手編みのマフラー



場違いも良いトコだ。こんな私がかの立花邸に足を踏み入れることになる日がこようとは。

「名前、楽しんでいるか」
「あgyふdsfjkなfvd」
「何か食いたくなったらいつでも言うんだぞ」
「sjきdじゃお」

立花先輩は燕尾服のようなモーニングのようなタキシードのようななんだか良く解らないけどとにかくカッコいい服装をしていて、もっさい私の頭を撫でて何処かへ行ってしまった。デカいシャンデリア。デカいツリー。やたらと上手そうな食事が並んだテーブルを囲んでいるのはあのVIP集団の六人。ハァァアアアいつもの制服もカッコいいけどスーツ?燕尾服?なんなの?あぁいうのが似合う高校生って何?色気ヤバくない?っていうか潮江先輩のスーツってなんだよ保護者かよ。授業参観に見えるわ。

だがしかし問題は、私が普通に学校の制服を着てきてしまったという事。なんでそうなったってそりゃぁゲームと漫画に人生を捧げてきた私。そんな私が七松先輩から立花邸で開催されるクリスマスパーティーの招待状を持ってくるなんて、予想することができるわけがない。小平太の彼女も呼べと言われて、七松先輩は私を招待(拉致)することに決めたらしい。そんでもってその話を聞かされたのが昨日。昨日の今日でパーティー用のドレスなんて用意できるわけがなく、っていうかドレスコードがあるなんて話聞いてなかったから用意するにもできなかったわけでありまして。私が持っている服の中で一番おしゃれなのは制服。いやこれマジ。私服とかないに等しい。そんなことも知らずに制服で待機しているところに立花家からの迎え…。まじで立花先輩はどっかの御令息だと思ってたけど、これケタちがいすぎる…。私場違いにもほどがある…。まじむり。リスカしょ。

「…もしかして小平太から…何も聞いていなかったのでは…」
「ヴァッ!!ながざいげせんばい!!」
「……すまない…私から言っていれば…」
「あtfsdぎゅいあhじょk!!っわあわわ私の方こそまともな服すら持ってなくて申し訳ないというか恥ずかしいというか介錯をお願いしたいというか」
「…制服でも…十分可愛い……」
「fgヴぁえyhdすygsbhjなffじょえs!!!!!!!!!」

あああああああああああああああああああああああの中在家先輩から甘い言葉を頂いてしまったうぇぇえええええええええええいい!!!!!!っていうか此処のパーティーに参加してる人たちって顔面偏差値高杉内!?!??しかもあの人テレビとかで見たことあるし!!絶対政治家的な誰かだって!!慣れない煌びやかな場所で一人たたずむ私の悪目立ち感半端ねえな本当に。豪華なパーティー手に制服で参加とか空気読めてなさすぎクソワロタ。肝心の七松先輩はさっきから肉ばっか食いまくってるし、友達なんているわけもない、私は一人窓からバルコニーに出た。バルコニーってなんだよ。城かここは。城だったわ。

「ぶぇっ普通に寒い…」

部屋の中との温度差にまず驚いた。立花邸の暖房の使い過ぎ加減よ…。地球温暖化に協力しすぎか。ケータイを取り出し画面を開くと、鬼の様なLINEと着信の数。おそらく「立花邸でクリスマスパーリナイ」とツイーョしたから、それをみた友人たちの反応だろう。LINEの内容は先輩方の私服写メを撮ってきてくれという事だろう。残念だが燕尾服だったよ。お前らにはまだ刺激が強い。制服で我慢してろ。

「名前!!!!!!!!」
「はい!!!!!!!!」

バン!と開かれた窓の向こうから物凄い温風が飛んできた。やっぱり立花邸温度高杉。

「やっぱりここだったか!どうした一人で外に出て?暑かったか?」
「あ、え、や、その、……場違い感が否めなくて…」
「何を言う!お前は十分可愛いぞ!!」

よく言うよ!!ドレスコードのこと忘れていたくせに!まぁ着たところで馬子にも衣装よ!!解ってたけどね!!

「あ、あんまりこう言った場所に参加したことがないもんですから…」
「そっか。去年は伊作んちでやったんだ!毎年あみだくじで決めてるんだぞ!!」

毎年あみだくじで会場を決められるって、各々の家はいったいどうなってんだ。善法寺財閥とか言うんじゃないだろうな。七松先輩はどう考えても組の人にしkゲフンゲフン

「でも今年はいつも以上に楽しいな!」
「へ」


「だって名前と一緒なんだぞ?こんなに嬉しい事はない!!」


ああああああああああこれですよこれこれ!!これが七松先輩の事を嫌いになれない理由の一つですよ!!仮にもお付き合いさせていただいている身ですけどイケメンにこんな嬉しい事言われて嬉しくないわけないですよねええええ!!!

「…あっ、そうだ、せ、先輩」
「おう、なんだ?」
「これ、く、クリスマスプレゼント…です……」

私はオタクはオタクでも手先の器用な方のオタクだ。今年はベタだけど、手編みのマフラーなんてものを作ってみた。七松先輩に似合うと思って、深緑色のマフラー。正直、七松先輩の好みなどまだ何も知らなかったから、何をプレゼントすればいいのか思い浮かばなかったのだ。好きな物と言えばあのゲームだけ。グッズとかでもいいけど、あんまりそういうの集めない人だっているわけだし、選択肢はこちらを選んだ。

「え!?マフラー!?凄いなこれ!?手編みか!?」
「あ、は、はい一応…」
「すげー!すげー!ありがとう名前!大事にするな!!」
「んんんん!!」

七松先輩の今年一番の笑顔を頂けただけで名前は成仏できるであります!!!!!重い女とか思われたら嫌だなぁとは思っていたけど、予想は反面。七松先輩は想像以上にマフラーに悦んでくださった。すると七松先輩はもこもことマフラーを首元に巻くと、ちょっと待っててくれ!と言って立花邸に再び戻っていかれた。しばらくすると七松先輩は立花邸からやたらとでかい熊のぬいぐるみを持って来た。

「これクリスマスプレゼントな!!!」
「デカい!!!!!!」
「可愛いだろ!!!」
「ちょっとした小学生のサイズですよこれ!!??!」

持って来たというか、抱えてきた。まさかわざわざこんなものを立花邸まで運んできてくださったというのか。うわあああ嬉しいけどデカいいいいい。


「あれだな。私名前がなにを好きなのかとか、そういうの良く解らんということがプレゼント選びで良く解った。私もっと名前の事知りたいぞ!来年はもっとたくさんお出かけとかしような!」

「…わ、私も七松先輩の事、あんまり知らないって…や、やっと気づきました。ら、来年も何卒、宜しくお願い致します…」
「うん!大好きだぞ名前!」
「アザス!!!ワタシモナナマツテンパイガあgsbhjんdmきいft!!!!」


そうだ。もっと七松先輩の事を良く知ろう。そしたら来年は、もっと七松先輩が喜ぶようなプレゼントを贈ることができるかな。もっとたくさんオシャレもして、七松先輩の横に立ってても違和感ないぐらい、もっと自分の事にも気を使おう。そしたら来年はもっと、素敵なクリスマスが迎えられるかな。しかしまぁクリスマスパーリナイ中だってのに来年の話するとか

「鬼も笑うわ!!!!!」
「どうした名前!?」
「なんでもないです!!!」



Merry Christmas



「ところでこれどうやって持って帰ればいいんですか…」
「あ、考えてなかったわ」
「ヴァッ」
<<  
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -