「文次郎?久しぶり!」

「名前、か?」

「久しぶりだねー。500年ぶりくらい?」

「そうだな」

「この駅使ってたんだ。知らなかったぁ」




電車が発車します 駆け込み乗車は……―




「あ、各駅だからこれ乗る。文次郎は?」

「俺は急行待ちだ」

「そっか、じゃぁね」

「あぁ、じゃぁな。じゃねぇよ!!!!!!!!!」

「えっ」



ドアが閉まる直前にやっと事の重大さに気付いて名前の腕を引っ張り電車から下ろした。



「何普通に別れようとしてやがる!!」

「なんで下ろしたのこれ乗りたかったんだけど!」

「バカタレぇい!そういうことじゃねぇだろうが!!」

「なんなのよもう!!」

「おま、500年ぶりだぞ!!生まれ変わってやっと逢えたってのにたったこれだけで別れる気か!?」


「………………………………………………………ハッ、文次郎生まれ変わってたの!?」

「遅いわバカタレェェエエ!!!」



今の電車に全員が乗っていったのか、ホームには誰もいない。

馬鹿みたいなやりとりをしていても誰も気に留めない。



久しぶりに見た名前は、やっぱり昔とは違った。


この次代の制服に身を包み、

昔のように髪を上げているが

あの時とは違った物で髪を縛り上げている。

顔に傷はない。

掌にも傷はない。

血を流していない。

涙を流していない。



今目の前で、名前は、生きてる。




「…お前のその呑気なところは500年たっても変わってねぇのな…」

「テレるわー」

「褒めてねぇよ」


名前はベンチに座って

俺は自販機でジュースを買い、ほらよと渡す。



「ありがとう」

「おう」



次の電車まであと10分。

10分。



…10分も、一緒にいられる。





「ね、最後に文次郎にあったときさぁ」

「…」

「文次郎みつけて、すぐ死んだじゃん?」





仙蔵が、あの戦場に名前がいると

俺に情報を寄越してきて

その戦場に駆けつけたとき

其処にいたのはボロボロになった名前だった


声をかけて抱き上げた瞬間、

名前は満足そうに笑って、すぐ死んだ。







「たった1秒。最後に文次郎に逢えたの、たったの1秒だったんだよ」

「…そうだったな」

「嬉しかったなぁ。1秒だけでも、文次郎に見つめられて死ねたの」






あの1秒がなければ、俺はあの時涙を流さなくてすんだ。

あの1秒がなければ、俺はお前を愛したことを後悔せずにすんだ。


あの1秒がなければ、生まれ変わってまでお前を探すことは無かった。






「文次郎が乗る次の電車まで、あと10分もある」

「あぁ、そうだな」

「10分も喋ってられるんだよ。凄く嬉しい」





長いな。

凄く長い。




1秒が600回もくるなんて。



気が遠くなるほど長ぇな。






「じゃぁさぁ、文次郎と此処で楽しく喋ること10分。

その内4分は過去の話しに華を咲かせて」






名前は俺の手を握った。







「その内6分はこうして手を握って」






名前は俺の眼を見た。





「その内の5分はこうして文次郎の眼を見て話すね」





俺は名前を抱きしめる。





「…これは何分する?」


「……うーん、出来れば……ずっとがいいなぁ」

「はっ、じゃぁそうすっか」







遅くなって悪かったな



そう呟いて、


俺と名前は、


やっと涙を流した。




























ロスタイム:永遠









「じゃぁ今からデートしよう」

「あぁいいな」

「仙蔵は?元気?」

「仙蔵には逢った。他のやつらは…」

「そっか。ま、時間は腐るほどあるし、のんびり探そうか」

「そうだな」
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