「来たぞ。姿を現せ」


ざっと、10人ほどに囲まれているのだろうか。
くのいちとはいえ今日は話し合うだけといってある。攻撃をしてくるようならば躊躇なく殺す。

そんなくだらない時間のためにここにきたわけではない。



日も落ち明かりもない中たどり着いたのは裏々山頂上付近にある小屋。
多分此処は旅の者が使うような小屋だろう。

その屋根に腰かけ、くのいちが姿を現すのを待つ。


「あぁお前か」


足元に現れたのは、同い年のくのいち。
屋根に座る私を見上げる形で其処に現れた。


「他にもいるけれど、私が代表よ。手は出さないで頂戴」
「それは俺の台詞だ。お前らくのいちは野蛮で何をしでかすか解らん。少しでも牙を見せれば俺も刀を抜かせてもらうということだけは覚えておけ」


組んでいた脚を組みかえると、腰につけた刀が音を鳴らす。
周りの気配が少し乱れるが、目の前のこいつの殺気に全て消える。


「恐ろしいな」
「貴方こそ。…忍たま達はどういうつもりなの。あんな女でいつまで遊ぶつもり?」


さっとそく本題に入るか。

いいだろう。そのほうがいい。私も長話は好きではない。


「どうもうちの上級生は三郎と勘右衛門を抜かして全員がやられているようでな」

「貴方の後輩は優秀なのね?」

「クラスの手本になるのが、学級委員の仕事だからな。」

「貴方は?」

「確かに彼女は可愛いな。だが、俺にも女の好みはある」



大体、同性は好きにはならない。とは、言わないが。



「……まぁいいわ」

「今日呼んだのはそれだけか」

「いえ、あの女のせいでくのいち教室にも影響が出始めているの」

「…何?」


「四年生それから五年生の後輩で、忍たまの子と付き合っていた子、それから許婚同士だった子がいたわ。それが、あの女に惚れたのか縁談を破談、そして別れと告げてきた子がいると」

「…」


なるほどな、それは予想外だった。

てっきり毒されているのはあいつ等だけかとおもっていたが、そういう面でも影響が出てきているのか。それは予想していなかった。



「早くあの女を始末して…!可愛い後輩が泣いている姿なんてもう見ていられないのよ!」

「落ち着け、最上級生のお前が取り乱してどうする」

「取り乱したくもなるわ!あの女が此処に来てからくのいち教室もぐちゃぐちゃよ!!」

「…お前は、仙蔵に惚れていたんだったな」

「…!」


愛している男が他の女に夢中になり、鍛錬を厳かにする姿なんて、見ていられないのだろう。

同じクラスのよしみだろうと、何度か相談してきていたな。



「気持ちを伝えてなかっただけましよ…。今私が後輩たちの立場だったら、どうなっていたことか…」

「残念だな、仙蔵もイカれてしまっている」

「…ッ!だったら!」


「俺は先日、学園長先生から"天女の始末を任せる"と一任された」


「!?」


この言葉には予想外だったのか、衆人環視を決め込むくのいちの気も一気に乱れ始めた。


「近からず遠からず、俺は必ずあの女を始末する予定だ」

「ど、どうやって」

「さぁな、それに関してはまだ無計画だ。だが仮にに無策に動き出したとしても、」


屋根から飛び降り、目の前に立つ。











「勘右衛門、三郎、それに下級生と、お前等も付いている。
天女様には必ず、天へとお帰りいただくことになるだろう。」










そういい残し、私は裏々山を後にした。


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