これだからクリスマスは嫌な予感はしてた。結構前からしてた。いやだってそりゃぁするでしょう。一緒にショッピングしてる時、しきりにサンタさんコスしてるお姉さんを見つめていたんだもの。 「……あのさぁ勘ちゃん」 「何?」 「私…こ、こういうのはちょっと…」 キラキラした笑顔で私を見つめる彼氏がくれたそのクリスマスプレントというのは、所謂ミニスカサンタさんのコスプレ衣装というやつだ。 「可愛いよね?」 「いや可愛いけど…」 「ね!でしょ!着てくれるでしょ!」 「……いやぁ…」 私は勘ちゃんに、前から欲しがっていた腕時計を贈った。箱をあけた瞬間の勘ちゃんの100万ドルの笑顔で、私は良い事をしたぞという満足感に浸っていた。だから、勘ちゃんからのプレゼントがなにであろうと全力で喜ぼうと思っていた。今年で三回目のクリスマスだけど、今迄勘ちゃんがくれた物はアクセサリーだったりバッグだったりで日常として役に立つものばかりだった。だから今年も、と、そう望んでいた。そう、数日前までは。 「何が良いってこれガーターベルトまで付属されてるってとこだよね」 「いやいやいやいや」 「名前なら似合うと思って買っちゃった」 「いやいやいやいやいやいや!」 あまりにもこの後の展開が、読めすぎて困っている。彼氏の家。終わった食事。まだ手の付けていないケーキ(生クリーム)。エロいコスプレ。12月25日。もう、もう、もう!!!!! 「酷い事するつもりでしょう!エロ同人みたいに!」 「何言ってんだよそれしかないだろ!」 「ヤる気満々じゃないですかやだー!」 「大体さぁ、俺だって男だし!こういうの夢みるし!」 「やめてよそうやってどうあがいてもエロ展開に持っていこうとするの!」 性なる夜ってか。やかましいわ。 解ってた。解ってたよ。どうせこの後事に及ぶんだってことは手に取るように解ってたよ。だって過去三回がそうだったんだし。今年も性なる夜になるって解ってた。心の準備は出来てた。だけどね、だけどだよ。まさかコスプレしてからっていうのは完全に予想外の展開だったよね。つまりあれか。勘ちゃんはお店のサンタ衣装のお姉さんが可愛くて見とれてたんじゃなくて、私が着たら似合うだろうなぁと思っていたって事か。そんなことも気づかないなんて私はなんて警戒心の弱いやつなんだ。自分のことながらがっかりする。 「……着てくれないの…?」 「ち、チクショー!!」 そして勘ちゃんの上目づかいに弱い私のこの体質にも本当にがっかりする。勘ちゃんも勘ちゃんだ。この顔をすれば私の胸キュンメーターが限界点を突破するというのを解っているうえでの計画的犯行。こいつまじあざとい。やむを得ず私はその服を持って勘ちゃんの寝室に移動した。見れば見るほど際どい衣装だ。こんなもん着て興奮するなんて男の気が全く知れない。まぁ確かに見た目って結構大事だと思ってる。同じワインでも紙コップで飲むのとワイングラスで飲むのとでは気持ちの問題から違くなるだろう。もちろんワイングラスの方が良いに決まってる。普通の服よりもこういう日はコスプレしてほしいってか。くそ…ふざけんなよ…。 しぶしぶ服を脱いではそれに腕を通し、窓ガラスに反射させて自分の格好を見た。まぁ、似合って…なくはない。しかしスカート短いなおい…。少しでも屈めばパンツみえるわ…。 「名前、まだー?」 「はいはいお待たせいたしました」 「うは!思ってた以上に興奮する!超可愛い!ヤらせて!」 「うわぁぁ思ってた以上にクソ野郎!!」 今に戻ったのも束の間。出た瞬間にひざ裏に腕を入れられて寝室へ逆戻り。背中に来た衝撃はふかふかで、あっという間にベッドの上に乗せられたことに気が付いた。 「やだよ!まだケーキ食べてないじゃん!」 「そんなん後ででいいじゃん!俺が我慢できない!」 「待って!お願いだから待って!ケーキ先に食べたい!ケーキ先に食べたい!!」 「俺は名前が食べたい!」 「こいつ何も聞いてない!」 ベッドの上での取っ組み合い。はたからみたらこんなもん珍百景登録待ったなしだ。馬乗りの勘ちゃんをどうにかしてどけようと必死に暴れていたのだが、私の抵抗もむなしく、両腕はベッドに縫いつけられてしまった。事に及ぶ前から息切れしてる二人。こんなクリスマスみたことない。 「ケーキは後でていいでしょ?」 「えぇ…もうなんでも…いいです……」 「名前可愛いよ。愛してる。本当に大好き」 「うん。まぁコスプレ衣装よこしてきたヤツの台詞じゃないけどね」 結果的に毎年のごとくイチャコラして一晩を過ごしたわけでありまして。リビングに出しっぱなしにしていたケーキはクリームが溶けてしまったので、それをみた尾浜氏が興奮して、第二ラウンドに入ったわけでありまして…。 Merry Christmas 「ちょっと本当…勘弁して…」 「生クリームプレイやってみたかったんだ」 「死んで……」 >> |