晃 様 リクエスト
僕は迷わず追いかけた 続編















「鍋はここで買える。一年生はそこまで薬学ガッツリ勉強するわけじゃないから小さめので構わないよ」

「羽根ペンとインクはその店でこの銘柄を買っておいで。品質は四年間愛用し続けてる私が保証する」

「あぁ、一年生で個人箒の持ち込みは禁止なんだ。個人的に練習がしたければ私のお古を貸すよ」

「フローリッツ・アンド・ブロッツ書店という本屋へ行ってきな。メモに書いてある教科書を全て買ってくるんだ」

「杖は高くても自分の身に合ったものを買った方がいい。その方が後々の授業やらが楽になってくるはずだ」


「そうだ、お金のことなら心配しなくて良い。君は家庭の事情があって特例だ。全て、学園の方で負担してくれるよ」



狭いけど、あっちこっちに人がいて、あっちこっちに見たことの無いものがあって、僕もジュンコも興奮せずにはいられなかった。

尼崎横丁という場所は、魔女や魔法使いが必要なものを買い揃えに来る場所で、紀元前からやってる杖の店や、大中小全てのサイズが揃った鍋を扱ってる店。箒を専門とする店や、店中本で埋め尽くされた店なんかもあった。

買い物を手伝ってくれた名前さんは、僕の買い物のついでに自分の買い物も済ませていた。

手にしたことも無いものを大量に買い込み、大きなカートにつんでいく。こ、これ本当に全て学園で使うものなんだろうか…。


「あ!名前先ぱーい!」
「おーハチ!今年もよろしくね!」
「いえ、こっちこそ!…そいつは?誰です?弟ですか?」

買い物を続けていると高身長で切れ目の、髪がボサボサしたちょっと怖めの男の人が名前さんに話しかけた。

「いや、例の伊賀崎くん。無事入学手続きを終えたよ」
「へぇそうですか!お前があの伊賀崎か!」
「え、あの、って?」

「うちの学園で、学期末に話題に上がっていたんだ。"入学許可書に返事を寄越さない家庭がある"ってな」
「入学許可書を無視してくれた家庭は、うちの学園始まって以来の事件でね。どんなやつだって皆で面白がってたんだよ」

「そ、そうなんですか」

話題が話題なだけに、少し気分はよくないが、もうすでに先輩方に知られているという事実に少し恥ずかしくなって、顔を赤らめた。

「聞いて驚けハチ。しかも孫兵くんは、先天的のパーセルマウスだ」
「なっ、マジですか!?」
「首の蛇、ジュンコさんと話が出来るんだと」
「……ハハハッ!こいつはまた凄い新入生が来ましたね!綺麗な蛇だな!おい孫兵!」
「は、はい!?」

「お前、是非うちの魔法生物飼育委員会に入れ!お前の気に入る蛇や虫が大量にいるぞ!きっとお前に向いている!」

「とかいって、本当は人数不足なだけのくせに」
「…言わないでくださいよ…。じゃぁな孫兵!良い返事期待してるぞ!学園で会おう!じゃ、名前先輩、失礼します!」
「あぁ、三郎たちにもよろしく言っておいてくれー」
「了解ッス!」


嵐のような人だな、というのが第一印象。

でも、初対面の僕に「気持ち悪い」とか「気味が悪い」とか言わなかった。ジュンコのことも綺麗だと言ってくれた。とってもいい人だ。

これから行く学園は、そんな人たちがいっぱいいるんだろうか。


「魔法生物飼育委員会は色んな生物の飼育をしているよ。バカデカい蜘蛛やデカい蛇、あとは授業に使うピクシーやボガートの世話もしなきゃなんない。ちょっと大変だけど勉強にはなる。それから特例で暗黒の森にも入ることが出来る。それは委員長の竹谷だけだがな」
「え、えっと…」
「言ったところで今はわかんないか。入る気になったらハチに言ってみるといい。一通り見せてもらえるはずだからね」

さ、買い物を続けよう。そう言って僕のカートをガラガラと推し進めた。

あ、名前先輩。多分そのお菓子は買う必要ないと思います。

















「ってなわけだ。大体の学園の仕組みはわかった?」
「はい、なんとなく、ですけど…」
「まぁ入学式に改めて説明があるだろうし、そう固くならなくて良いよ」

壁をすりぬけるという信じられない行動をとった後、目の前に広がるのは、真っ赤で綺麗な列車が煙を吹く駅のホームだった。荷物を駅員に全て預けて、僕とジュンコと名前先輩はまだ誰もいない個室へ入りイスに座った。
暫くして大きく汽笛が鳴り響き、列車は発車した。さっきまでいた駅が遠ざかり、今は右手に山が、左手に草原が広がる綺麗な場所を走っている。これから2時間程かかるみたいだ。

座りながら、これから行く学園のことを教えてほしいと僕は名前先輩にいっぱい質問をした。
僕の知っている学校とは全然違うルールばかりで、これが現実だというのが信じられなくて、でもわくわくした。

あ、ちなみに僕の家で魔法を使ったのは絶対に秘密らしい。未成年がマグルの世界で魔法を使っちゃいけないんだって。これは墓場まで持っていこう。


「…」
「…どうしたの?なんか元気ないけど」
「…正直、不安です。僕はマグル生まれ、ってやつだって教えてもらいましたし。魔法のことなんて何も知らない。きっと授業の内容もちんぷんかんぷんで、同じ寮の子を引っ張るかもしれない」

ジュンコが慰めてくれるように頬をすべる。
これが僕の正直な気持ちだ。僕はつい最近まで普通の学校へ通っていたのだ。それなのに急に魔法学園に行くだなんて。不安すぎる。

「それに、…」
「それに?」
「と、友達だって…」

できないかもしれない。


そう言おうとしたとき、閉められていた部屋の扉が叩かれた。あれは誰だろう。名前先輩の、後輩かな?

「どうしたの?」と扉をひらくと、青い髪の方の人が「あ、あの」と口を開いた。


「た、大変申し訳ありませんが、その、相席をさせていただけないでしょうか」
「もう他の席が空いてなくて…」

「君たち新入生だね?いいよ、ここは二人だけなんだ。遠慮なく入りな」

「「ありがとうございます!」」

名前先輩が二人のトランクを持ち上げ、頭の上に乗せた。二人は僕の横と、僕の正面に座って

「僕、浦風藤内って言うんだ!母がマグルで父が魔法使い!半純血!今年から大川に通うことになったんだ!よろしくな!」
「僕は三反田数馬!藤内とは尼崎横丁で知り合ったんだ!あ、ちなみに僕マグル生まれなんだ」

そう笑顔で言った。同い年。一緒の新入生だ。

「三反田くんはマグル生まれなんだね?」
「は、はい。お恥ずかしいですけど…」
「恥ることなんてない!マグルから魔法使いが生まれるってことは、君は選ばれた者ってことだよ!この孫兵くんもね」

「き、君もマグル生まれ!?よかったぁ僕だけだと思って不安だったんだ…!ね、名前は?」

「ぼ、僕は伊賀崎孫兵。こちらの名前先輩にここまで連れてきてもらったんだ。こっちは友達のジュンコ」
「や、苗字名前。四年の呂組だよ」

「宜しく願い致します!…わ、綺麗な蛇だね」
「まいったな、蛇と仲良くなる予習は全くしてこなかった…」

この人たちも、僕らを拒絶しなかった。
扉の前で立ち僕らを見守る名前先輩は座ろうとしたのだが、また扉の方を向いた。

コンコンと聞こえたということは、また誰か来たのだろうか?


「すいません、ここに作兵衛いませんか?」
「え?作兵衛?誰?」
「作兵衛は何処だー!?」
「空いてる席探してくるって出て行ったっきり帰ってこないんスよ」

「俺は後ろだいい加減にしろテメェら!!なんで勝手に出歩いてやがr…せせせ先輩に迷惑かけてんじゃねぇよ!!戻れ!!!」

「いや、いいよ。その真新しいトランク、君たちも新入生だね?ここを使うと良いよ。今ここは新入生の溜まり場になってる」


名前先輩の後ろにからヒョコりと顔を出したのは、また僕らと同じような歳の三人だった。「ありがとうございます!」と名前先輩に声をかけ、三人はイスへ腰掛けた。

「僕は神崎左門!父がマグルで母が魔女の半純血なんだ!」
「俺は次屋三之助。俺は純血」
「俺は富松作兵衛。俺も純血だ!この二人は尼崎横丁で保護…というか、捕獲した!」


三人ずつ座り、また一通り自己紹介。この三人も僕を拒絶しなかったし、ジュンコを綺麗だと褒めてくれた。

魔法族には良いやつもいれば悪いやつもいる。そう名前先輩は言っていた。一抹の不安はあったのだが、ここにいる皆はそんなことないと言い切れる。
本当に嬉しかった。初対面で僕を、ジュンコを、受け入れてくれたというこの事実が。


もう席が埋まってしまい座る場所の無くなってしまった名前先輩は、部屋の扉へ手をかけ、笑顔を僕らに向けた。


「いいかい皆?よく聞きな!これから2時間後、君たちは見たことも無いような世界に足を踏み入れる!

興奮冷めやらぬ気持ちは痛いほどに解るが、その前に荷物をまとめておくこと!ローブに着替えておくこと!そして思いっきり親睦を深めておくこと!

それからこの後お菓子を売りに来る売店のおばちゃんが来る!ここであったのも何かの縁だ!おばちゃんにお金を渡しておくから好きなだけ食べるといい!

私は二両目にいる!困ったことがあったら遠慮なく聞きに来なさい!


大川魔法魔術学園へようこそ!新入生の諸君!」














君らの学園生活に幸多からんことを!

きっと楽しい毎日が待ってるよ!
























「やぁ長次!小平太!一緒させてー!」

「おぉ名前!遅かったじゃないか!」
「…もそ……」

「いやぁヤボ用でね」

「…聞いたぞ。…例の、新入生の迎え、……名前が任されたようだな…」
「何!?本当か名前!」

「うん。良い子だったよ!しかも、まさかの先天的パーセルマウスだった!」

「なんだとぉ!?うーんなるほど!それは是非ともうちの寮に欲しいな!な!長次!」
「もそ…」







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リクエストありがとうございます晃様アァァアアアア!!!!



実はこの作品、主人公を孫兵にするか名前ちゃんにするか
結構最後の最後まで悩んだんですねー。

ちなみに名前ちゃんが孫兵ポジションだった場合、
名前ちゃんを一年生設定にして

迎えに来るのは六年生の誰かか
教師設定の利吉さんか土井先生の予定でした。
(私の願望がギュッ)


いや孫兵にして正解でしたわ!!!!!!
三年生まじ可愛いですもんね!?!?!?!?!?


僕は迷わず〜の続編をリクエストされるとは思いませんでした!!!!!!
ちょっと楽しくなって長く書いちゃいましたよごめんなさいね!?!?!?!?


楽しいリクエストありがとうございました!!

これからもお暇がありましたら
「嗚呼、桜か。」に遊びに来てくださいませ!!

伊呂波

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