「今だ紐を引け!」
「「はい!」」
「「「ウワァアアァアア!!」」」
「「やったぁ!」」
やはり、私の目に狂いはなかった。
兵太夫と三治郎はよく私にからくりの設計図を見せてくる。最終チェックや、改良すべきところがあれば教えて欲しいと尋ねてくるのだ。
六年が椿という女に夢中になってから、さらに頻度は上がった。多分、仙蔵が頼りなくなったのだろう。兵太夫は仙蔵と同じ作法委員だったな。そりゃ委員会に来なくなった先輩に自分のからくりの設計図は見せられないだろう。というか、見せたくないだろう。
今回二人が仕掛けたトラップは全部で5つだった
落とし穴や、網で釣り上げるものや、その他もろもろ。私が二人の発明の仲で一番好きな扉を開けると別の場所に移動してしまうやつも作っていた。よくこれをあの短時間でセットできたなと感心してしまう。
二人は手を取りはしゃぎ始めるが、此処から先には私に任せてもらおう。
何と言ったって、首をとらねばならぬのだから。
「二人はここで待っていなさい。忍びの頭の首をとってくる」
「は、はい」
「わかりました」
二人を安全な場所へ移動させ、目的の人物の元へ行く。
二人が仕掛けた落とし穴にはまっている。同時に、痺れ薬も穴に充満させてある。頭巾を口にかけて、穴に飛び込む。
「動けなさそうだな」
「き、貴様、は」
「死に逝く者に名乗る名はない。御首、頂戴する」
ドシュッ
血が吹き出て、首が飛び上がる。
返り血を浴びてしまったな。仕方ない。兵太夫たちは怖がらせてしまうが、これにも今のうちになれておいた方がいいだろう。
「く、…き、貴様、」
「なんだ、もう目が覚めたか」
落とし穴に落ちていた他の忍が動けないながらも必死に口を開く。
「な、に、者だ…!」
「忍術学園の六年だ。ちなみに貴様等がかかった罠は一年、10歳が仕掛けた罠だ」
「なっ…!?」
「俺の任務は貴様等の忍隊の首をとること。近々戦なのだろう。これで戦力がそがれ、お前等は苦戦することになるなぁ」
「き、貴様ァ……!」
「我等は今だに卵だ。雛にも満たぬ。貴様等の首など命令があればいくらでも取れるということ、主に知らせておくことだな」
忍術学園の生徒を敵に回すなかれ。
それは一年生でも同じことだ。
「お帰りなさい桜先輩!」
「血が!大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ。これは返り血だ」
「良かったぁ…」
「先輩、手に持っている箱はなんですか?」
「これは、首だ」
「「えっ!」」
「見ないほうが良い。さぁ、仕掛けを壊して帰るぞ」
「「は、はい!」」
作った罠へ焙烙火矢を投げ込んだ。
余裕があれば隅から隅まで崩しておきたいのだが、さっき部下が目を覚ましていたということはそんな余裕はないだろう。
二人には申し訳ないが、ここは爆破という形をとらせてもらった。
「すまないな」
「い、いえ!大丈夫です!」
「あんなの、またすぐ作れますから!」
二人の頭を撫で、すぐに退散するため二人を抱えて木へと飛び移った。
首の入った箱は、三治郎に抱えてもらった。
「さ、急いで帰るぞ」
ふたりは顔をあわせ微笑んだ。その姿に私も笑みがこぼれる。
とても、任務帰りとは思えない。
―…首を」
「うむ、たしかに」
とってきた首を学園長に渡して、任務報告を済ませる。その私の後ろで正座をしている三治郎と兵太夫がいる。
「ご苦労じゃった。三治郎、兵太夫、此度の任務はどうじゃった?」
「!桜先輩がいたので全然怖くなかったです!」
「そうかそうか。三治郎は強いのう!」
「プロの忍者にも僕等のカラクリが通じて凄く嬉しかったです!」
「うむうむ。ようやった」
「だがこれで満足するなよ。お前のカラクリは教師でも梃子摺る。腕を磨けばもっといいものが出来るさ」
「本当ですか!?」
「あぁ兵太夫。俺が保障する」
「また僕等の設計図見てくれますか!?」
「あぁ三治郎、いつでも歓迎だ」
上級生をつれていかなくて正解だった。一年生も、ここまで立派に任務をこなせるではないか。
「今日はお疲れ様。任務内容は他の生徒に話してはいけない。今日はゆっくり休みなさい」
「「はい!」」
二人が部屋を出て行き、学園長に向き直る。
「やはりあいつらは天才でした。まさに、機略縦横と言ったところです」
「一年生を任務に連れて行くとは、桜は愉快なことを考えるのぉ」
ほほほと笑う学園長に、
「だから言ったでしょう?楽しいことになると」
また、私はワラッタ。
「天女の始末も、下級生にやらせますか?」
「…桜、」
「冗談ですよ」
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