を侮っていたのか」
「いやそういうわけじゃなくてさ…」
文次郎が欠席理由ですか?
鉄粉おにぎりで腹を下しているからです。